電子帳簿保存法の対象となる帳簿・書類
国税関係帳簿
国税関係帳簿とは、以下のような書類を指します。
- 仕訳日記帳
- 総勘定元帳
- 補助勘定元帳
- 現金出納帳
- 預金出納帳
- 手形帳
- 売掛帳
- 買掛帳
- 固定資産台帳 など
ただし、これらの帳簿を無条件に電子保存できるわけではなく、電子帳簿保存法第4条第1項において次のように定めています。
保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子機器を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
この条文を簡単に説明すると、上記の帳簿について、最初から最後まで会計ソフトなどを使って一貫してパソコン上で作成したものであれば、本来紙にプリントアウトして事務所に備え付けて置かなければならないところを、ハードディスクやクラウド上にデータとして保存しておいてもちゃんと備え付けている状態と同じだと認めますよ、ということです。
なお、条文中にある「自己」の範囲ですが、これには会計事務所や記帳代行業者に委託している場合も含まれます。また、「最初の記録段階から」とあるため、課税期間の初日(個人であればその年の1月1日)から対応する必要があります。
また、全ての帳簿を電子データで保存する必要はなく、「仕訳帳と総勘定元帳のみ電子データで保存して、その他の帳簿は紙で保存する」といったように、保存する帳簿を任意に選択することができます。ただし、作成する過程で一部を手書きで記録するなど、一貫して会計ソフトなどで作成していない帳簿については、適用対象外となります。
国税関係書類
国税関係書類は「決算関係書類」と「取引関係書類」の2つに大別され、さらに取引関係書類については、自己が作成するものと相手方から受領するものに分かれています。
決算関係書類
決算関係書類とは、以下のような書類を指します。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
- 棚卸表
- 借入金明細書など決算に際して作成する一定の資料 など
取引関係書類
取引関係書類とは、以下のような書類を指します。
- 請求書
- 領収書
- 契約書
- 見積書
- 注文書
- 納品書
- 検収書
- 仕切精算書 など
なお、これらの書類については、自身が作成し発行するものと、相手方から受領するもの両方を含みます。
これらについても無条件に電子保存できるわけではなく、電子帳簿保存法第4条第2項において次のように定めています。
保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子機器を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係帳簿の保存に代えることができる。
上記とほぼ同じような条文ですが、「最初の記録段階から」という文言がないのは、国税関係帳簿については課税期間についての定めがあるので、課税期間の初日から対応する必要があるためです。国税関係帳簿と同様こちらも最初から最後まで会計ソフトや販売管理ソフトなどを使って一貫してパソコン上で作成する必要がありますが、相手方から受領した書類については対応できませんので、電子データ保存できるのは「決算関係書類」と「(自社で作成・発行する)取引関係書類」となります。
なお、取引関係書類のうち、相手方から受領するものについては、スキャナー等で資料を読み込んで電子化・保存する「スキャナー保存」という方法により対応することになります。
余談ですが、上記2つの条文の最後が「できる」となっていることから、国税関係帳簿と国税関係書類について、電子データ保存やスキャナ保存に対応するかどうかは各事業者の任意であると読み取ることができます。
電子取引
電子取引により受領するデータとは、以下のようなデータを指します。
- メールに添付された請求書や領収書などのPDFデータ
- ホームページなどからダウンロードした請求書や領収書などのPDFデータ
- ホームページ上に画面表示される請求書・領収書などのスクリーンショット
- EDIシステムを利用している場合
- ECサイトからダウンロードする領収書などのPDFデータ
- FAXで受信した書類を紙で出力せずPDF等で保存する場合
- クレジットカードやキャッシュレス決済などの利用明細のPDFデータやスクリーンショット など
上記の電子取引書類については、当初電子データによる保存ができない場合には書面に出力して保存することを認めていましたが、令和3年度の税制改正により、この代替措置が廃止されました。
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
先程の条文と異なり、「できる」ではなく、「しなければならない」と締めくくられていることから、すべての事業者が対応しなければならない「義務」であることがわかります。
なお、令和5年度税制改正により、相当な理由がある場合などの新たな宥恕措置が設けられることになりましたが、これら改正内容等については改めて解説したいと思います。
電子帳簿保存の対象となる書類のまとめ
今回は電子帳簿保存の対象となる書類に焦点を絞ってお話しましたが、次回以降さらにここの項目について深掘りしていきたいと思います。また、上記の内容を一覧にまとめましたので、早見表としてご利用ください。
「自己が作成する書類の写し等」については、最初からパソコンで作成し、PDFなどにして相手方にメール等で送信するものは「電子データ保存」、手書きで作成し、紙で郵送等するものについては「スキャナ保存」に対応が分かれます。