電子帳簿保存法:電子取引データ保存が困難なとき

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電子取引データ保存の「義務化」

令和6年1月1日から、電子帳簿保存法における電子取引データ保存の義務化が開始されています。各法人・事業者の担当者は何が電子取引データで、保存ルールはこうで、規定の整備がこんな感じでなどとてんやわんやしていると思います。

このような状況の中、過去の記事において、電子取引データ保存の検索用検討を満たすことが困難な場合における猶予措置について解説しました。

この猶予措置について、「一部のデータのみに適用」することや、「大企業など企業規模を問わず適用可」ということが確認できましたのでお伝えします。

電子取引データ保存における検索要件

電子取引データ保存が義務化されたことにより、電子取引データは原則として検索要件を満たした状態で保存することが求められるようになりました。検索要件とは「取引先・取引年月日・取引金額」という3つの検索条件を設定し、日付または金額の範囲指定により検索できること、そして2つ以上の任意の組み合わせにより検索できることとなっています。

例えば「2024年1月31日、世良商事からの請求書、金額142,500円」という電子取引データであれば、「20240131_世良商事_142500_請求書」など、結構長いファイル名を設定する必要があります。エクセル等で管理する方法もありますが、現場レベルでこれを徹底するのはかなり困難かと思います。数字を全角で入力する、アンダーバー(_)がスペースやドットになっている、金額にコンマが入っているなど、各担当者の入力癖に悩まされることもあるでしょう。これについてはファイル名を一括で修正するリネームアプリなどを活用することで解決できますが、何にしても面倒くさいことこの上ないです。

電子取引データ保存が困難なとき

このように非常にややこしく、現場に混乱をもたらしかねない電子取引データ保存ですが、この電子取引データ保存ができない理由がある場合、これまで通りのやり方でも認められる猶予措置があります。

まず、電子帳簿保存法に規定されている電子取引データ保存の要件について、これを完全に満たした状態での保存ができない理由を税務署長に認めてもらう必要があります。

税務署長に認めてもらうと言いましたが、事前に申請書などを提出する必要はなく、税務調査等で説明を求められた際に、その保存ができなかった理由を説明すればそれで良いとされています。

また保存が困難な理由はある意味なんでもありで、下記の例のように人・モノ・金・知識いずれかが足りなければ認められます。

  • 単純にできる人が居ない
  • システム改修、採用、教育などに係る資金がない
  • 被災した
  • 一人社長で無理
  • 最近退職者が出た
  • パソコンはメールとネット見るので限界。年寄りいじめるな など

ただし、これまで通りのやり方(書面での保存)でも認められると言いましたが、電子データの「保存」だけは必ずやっておいてください。ここでいう「保存」とは、先程の検索要件を満たした完璧なデータ保存のことではなく、とりあえずそのままダウンロードして、決められた場所にそのまま保存しておくことをいいます。また、税務調査等の際には、これらの電子取引データのダウンロードや出力書面の提示を求められたら、必ず応じなければなりません

なお、ECサイト上で領収書等の電子データの確認および検索が随時可能であれば、ダウンロードして保存しなくても問題ありません

すべての電子取引データに対応できない場合

企業によっては、業務や取引の一部を基幹システムから切り離して運用しているなど、すべての電子取引データを網羅した運用ができない場合が想定されます。このような場合、一部の電子取引データのみ猶予措置を適用して運用することも可能になりました。

これにより、優先順位の高い取引・業務から順番に対応していくなど、各企業の実情に合わせた柔軟な対応を図ることができます。

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