個人事業主・フリーランス・副業・・・「開業届」の提出は必要?

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「開業届」とは?

開業届」とは、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人で新たに事業を開始したことを税務署に届け出るための書類で、原則として、事業を開始してから1ヶ月以内に納税地を所轄する税務署に提出します。

ここでいう「事業」とは、一般的にイメージされる事業である「事業所得」、不動産賃貸業などを行う「不動産所得」、山林の伐採や売買を行う「山林所得」の3種類を指しており、事業と呼べるような規模で行っているか、また継続して行っているかなど、実態も加味して総合的に判断されます。

「開業届」の提出が不要な例

家庭にある不用品などをメルカリやヤフオクなどで販売した場合は、そもそも所得税の課税対象にならないため、開業届や確定申告書の提出は不要です。

FX取引の運用益や暗号資産(仮想通貨)の売却益等は個人事業に当たらないので開業届の提出は不要ですが、所得自体は雑所得として確定申告をする必要があります。

以下のような所得は、副業であれば開業届は不要ですが、所得が発生すれば雑所得として確定申告をする必要があります。ただし、規模が拡大し、営利目的で反復・継続して行うようになれば事業所得に該当する可能性があるので、副業であっても開業届を提出し、事業所得として申告するようにしてください。

  • ハンドメイド雑貨等をフリマアプリで定期的に販売した場合
  • 書籍や楽曲制作の印税やセミナー講師活動による講演料
  • Web小説や漫画投稿の報酬等
  • Youtube投稿やアフィリエイトによる収入
  • その他趣味で行う取引など

上記において、サラリーマンが副業として行う場合は、副業による所得が1年間に20万円以下であれば所得税の確定申告をする必要はありませんが、住民税にはこのような特例はありませんので、別途住民税の申告が必要になります

「開業届」が必要になる例

「開業届」の提出がなくても、税務上の罰則を受けることはありません。所得が発生したときに正しく確定申告を行えば、開業届の有無が問題になることはないでしょう。ただし、税務以外の場面で、開業届の有無が問題になることは意外にあります。

例えば、コロナ禍において多くの事業者が申請された「持続化給付金」ですが、新規開業者については「開業届」が申請書類として必要でした。この他にも新規開業時に申し込む融資などでも、開業の事実を明らかにする書類として「開業届」の提出を求められることがあります。また、小規模企業共済への加入や就労証明として利用するときにも、開業届は必要です。

お仕事で「屋号」を使われている方は特に注意

飲食店やブティックなど、お商売上の「屋号」にこだわりを持っておられる方は多いと思います。そのような方は、銀行口座を屋号で開設したいと思っておられるでしょうが、多くの銀行やゆうちょでは、屋号付きの口座を開設するために「開業届」の提出が義務付けられています。

開業日を「遡って」記載した開業届を提出したら・・・

開業届には開業日を記載する項目がありますが、日付を遡って記載して提出した場合はどうなるのでしょうか?

開業届は原則として開業した日から1ヶ月以内に提出しないといけないのですが、1年前や2年前の日付を記載して提出しても、税務署は受け付けてくれます。ただし、税務署に提出した際に押印される「収受印」は、実際に提出した日付になるため、前述の持続化給付金のような公的な助成金を申請する場合などでは無効とされることがあります。

最後に

個人事業主やフリーランスの方々の確定申告のお手伝いをさせていただく際、開業届の提出の有無を必ず尋ねるのですが、半数以上の方が開業届を提出していませんでした。普通に事業を営んでいるときにはそれで問題は生じませんが、コロナ禍のような不測の事態が発生した場合、たった1枚の書類がないために必要な援助が得られなくなることもありますので、開業された際には、忘れないように提出するようにしましょう。

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