中小企業向け特例措置が制限されます~『適用除外事業者』とは?

平成31年4月1日以後に開始する事業年度から、中小企業者向けの租税特別措置の適用を受けるための要件が新たに追加されます。

まずは、『中小企業者』の要件ですが、ものすごく大雑把に言うと、『資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人』で、他の大規模法人に一定の株式を所有されていない法人をいいます。

今回の改正により、中小企業者のうち、『過去3年間の平均所得金額が15億円を超える事業者(これを「適用除外事業者」といいます)』が除かれることになりました。

これまで中小企業者として様々な特例を享受していた法人が、この改正により適用除外事業者となった場合、以下のような中小企業向けの租税特別措置が受けられなくなります。

  • 中小企業者等の法人税率の特例(措法42の3の2①②)
  • 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(措法42の4④)
  • 高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の5②)
  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の6①)
  • 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11の3①)
  • 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の12の3①)
  • 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の12の4①)
  • 給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除(措法42の12の5②)
  • 法人税の額から控除される特別控除額の特例(措法42の13⑥)
  • 被災代替資産等の特別償却(措法43の3①②)
  • 特定事業継続力強化設備等の特別償却(措法44の2①)
  • 特定地域における工業用機械等の特別償却(措法45②)
  • 中小企業等の貸倒引当金の特例(措法57の9)
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措法67の5① )

    適用外事業者の判定

      過去3年間の平均所得金額が15億円を超える事業者を適用除外事業者というと説明しましたが、『過去3年間平均の所得金額が15億円超』をもう少し詳しく説明すると、以下のようになります。

      『判定したい事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の合計額をその各事業年度の月数の合計数で割って、これに12を掛けて計算した金額が15億円を超える』

      事業年度が1年単位の法人であれば、3期前から直近の事業年度の所得金額を合計して、それを36月で割って12を掛けるという計算になります。なお、設立の翌日から3年を経過していない場合には、この適用除外事業者には原則該当しません。

      適用除外事業者の判定表

      適用除外事業者に該当するかどうかの判定について、国税庁が判定表を公開しています。

      https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/tebiki2019/pdf/04.pdf

      中小企業者に該当するかどうかを判定する表ですが、これの最後に、適用除外事業者の判定表が添付されています。注意する点として、ここで言う『所得金額』とは会計上の金額ではなく、税務上の金額(別表一「1」等)がベースとなります。

      この改正の趣旨は、3年間の平均所得金額が15億円を超える企業は、たとえ資本金が1億円以下であったとしても、その実態はほとんど大企業と一緒ですよね、そんな法人には本当の意味での中小企業者向けの租税特別措置を適用するのはおかしいですよね、というものです。ただし、平均所得金額が15億円を超える会社というのはそれほど多くありませんので、大多数の中小企業者は、このような改正があったんだなぁくらいに考えていただいて結構かと思います。