京都市で「空き家税」が導入される背景
2023年3月、京都市会は「京都市持続可能なまちづくりを支える税財源の在り方に関する検討委員会」で提言されていた「京都市非居住住宅利活用促進税条例(いわゆる「空き家税」)」を審議し原案を可決しました。
対象となる「空き家」には、「居住者のいない非居住住宅」として、空き家のほか別荘・セカンドハウスなども含まれており、従来の固定資産税とは別に法定外普通税(注)として課税されることになります。
地方税法に定められていない地方税のうち、使い道を自由に決められる税金のことです。 道府県で設定するものを「道府県法定外普通税」、市町村で設定するものを「市町村法定外普通税」と言います。
京都市の特に南部では、30歳代の若年・子育て層が大阪などの近隣都市に流出することが問題となっています。この状況を放置すると、空き家の数は加速度的に増加し、将来的に防犯・防災など生活環境に多くの問題を生じさせるとして、非居住住宅に課税し、税金を負担してもらうことで新たな活用方法の検討や住宅供給の促進・子育て世代を中心とした居住の促進・空き家の発生抑制などサスティナブルなまちづくりに資することを目的としています。
と、このように京都市は説明しておりますが、実際は「京都市内における住宅不足の解消」と「不動産市場の活性化」を目的としていると考えられます。
コロナ禍で一時的に不動産価格の下落も見られましたが、ここ十数年で見ると、京都市内では不動産価格が爆上がりしており、公示価格でも京都市の全平均公示地価は2012年から2022年の間に約66%上昇しています。全国平均の上昇率が約38%であることを考えると、京都市内の不動産価格はバブル時を彷彿とさせるような勢いを見せていると言えます。
京都市はここ最近のインバウンドの恩恵を最も受けた都市であり、世界的な知名度の上昇に伴い、国内外の富裕層やセレブたちがこぞってマンションや戸建住宅、特に「京町家」を買い求めるようになりました。
このような状況から、もはや京都の「田の字地区」(御池通・河原町通・五条通・堀川通に囲まれた地区)で京都市民が物件を購入するのは実質的に不可能であり、結果として子育て世代などの若年層が京都市外に流出せざるを得ない状況になっているのだと思われます。
この状況を改善するために、空き家に対する課税を強化することで、空き家を不動産市場に流通させ、一般の京都市民、特に子育て世代などの若い購入層でも家を買えるようにしようというのが、今回の空き家税導入の背景です。
京都市が導入する「空き家税」とは?
課税される人
市街化区域内にある非居住住宅の所有者
非居住住宅とは空き家のほか別荘・セカンドハウスなど「生活の本拠を置いている人(居住者)がいない住宅」を指します。
税金が免除される基準
固定資産税評価額(家屋)が20万円以内(制度導入から5年間は100万円)には課税されません。
税金が免除される住宅
以下の非居住住宅については税負担が免除されます。
- 事業に使用しているもの(1年以内に使用予定のものを含む)
- 賃貸・売却予定で、募集開始から1年以内のもの
- 景観法により景観重要建造物として指定されたものや歴史的な価値を有する建築物として別に定められたもの
- 公益上その他の事由により市長が課税を不適当と認める場合
上記に該当する場合には、空き家税の課税基準日となる年の1月31日までに申告書を提出しなければなりません。また、所有者の転勤や海外赴任、入院、高齢者施設などへの入所などの場合も、申請をすれば減免措置を受けることが可能です。さらに、空き家の所有者が死亡した場合は、3年間課税が猶予されます。
税率
税額は1と2を合計し、算出します。
- 家屋価値割:【家屋】の固定資産評価額 × 0.7%
- 立地床面積割:敷地の【土地】1㎡当たり固定資産評価額 × 家屋床面積 × 税率※
※ 立地床面積割の税率は、固定資産税評価額によって異なります。
家屋価値割の課税標準 | 税率 | |
立地床面積割 | 700万円未満 | 0.15% |
700万円以上900万円未満 | 0.3% | |
900万円以上 | 0.6% |
家屋価値割の 課税標準 | 税率 | |
立地床面積割 | 700万円未満 | 0.15% |
700万円以上 900万円未満 | 0.3% | |
900万円以上 | 0.6% |
制度開始予定年度
空き家税の導入開始年度は2026年度以降になる見通し