本日のテーマ
起業や独立を考えるとき、「株式会社にするべきか、合同会社でもよいのか」で迷う方は少なくありません。
結論からいうと、税務上は、株式会社だから有利、合同会社だから不利という大きな差は基本的にありません。違いが出やすいのは、設立時のコスト、会社としての見え方、出資者と経営者の関係、そして融資や取引先からの印象です。
今回は、法人設立を検討する際に押さえておきたい実務上の判断ポイントを整理します。
確認ポイント
株式会社と合同会社は、どちらも法人です。設立すれば、会社として法人税の申告を行い、必要に応じて消費税、源泉所得税、地方税などの手続きも発生します。つまり、税金の種類そのものが、会社形態だけで大きく変わるわけではありません。
一方で、設立時の手続きやコストには違いがあります。
株式会社の場合、定款について公証人の認証を受ける必要があります。また、設立登記の登録免許税は、資本金の額に1,000分の7を乗じた金額とされ、これが15万円に満たない場合は1件につき15万円です(注1)。
これに対して、合同会社の定款は公証人の認証を受ける必要がありません。設立登記の登録免許税も、資本金の額に1,000分の7を乗じた金額ですが、これが6万円に満たない場合は1件につき6万円とされています(注2)。
そのため、設立時の法定費用だけを見ると、合同会社の方が初期コストを抑えやすいといえます。ただし、株式会社の定款認証手数料は資本金の額などによって異なり、資本金100万円未満の場合は原則3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、その他の場合は5万円とされています。また、2024年12月1日以後は、資本金100万円未満で、発起人が自然人のみかつ3人以下であることなど一定の要件を満たす場合、定款認証手数料が1万5,000円となる取扱いも設けられています(注3)。
さらに、市区町村の特定創業支援等事業を受け、証明書を取得して設立する場合には、登録免許税の軽減措置を受けられることがあります。中小企業庁の案内では、株式会社は最低税額15万円が7万5,000円に、合同会社は最低税額6万円が3万円に軽減されるとされています(注4)。コスト面で比較する場合は、通常の設立費用だけでなく、使える創業支援制度がないかも確認しておきたいところです。
現場での対応は?
実務上、まず確認したいのは「誰に信用してもらう必要がある事業なのか」です。
たとえば、一般消費者向けの事業で、屋号やサービス名の方が前面に出る場合は、合同会社でも大きな支障がないケースがあります。実際、合同会社という形態は珍しいものではなく、設立コストを抑えてスモールスタートしやすい点は魅力です。
一方で、取引先が法人中心であったり、金融機関からの融資を早い段階で考えていたりする場合は、株式会社の方が説明しやすい場面もあります。これは、税務上の有利不利というより、相手が会社形態をどう受け止めるかという実務的な問題です。
銀行融資についても、株式会社だから必ず有利、合同会社だから必ず不利とまではいえません。金融機関が見るのは、事業計画、自己資金、代表者の経験、収支見通し、返済可能性などです。ただ、創業融資の面談では、なぜその会社形態を選んだのかを説明できるようにしておくと、事業の考え方が伝わりやすくなります。
設立前には、次の点を整理しておくと判断しやすくなります。
- 取引先や顧客は、会社形態をどの程度気にしそうか
- 将来的に出資を受けたり、株式を使った資本政策を考えたりする可能性があるか
- 創業時のコストをどこまで抑えたいか
- 特定創業支援等事業など、使える創業支援制度があるか
- 融資申込時に、事業計画や資金使途を具体的に説明できるか
- 設立後すぐに必要な税務届出を漏れなく出せるか
税務面では、株式会社でも合同会社でも、法人を設立した場合には原則として法人設立届出書の提出が必要です。国税庁の案内では、内国法人である普通法人などを設立した場合、設立の日、つまり設立登記の日以後2か月以内に、法人設立届出書を所轄税務署長へ提出することとされています(注5)。
ここで気をつけたいのは、届出先が税務署だけではない点です。法人を設立した場合には、都道府県や市区町村にも設立に関する届出が必要になることがあります。京都府では、会社設立後、速やかに「法人の設立・異動等届出書」を京都地方税機構申告センターへ提出するよう案内されています(注6)。京都市でも、会社などの法人等を設立した場合には、「法人等設立・解散・変更届出書」を京都市に提出する必要があるとされています(注7)。
また、第1期から青色申告を受けたい場合は、青色申告の承認申請書の期限も確認が必要です。設立後は、会社形態の選択だけでなく、設立後の届出・役員報酬・資本金・消費税の判定を早めに整理しておくことが大切です。
現場では、「合同会社で作ったこと」自体よりも、「設立後の税務手続きや資金計画があいまいなまま進んでいること」で迷いが出るケースが多い印象です。
本日のまとめ
株式会社と合同会社の違いは、税務上の有利不利よりも、設立コスト、対外的な印象、今後の事業展開に表れやすいものです。
コストを抑えて小さく始めるなら合同会社も有力な選択肢です。一方で、取引先や金融機関への説明のしやすさ、将来の資本政策まで考えるなら、株式会社を選ぶ意味もあります。設立前には、会社形態だけでなく、使える創業支援制度、設立後の届出、役員報酬、資本金、消費税の判定まで一緒に確認しておきましょう。
参考資料
注1:法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」
注2:法務省「合同会社の設立手続について」
注3:日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」
注4:中小企業庁「会社設立時の登録免許税の軽減について」
注5:国税庁タックスアンサー No.5100「新設法人の届出書類」
注6:京都府「府税Q&A:法人府民税・法人事業税(法人届出・申告関係)」
注7:京都市「Q&A:届出(設立)」

