新型コロナウイルス感染症の影響により赤字決算となる場合の法人税の還付制度

令和2年4月以降に決算を迎える法人については、この6月末以降に法人税の確定申告を行うことになりますが、おそらく新型コロナウイルス感染症の影響により、赤字決算を組まざるを得ない法人が増えてくると思われます。

青色申告書を提出する中小法人(資本金1億円以下の法人)が赤字で決算を終えた場合(前期は黒字で法人税を納付している)、税務上は翌年以降にその赤字を繰り越す「欠損金の繰越控除」と、その赤字分に相当する法人税を前期に支払った法人税から取り戻す「欠損金の繰戻し還付」のいずれかを選択することになります。

今回のコロナ禍については、先の見通しも不透明であり、顧客が完全に戻らないなど、翌年以降に黒字が見込めない法人が多いと思います。そのため、長期間控除ができる繰越控除を選択するより、キャッシュとして確実に還付される繰戻し還付を選択するほうがメリットが多いでしょう。

さらに、今回の事態を受けて打ち出された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」により、欠損金の繰戻し還付制度に特例が設けられることになりました。

資本⾦1億円超 10 億円以下の法⼈も⻘⾊⽋損⾦の繰戻し還付の対象に

  1. 令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金額について適用されます。なお、この場合の令和2年7月1日前に確定申告書を提出した法人の還付請求書の提出期限は、令和2年7月 31 日となります。
  2. ただし、大規模法人(資本金の額が 10 億円を超える法人など)の 100%子会社及び 100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式の全部を保有されている法人等を除きます。

新型コロナウイルス感染症の影響により損失が発⽣した場合には、災害損失⽋損⾦の繰戻しによる法⼈税額の還付を受けられる場合があります

災害損失欠損金の繰戻し還付制度とは、災害により災害損失欠損金が生じた法人について、災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額を、その災害欠損事業年度開始の日前1年(青色申告書を提出する法人である場合には、前2年)以内に開始した事業年度に繰り戻して法人税の還付を受けることができる制度です。

今回の新型コロナウイルス感染症の影響による、例えば以下のような費用や損失は、災害損失欠損金に該当することとなります。

  1. 飲食業者等の食材の廃棄損
  2. 感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
  3. 施設や備品などを消毒するために支出した費用
  4. 感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用
  5. イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損

上記はあくまでも例示であり、必ず適用されるとは限らないので、その点はご注意下さい。