これまでの経緯
インボイス制度の話題が大きすぎて、今ひとつ重要性を感じておられない方も多いと思いますが、インパクトという意味では、インボイス制度に引けを取らないのが、この「電子帳簿保存法」です。
試しにGoogleなどで「電子帳簿保存法」と検索していただくとおわかりかと思いますが、その内容量の多さと複雑さに勉強意欲が萎えてしまうこと確実です。
この複雑怪奇な電子帳簿保存法について簡潔に述べるのは至難の業ですが、実はこの法律、制定されたのは1998年のことだったんですね。私が税理士登録をしたのが2003年なのですが、当時この法律は大企業向けのもので、適用要件や申請方法の難易度がかなり高く、またインターネット環境やPC周辺機器といったインフラも十分に整備されているとは言い難いものだったこともあり、「まあ自分には関係ないか」くらいの意識だったのを覚えています(確か年間の申請件数が全国で数件くらいだったような…)。
しかし、その後度重なる改正を経て法律自体がこなれてきたこと、また働き方改革やSDGsの取り組みによるリモートワークの定着、企業のペーパーレス化などといった動きもあり、この数年で実務的に十分運用可能なものになってきました。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿や国税関係書類について、電磁的記録による保存を認める法律のことをいいます(わざと難しい言葉を選んだかのような表現ですよね)。
簡単に言うと、税金や経理に関する書類などを、紙のまま保存するのではなく、パソコンなどにデータとして保存するためのルールを決めたもと考えてください。
データの保存方法は書類の種類によって大きく3つの方法に区分されています。この3つの区分のうち、2つはやってもやらなくても良い任意の規定なのですが、一つだけ、すべての事業者に強制されるものがあります。このことが電子帳簿保存法をややこしく、そして混乱させるもとになっているのですが、この3つの区分について、次に説明していきましょう。
電子帳簿保存の3つの区分とは?
電子帳簿等保存(任意)
電子的に作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する方法です。
簡単に言うと、経理や申告に必要な元帳や決算書類を、最初から最後までパソコン上で作成した場合には、紙にプリントアウトする必要はなく、データのまま保存してもよいというものです。
スキャナ保存(任意)
紙で発行・受領した書類をスキャナー等で画像データに変換して保存する方法です。
こちらは、事業者が発行する請求書や、受領する領収証などが対象で、これまで紙ベースでやり取りされていたものを、スキャナー等でjpgなどの画像データに変換して保存するものです。
電子取引(義務)
電子的に授受した取引情報をデータのまま保存する方法です。
ECサイト等で物品を購入した際、PDF形式で発行される領収証などをイメージしていただくとわかりやすいと思いますが、このような最初から電子データでやり取りする取引については、必ず電子データのまま保存することが義務付けられました。
これについては令和4年1月1日から義務化されるはずでしたが、小規模事業者などに強制するのはやはり難しいなどといったこともあり、2年間の宥恕措置(延期)が採られていました。
このまま行くと令和6年1月1日から本格的に施行されるはずでしたが、令和5年度の税制改正により、義務化の要件が少し緩和されるとともに、新しい宥恕規定が整備されました。
最後に
いかがでしょうか?まずは電子帳簿保存法について何が義務化されるのかをごく簡単に解説しましたが、次からは各項目ごとに、最新の改正項目などを交えて詳しく解説していきたいと思います。