税務調査でよく指摘される売上高の「期ずれ」に注意!

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税務調査の後半で・・・

税務調査を経験された経営者の方はよくおわかりかと思いますが、税務調査のために税務署の職員が臨場した際、挨拶もそこそこにいきなり帳簿を確認しだすことはありません。まずは世間話をしながら経営者の人柄や調査に対するスタンスなどを確認しつつ、会社の概況や業況などのヒアリングにそれとなく移行し、「それじゃそろそろ…」といった感じで実際に総勘定元帳などをめくりだします。

調査官は臨場する前に、会社の決算書や確定申告書、代表者個人の確定申告書などは当然精査していますし、源泉所得税の納付の状況や資料せん、取引先や外注先の情報、ホームページやSNS、場合によっては関係者の預金口座の動きなどもあらかじめ調べてきています。

最近の調査の現場で実際にあったのですが、調査官がその会社の顧問税理士である私のホームページをチェックされていたようで、投稿している記事の内容や業務内容について結構突っ込んで質問されたのには驚きました。

このように、事前に署内で調査した過程で得られた問題点や疑問点などを、現場で優先的に調査するわけですが、思ったような成果が得られず、指摘ずべき事項が殆ど無いとなると、仕入や売上の計上時期のズレ、いわゆる「期ずれ」がないかチェックします。

売上高の「期ずれ」の例

取引先と示し合わせて、今期末の売上を来期の売上請求書に書き換えるなどといった、利益操作や脱税を意図して故意に行ったものはもちろん論外ですが、意図せず「期ずれ」になってしまうことは意外によくあります。

売上の締め日が月末でない場合

例えば、「毎月20日締めの月末請求」の場合、21日から決算日末までの売上は、決算月の翌月末の請求に含まれることになります。この締め日から決算月の末日までの売上を「帳端売上」といいますが、経理に慣れていない経営者であれば、誰かに指摘されるまではこれを今期の売上に計上しなければならないことに気が付かないかもしれません。

売上代金が分割で入金される場合

入金をもって売上を計上する方法を「現金主義」といいますが、この方法が認められているのは一定の要件を満たした小規模個人事業主のみなので、通常は売上が確定したときに全額を売上高として計上しなければなりません。「売上金が分割で入金される」というのは、売上が既に確定して、その代金の決済方法が「分割」だっただけの話なので、入金の度に売上を計上していると、税務調査で必ず指摘されます。

納品伝票などから判明する場合

商品の発送を持って売上に計上するのか(出荷基準)、相手方の検品が完了した時点で売上に計上するのか(検収基準)によって状況は異なりますが、納品伝票の内容と請求書の内容が異なることで、期ずれが発生することがあります。納品伝票は営業所で保管し、請求業務は本社経理で行うなど複数の現場が関わっている場合に、双方の思い違いなどで意図せず起こることがあるので注意しましょう。

前払いや年払い契約の売上

テナントの賃貸収入や保守契約収入など、契約で翌月分を当月収受したり、1年分を一括で収受する場合があります。このような売上の入金月とサービス提供の時期が異なるものについては、契約ごとにきちんと管理がなされているかも含めて、売上の計上が正しく行われているか調査されます。

売上の「期ずれ」を指摘されたら

売上の期ずれを指摘され、その指摘が正しければ、期ずれとなった売上高を当期分として修正することになります。「期ずれ」という言葉の通り、売上をどの時期に計上するかを正すだけの修正になりますので、ずれた期の前後で見ると、トータルの税額は変わりません。ただし、延滞税や過少申告加算税といった追加の税金が課せられますので、まったくの無傷で済むわけではありません。

ここで注意していただきたいのが、売上の期ずれが発生した場合、その売上に係る「仕入」や「外注費」といった売上原価も期ずれを起こしている可能性が高いということです。税務調査官がいい人であれば、「今期の売上として指摘した部分の売上原価も認められるので一緒に修正してください」などと助言してくれるかもしれませんが、残念ながら調査官からこのような助言をいただいとことは殆どありません。いずれにしても何か指摘されたら、「売上と仕入はセット」と覚えておいてください。

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