建設業者が税務調査で気をつけること

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建設業者は税務調査に狙われやすい?

建設業者はよく税務調査に入られやすいと言われますが、なぜでしょうか?

建設工事は1件あたりの受注金額も大きいことから、間違いや不正が発覚した際の追徴税額も多くなりがちですし、期をまたがる工事や一人親方など、いわゆるグレーゾーンとなる問題が多く存在するため、調査対象として選定されやすいのだと思われます。

また、元請けである建設業者に税務調査が入ることにより、下請となる一人親方への反面調査などが入ることで、一人親方の無申告が発覚する事も多くあります。

そこで、建設業者が税務調査において狙われやすく、かつすぐにでも対応可能な論点について見ていきたいと思います。

総勘定元帳を見れば一発でわかること

軽油引取税

ガソリンにはガソリン税、軽油には軽油引取税が課税されています。ところが、ガソリン税には消費税がかかる一方で、軽油引取税には消費税がかかりません。これは、ガソリン税は製造業者に納める義務があり、ガソリンの製造時の原価に含まれるものだからです。ちなみに、酒税やたばこ税も同じ理由で消費税が課税されます。

一方、軽油引取税は軽油の消費者に納める義務があるため、軽油が販売された時点で軽油引取税が課税されます。この軽油引取税に消費税を課税すると、消費者にとっては税金の二重課税になるため、軽油引取税には消費税がかからない仕組みになっています。

ガソリンを購入した場合、レシートに記載されている金額を全額課税仕入として処理して問題ありませんが、軽油の場合は、レシートに必ず軽油税の記載がありますので、その部分は消費税の不課税取引とし、残額を課税仕入として処理する必要があります。

軽油引取税は「租税公課」という勘定科目で処理しますので、会社の駐車場にトラックなどのディーゼル車が止まっていたり、固定資産にそれらの車両が計上されているにも関わらず、租税公課に軽油引取税が計上されていなければ、すぐに発覚してしまいます。

スクラップ売却収入

建設工事の現場では、作業中に生じる加工くずや鉄くず、廃材などをスクラップとして専門業者に買い取ってもらうケースがよくあります。これらのスクラップは直接事業に関係するものでなくても、売却することで利益が生じている場合は、売上または雑収入として計上しなければなりません。

税務調査官は調査前に調査対象となる会社の業態や関連する業者、直近の現場なども調査していますし、税務署内に蓄積された情報などから、「この会社であればこのくらいのスクラップ収入があるはず」と当たりをつけていると思われます。これらの収入を意図的に除外していた場合は、高確率で重加算税の対象になる可能性があるので注意してください。

また、簡易課税を選択している場合、建設業は概ね第三種事業に該当しますが、スクラップ収入についても第三種事業に該当するので注意してください。

工事請負契約書に係る収入印紙

建設業では、工事請負契約書の他にも数多くの契約書が存在します。その殆どが印紙税法上の課税文書に当たるため、作成した契約書には必ず収入印紙を貼付しなければなりません。

税務調査の現場では、指摘すべき項目が殆ど無い場合に調査の後半で調べられることがありますが、契約書の多い、しかも請負金額も大きい建設業者に対しては、しっかりと調査されることが多いです。

税務調査で収入印紙の貼付漏れの契約書が見つかると、原則として本来の収入印紙の金額の3倍が徴収されます。ただし、印紙を貼り忘れていることについて「印紙税不納付事実申出書」を提出すると、納付すべき収入印紙の金額の1.1倍に軽減されます。よほど悪質なものでない限り、1.1倍の処分で済むと思いますが、臨場する調査官の裁量にもよるので注意しましょう。

収入印紙(印紙税)については、総勘定元帳を調べるのではなく、工事請負契約書ファイルなどを直接調べることが多いので、税務調査の有無に関わらず、定期的に貼付漏れがないか(消印漏れがないかも)点検するよう心がけてください。

一人親方問題

「一人親方」とは、建設業などでよく見られる労働者を雇用せずに自分自身と家族だけで事業を行う事業主のことを言います。

一人親方の中には、一つの元請けの会社からしか仕事を請け負っておらず、元請けの指示に従って現場に行き、材料や工具の支給を受け、仕事内容に関わらず毎月定額の報酬が振り込まれ、何だったら有給休暇らしきものまで与えられて・・・

「これじゃあ従業員と同じでは?」と思われた方、正解です。税務調査官も同じように考えます。

もしも税務調査において、一人親方に支払った報酬が「外注費」ではなく「給与」に認定されてしまうと、次のような問題が生じます。

  1. 外注費(消費税課税)が給与(消費税不課税)に修正されることで、外注費に係る消費税の仕入税額控除が否認されます。
  2. 毎月の税込報酬額に対する給与源泉(乙欄)を徴収されます。
    (注)源泉徴収税額は、「扶養控除等申告書」の提出がないため「乙欄」となります。
  3. 上記に係る延滞税、過少申告加算税、不納付加算税が別途徴収されます。
  4. 一人親方が事業所得として申告している場合、給与所得に修正されるため、一切の経費が否認されます。

また、今後一人親方を正社員として取り扱う場合には、社会保険の負担も考えなければなりません。

最後に

この他にも建設業における税務調査には多くの注意すべき問題がありますが、インボイスや電子帳簿保存法が話題となっていることが良いきっかけになると思いますので、今一度自社の経理体制を見直してみてはいかがでしょうか。

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