『黒字であれば、必ず借入金は返済できる』YESかNOか?
答えはもちろん、『NO』です。
経営者とお話していると、なんか話が噛み合わない、ムズムズした感覚になるときがあります。その原因の一つが『これ』です。
税理士の勉強をした私たちや、長年経理をされている方には当たり前の事実なんですが、どうやら借入金の返済額が経費であると思い込んでいる経営者がおられるようです。
そんなバカな、と思われるかもしれませんが、事実過去にお会いした社長の10人に1~2人が、『借入金返済は経費だろ』と勘違いされていました。ちなみに、借入金の利息は『支払利息』という経費になります。念のため。
これを勘違いしたままだとどのようなことが起こるか?『当期利益≒現金有高』と思い込んでいるわけですから、絶対に資金がショートしてしまうんですね。
ちなみに、このタイプの経営者だと、もう一つの勘違いも起こしがちです。それは、当期利益に『減価償却費』が含まれている、ということです。減価償却費は現預金の支出を伴わない経費なわけですから、現金有高の概算額を把握するためには当期利益に減価償却費を足さなければなりません。
簡単な例でみてみましょう。
① 税引後の当期利益 50万円
② 減価償却費 100万円
③ 借入金返済額 300万円
④ 借入金利息額 10万円
決算書は黒字ですが、どうでしょうか。勘違いされている経営者であれば、『借入金を返済したあとの利益が50万円だ』と思うでしょうね。
まず、①の利益額には②の減価償却費と④の支払利息が既に考慮されています。『現金有高』の観点で考えたら、②の減価償却額を足し込んだものが現金有高相当額になるわけですから、①+②=150万円が余剰資金となります。返済すべき借入金の元金は300万円なので、半分しか返済できない計算になります。
借入金の元金返済額は貸借対照表の負債の部の減少であって、損益計算書に含まれるものではありません。冒頭の『黒字であれば、必ず借入金は返済できる』の答えがNOとなる理由がおわかりいただけたでしょうか?