電子帳簿保存法における「任意」と「義務」
電子帳簿保存法は大きく3つの分野について、電磁的記録による保存を認める法律ですが、事業者が「任意」で取り組むものと「義務」として対応しなければならないものがありますので、改めておさらいしておきたいと思います。
電子帳簿等保存(任意)
電子的に作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する方法です。
簡単に言うと、経理や申告に必要な元帳や決算書類を、最初から最後までパソコン上で作成した場合には、紙にプリントアウトする必要はなく、データのまま保存してもよいというものです。
スキャナ保存(任意)
紙で発行・受領した書類をスキャナー等で画像データに変換して保存する方法です。
こちらは、事業者が発行する請求書や、受領する領収証などが対象で、これまで紙ベースでやり取りされていたものを、スキャナー等でjpgなどの画像データに変換して保存するものです。
電子取引(義務)
電子的に授受した取引情報をデータのまま保存する方法です。
ECサイト等で物品を購入した際、PDF形式で発行される領収証などをイメージしていただくとわかりやすいと思いますが、このような最初から電子データでやり取りする取引については、必ず電子データのまま保存することが義務付けられました。
社内ルール・書類の整備
電子帳簿等保存(任意)を行う際に必要な書類
電子帳簿等保存を行う場合は、任意規定であったとしても、電子保存に関する事務手続きをどのような手順で行うかなどについて記載した書類(事務規定)を準備しておく必要があります。
これについては、国税庁のホームページに以下のような雛形(Word形式)がありますので、ダウンロードして自社の実情に合わせて修正して使ってください。
国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類(概要)(Word/13KB)
スキャナ保存(任意)を行う際に必要な書類
スキャナ保存を行う際に必要な書類は以下の2つになります。
- 事務手続きを明らかにした書類(「スキャナによる電子化保存規程」)
- 事務処理規程(各事務の処理に関する規程)
証憑を受け取ってから概ね7営業日以内にスキャナ保存ができない場合に作成する書類で、これを作成することで、保存するまでの期間を最長2ヶ月+概ね7営業日以内に延長することができます。
1の「事務手続きを明らかにした書類」は、書類の受領やスキャン処理、タイムスタンプ等について説明する書類で、必ず作成する必要があります。2の「事務処理規程(各事務の処理に関する規程)」は、証憑を受け取ってから概ね7営業日以内にスキャナ保存ができない場合に作成する書類で、これを作成することで、保存するまでの期間を最長2ヶ月+概ね7営業日以内に延長することができます。
国税関係書類に係る電子計算機処理に関する事務の手続を明らかにした書類(Word/16KB)
スキャナ保存に関して、従来は不正防止等の観点から「社内規程の整備」や「相互けん制」「定期的な検査」といった適正事務処理要件が付されていましたが、2022年に廃止されました。ここでいう社内規程とはいわゆる事務処理規程のことを指しており、上記のスキャナによる電子化保存規程とは異なりますので注意してください。
電子取引(義務)を行う際に必要な書類
電子データは複製や改ざんが容易にできてしまうことから、これらを防止するために、「真実性の確保」という要件が課されています。なお、真実性を確保するための具体的な要件として、下記の4つの要件のうちいずれか一つを選んで対応することが義務付けられています。
方法 | 注意点 |
---|---|
1.タイムスタンプが付与された電子データを授受する | すべての取引先から「タイムスタンプ付きデータ」を受領するのは困難 |
2.電子データの授受後、速やかにタイムスタンプを付与する環境の整備 | 受取側でタイムスタンプを付与できるシステムや環境の整備が必要 |
3.訂正削除の作業履歴が残る、または訂正削除ができないシステムを整える | システム構築やルール習熟に時間やコストがかかる |
4.訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける | 現状に即した運用が可能であり、特別なシステム導入は必須ではない |
上記の対応方法のうち、マネーフォワードやfreeeなどのクラウド会計を導入している場合は、基本的に2と3の要件を満たしているため、そのままお使いいただくことで「真実性の確保」の要件をクリアできます。
このような会計ソフト等で真実性が担保できない場合は、4にあるように事務規程を備え付けることになりますが、これについても国税庁のホームページにサンプルがありますので、これを参考に、自社の実情に合わせて運用すると良いと思います。