残業代を「見込み」で払っても大丈夫?固定残業代で確認したい実務ポイント

目次

本日のテーマ

「残業代を見込みで払っているから、毎月の残業代計算は不要ですよね」と相談を受けることがあります。

いわゆる固定残業代、みなし残業代の話です。結論からいえば、見込みで払うこと自体が直ちにダメというわけではありません。ただし、固定残業代として有効に扱うには、通常の給与部分と残業代部分が区分され、超過分を追加で支払う仕組みになっていることが大切です。

確認ポイント

固定残業代とは、一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金として、毎月定額で支払われる賃金をいいます。名称は「固定残業手当」「みなし残業代」「営業手当」など会社によってさまざまですが、名称だけで判断されるわけではありません。

ポイントは、その手当が本当に残業代として支払われていると分かるかです。

厚生労働省の資料でも、固定残業代を採用する場合には、固定残業代を除いた基本給、固定残業代に関する労働時間数と金額、そして固定時間を超えた場合に追加で割増賃金を支払う旨を明示する必要があるとされています(注1)。

つまり、「月給30万円には残業代を含む」とだけ書いてあるような場合は要注意です。どこまでが通常の賃金で、どこからが残業代なのか分からなければ、固定残業代として認められない可能性があります。

また、固定残業代を払っていても、実際の残業代を計算した結果、その金額が固定残業代を上回る場合には、差額を追加で支払う必要があります(注2)。固定残業代は、残業代を計算しなくてよくなる制度ではありません。

現場での対応は?

実務では、給与明細や労働条件通知書を見たときに、まず次の点を確認します。

  • 基本給と固定残業代が分かれて表示されているか
  • 固定残業代が何時間分なのか明記されているか
  • 固定残業代の金額が明記されているか
  • 固定時間を超えた場合に追加支給するルールがあるか
  • 実際の労働時間を毎月集計しているか

ここで意外と多いのが、制度としては固定残業代を導入しているつもりでも、給与明細や雇用契約書の記載があいまいなケースです。現場では、制度名よりも、後から見て計算関係が説明できるかどうかを重視します

また、残業代の割増率にも注意が必要です。時間外労働や深夜労働は原則25%以上、法定休日労働は35%以上の割増賃金が必要です。さらに、月60時間を超える時間外労働については、50%以上の割増率が必要になります(注3)。

そのため、固定残業代の金額を決めるときは、「だいたいこのくらいでよいだろう」ではなく、所定労働時間、年間休日、月平均所定労働時間、想定する残業時間をもとに計算しておく必要があります。

経理処理だけを見ると、毎月同じ手当を給与として支給しているだけに見えるかもしれません。しかし、労務上は、固定残業代としての明確性と、超過分の精算が問われます。税務・会計の処理と、労働基準法上の残業代の支払いが適切かどうかは、分けて考えた方が安全です。

本日のまとめ

残業代を「見込み」で払う固定残業代は、それ自体が禁止されているわけではありません。

ただし、基本給との区分、時間数と金額の明示、超過分の追加支給がそろっていないと、後から未払残業代の問題につながることがあります。導入済みの会社でも、一度、雇用契約書・就業規則・給与明細・勤怠集計の整合性を確認しておきたいところです。

参考資料

注1:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」
注2:厚生労働省「固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?」 (スタートアップ労働)
注3:和歌山労働局「時間外、休日及び深夜の割増賃金(第37条)」 (都道府県労働局)
注4:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

この記事を書いた人

京都市北区で「世良税理士事務所」を運営しています。
オンライン税務顧問・無申告サポート・相続税対策や資金繰りサポートを強みにしており、全国からの無料Zoom相談を常時実施しております!

目次