インボイス制度に係る支援措置:「1万円未満の取引」の特例(少額特例)など

目次

インボイス制度に係る「支援措置」

様々な負担・不安を引き起こすインボイス制度ですが、あっという間に開始まで3ヶ月を切ってしまいました。弊所でも色々と準備はしておりますが、全てが機械的に進むわけでもなく、カレンダーを眺めるたびに嫌な汗をかいております。

政府としても、このまま突き進むのは流石に難しいと考えたのでしょうか、令和5年度の税制改正において、小規模事業者向けを中心に、事務負担や税負担を軽減するための支援措置が講じられることになりました。

各種補助金に係る支援措置

今改正における支援措置については、税金関係以外に、補助金や助成金についても一定の支援措置が講じられています。

持続化補助金の一律50万円加算

持続化補助金とは小規模事業者が度重なる制度変更等に対応するため、生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした補助金です。

この持続化補助金について、今回免税事業者がインボイス発行事業者に登録した場合、補助金の上限額が一律で50万円加算される事になりました。

  1. 対象者 ・・・小規模事業者
  2. 補助上限・・・50万円~200万円の上限が100万円~250万円に
  3. 補助対象・・・税理士相談費用、機械装置導入、広報費、展示会出展費、開発費、委託費等

IT導入補助金の補助下限額が撤廃

インボイス発行事業者登録を機に、会計処理が煩雑化することを踏まえ、比較的安価な会計ソフトなども補助対象となるよう下限額が撤廃されました。

  1. 対象者・・・中小企業・小規模事業者等
  2. 補助額
     ・ITツール 下限撤廃~50万円(補助率3/4以内)、50万円~350万円(補助率2/3以内)
     ・PC・タブレット等 ~10万円(補助率1/2以内)
     ・レジ・券売機等 ~20万円(補助率1/2以内)
  3. 補助対象・・・ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・ハードウェア購入費等

インボイス制度に係る税・事務負担軽減措置

売上税額の2割を納税額とすることができます(2割特例)

これについては、先日の記事で解説しましたので、注意点のみ簡単に記載しておきます。

  1. 仕入や外注委託、諸経費支払に係るインボイスは不要になるため、事務負担が大きく軽減されます(注)。
  2. 売上に関しては、軽減税率(8%)や非課税売上など税率の異なるものを管理する必要があります。
  3. 本則課税との比較はもちろん、簡易課税を選択していても有利な方法で申告可能です。
  4. 選択に当たり、事前の届け出は不要です。

(注)法人税や所得税の計算には従来通り領収証や請求書が必要です。

小規模事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)

1万円未満の課税仕入れ(経費等)について、インボイスの保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除ができるようになります。

スクロールできます
適用対象者適用対象期間金額判定基準
2年前(基準期間)の課税売上高が1億円以下または1年前の上半期(個人は1~6月)の課税売上が5千万円以下の事業者令和5年10月1日から
令和11年9月30日まで
一回の取引の合計額
1万円未満(注)

(注)税込み金額で判定します。また、1商品ごとの金額により判定するのではなく、一回の取引に係る税込合計金額が1万円未満かどうかで判定します。

少額な値引・返品の返還インボイス交付義務の免除

お商売をされている方には当たり前の話ですが、売上金が入金されるときに振込手数料が差し引かれていることがよくあります。これは振込手数料相当額の「値引」をしたことになり、税法上は「返還インボイス」というものを交付する義務があるのですが、現実問題として、100%これに応することはほぼ不可能だと思います。

そこで、売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その返還インボイスの交付義務が免除されることになりました。ちなみに、「売上げに係る対価の返還等」とは、事業者の行った売上げに関し、返品を受けたこと、または値引きや割戻しをしたことにより、売上金額や売掛金などの全部または一部の返金や減額を行うことをいいます(注)。

(注)売手が負担する振込手数料を、会計上は支払手数料として処理した場合であっても、消費税法上は売上げに係る対価の返還等と取り扱って差し支えありません。

また、これらの支援措置は小規模事業者が対象になることがほとんどですが、この返還インボイスの交付免除については、すべての事業者が対象となります。更に、適用対象となる期間制限もありません(恒久措置)。

目次