電子帳簿保存法 #4:スキャナ保存制度とは?

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スキャナ保存制度と対象となる書類

スキャナ保存制度とは、従来紙での保存が義務付けられていた経理に関する以下の書類について、一定の要件を満たせば、紙のままではなくスキャナで読み取った電子データ形式(PDFなど)で保存することができる制度です。

電子帳簿保存法第4条3項

保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる

法律の条文にある「財務省令で定める装置」とは、いわゆるスキャナーのことで、また条文の最後が「できる」となっていることから、「スキャナー保存の対応は任意」と読み取ることができます。

取引先から受領した書類

取引の相手方から受け取った以下の資料が対象となります。

重要度:高(特に重要な書類)

お金や物の流れに直結する書類のうち、特に重要なものがこのグループです。

  • 契約書
  • 領収書

重要度:中(重要な書類)

お金や物の流れに直結する重要な書類がこのグループです。

  • 請求書
  • 納品書
  • 預金通帳
  • 契約の申込書
  • 小切手
  • 約束手形
  • 預かり証
  • 信用証書
  • 有価証券受渡計算書
  • 社債申込書
  • 送り状
  • 輸出証明書

重要度:低(一般書類)

お金や物の流れに直結しない書類がこのグループです。

  • 見積書
  • 注文書
  • 検収書
  • 入庫報告書
  • 貨物受領書
  • 契約の申込書

自己が作成して取引先に交付する書類

自己が作成して取引の相手方に交付する書類とは、上記と同様の書類を自己が発行する立場で作成し、その控えとして保存する資料のことを言います。

使用するスキャナー等の要件

スキャナー等の要件について法律上は細かく指示されていますが、正直一般人にはよく意味がわからないと思います。なので、これから始めようと考えておられる方は、商品に「電子帳簿保存法対応」「スキャナ保存OK」といったわかりやすいキャッチコピーが付されているものを購入しましょう。

ちなみに、弊所で使用しているスキャナーはリコーの「ScanSnap ix1600」というもので、多くの会計事務所でも使用されている信頼性の高い商品なので、迷われたらこちらをお勧めします。

話を元に戻して、そのスキャナーに求められる要件ですが、ざっくりと抑えておくべき事項は以下の通りです。

  • 200dpi以上の解像度で読み取ることができること(A4サイズで約387万画素相当)
  • カラー画像で読み取ること(上記の書類のうち、重要度:低のものは白黒画像でも可)
  • スマホやデジカメで撮影したものも可

事務処理上の要件

スキャナ保存に関する事務処理上の要件については、これまで何度か緩和されてきましたが、令和5年度税制改正においてもさらなる緩和措置が講じられることになりましたので、それらを踏まえて整理してみましょう。

スクロールできます
要件重要度:高および中の書類重要度:低の書類
入力期間の制限①または②のいずれか選択
①書類受領後、おおむね7営業日以内にスキャン・格納
②書類受領後最長2ヶ月+7営業日以内にスキャン・格納
適時処理
タイムスタンプ「一般財団法人日本データ通信協会」が認定するタイムスタンプを付与する
(マネーフォワードやfreeeなどのクラウド会計ソフトを利用すれば、自動付与されます。)
解像度および階調情報等の保存R6.1.1以降は不要
入力者等情報の確認要件R6.1.1以降は不要
スキャン文書と帳簿との相互関連性の確保R6.1.1以降も必要R6.1.1以降は不要
適正事務処理要件(注)不要
(注)適時事務処理要件の廃止について

スキャナ保存に関して、従来は不正防止等の観点から「社内規程の整備」や「相互けん制」「定期的な検査」といった適正事務処理要件が付されていましたが、2022年に廃止されました。これにより、定期検査に必要だった原本(紙書類)が不要となったため、スキャンしたあとの原本を廃棄してもよいということになりました。

罰則の強化

スキャナ保存において事前承認が廃止されたため、不正などがあった場合の税務上のペナルティーが重くなりました。ただし、これはうっかりミスなどの軽微な不備ではなく、仮装・隠蔽などを目的とした不正があった場合の申告漏れに対して課される重加算税についてであり、具体的には35%から45%にさらに加重されることになります。

最後に

スキャン保存については新たにスキャナーを購入したり、会計ソフトや業務フローを変更するなど、コストも時間もかかりますが、一度軌道にのせてしまえば、脱ハンコやテレワーク、そして何よりペーパーレス化が一気に進むことになりますので、企業としても積極的に取り組む価値のある課題なのではないでしょうか。

弊所は現在100%ペーパレスで業務を運用しておりますが、驚くことに、毎月のコピー・印刷代がほぼゼロになっています。FAX使用量はゼロ、スキャン機能は上記の卓上スキャナーで行っていますので、ものすごく高価な複合機をリースしておりますが、ただの事務所のオブジェと化しております(笑)。

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