YouTubeによる収益と消費税

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YouTuberの主な収益源は?

一頃に比べ稼げなくなってきたと言われるYouTuberですが、現在でもYouTubeを主戦場に、または副業として稼いでおられる方は多いと思います。

YouTubeの収益にはいくつかの種類がありますが、それぞれ簡単に見てみましょう。

  1. Googleアドセンス広告収入
    YouTube再生時に表示される動画広告による収入です。
  2. スーパーチャット収入(スパチャ)
    ライブ配信を行った際に動画視聴者から送られる支援金で、1日あたりの支援金の上限は1人あたり5万円となっています。
  3. YouTubeチャンネルメンバーシップ
    自身のチャンネルにメンバー登録した方から得られる月額制の会費のようなものです。
  4. YouTube Premium収益
    YouTube Premiumという有料サービスを利用する会員が自身のチャンネルを視聴した際に得られる収入です。
  5. アフィリエイト広告収入
    動画投稿者が直接提携した企業の広告を掲載した場合に得られる収入です。
  6. 企業PR案件収入
    企業から直接依頼を受けて、自身のチャンネル動画でその企業の商品やサービスを紹介することで得られる収入です。
  7. グッズ等の商品販売収入
    自身のチャンネルからECサイト等に誘導して、自身の商品などを販売することで得られる収入です。

YouTubeの売上の課税関係は?

上記の売上について、所得税や法人税の計算上、全て売上として計上します。YouTubeを運営するにも当然経費がかかりますので、経理の仕方や確定申告の方法は一般的な事業と何ら変わりません。

ところが消費税については、上記の売上のうち課税されたりされなかったりするものがあるなど結構複雑な仕組みになっていますので、少し解説したいと思います。

消費税が課税されるための「4つの要件」

消費税の課税対象となるためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 国内における取引であること
  2. 事業者が事業として行うこと
  3. 対価を得て行うものであること
  4. 資産の譲渡・貸付、役務の提供であること

先に掲げた7つの売上がこれらの要件を満たすか見てみましょう。

「YouTuber」は立派な事業者です。かつ収益獲得目的で行っているのであれば事業に当てはまります。広告収入やスーパーチャットなどを金銭で受け取っているので、対価性もあります。また動画広告という役務提供を行っていますので、4つの要件のうち、2、3、4の要件は満たしています。

となると、消費税が課税されるかどうかは、1の「国内における取引か?」をどのように判断するかによって変わってきそうです。この点を少し深掘りしてみましょう。

「国内取引」の判定

国内における取引かどうかについては、消費税法に明確に規定されています。

消費税法第四条3項

資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。

 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、国債証券、株券その他の資産でその所在していた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)

 役務の提供である場合(次号に掲げる場合を除く。) 当該役務の提供が行われた場所(当該役務の提供が国際運輸、国際通信その他の役務の提供で当該役務の提供が行われた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)

 電気通信利用役務の提供である場合 当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて一年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地

通常の役務の提供であれば、第二号により判定しますが、YouTubeの広告収入などインターネットを通じた広告は、第三号に掲げる「電気通信利用役務の提供」に該当するため、Googleアドセンス広告収入などは第三号により判定することになります。

国税庁:「電気通信利用役務の提供」に該当する取引の具体例

電気通信利用役務の提供に該当する取引は、対価を得て行われる以下のようなものが該当します。

  • インターネット等を通じて、対価を得て行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
  • 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
  • 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
  • インターネット等を通じた広告の配信・掲載
  • インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
  • インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
  • インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
  • インターネットを介して行う英会話教室

Googleアドセンスの運営法人の住所は?

YouTubeの広告収入(Google AdSence)を運営している法人は「Google Asia Pacific Pte. Ltd.」ですが、国税庁の法人番号公表サイトで検索してみると、本店所在地は「70 Pasir Panjang Road, #03-71Mapletree Business CitySingapore 117371」となっていました。シンガポールの法人との取引は国内取引に該当しないことになりますので、Googleアドセンス広告は国外取引、つまり消費税の課税対象にはならないことになります。

その他の売上げに係る消費税の課税関係は?

先程の7つの売上げについて、消費税の課税関係がどうなるか見ていきたいと思います。

  1. Googleアドセンス広告収入
    国外取引に該当するため、消費税の課税対象外です。
  2. スーパーチャット収入(スパチャ)
    Googleアドセンス経由で支払われるため、消費税の課税対象外です。
  3. YouTubeチャンネルメンバーシップ
    Googleアドセンス経由で支払われるため、消費税の課税対象外です。
  4. YouTube Premium収益
    Googleアドセンス経由で支払われるため、消費税の課税対象外です。
  5. アフィリエイト広告収入
    国内に所在する企業からの依頼であれば消費税の課税対象ですが、外国に所在する企業からの依頼であれば消費税の課税対象外となります。
  6. 企業PR案件収入
    国内に所在する企業からの依頼であれば消費税の課税対象ですが、外国に所在する企業からの依頼であれば消費税の課税対象外となります。
  7. グッズ等の商品販売収入
    原則として消費税の課税対象となります。

最後に

動画配信については、YouTubeの他にもTikTokなど様々なサービスがありますので、「広告収入=消費税がかからない」と思い込まず、ご自身が利用しているサービスの規約などをきちんと理解して、申告するよう気をつけましょう。

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