インボイス制度:委託販売などを行った場合の「代理交付」と「媒介者交付特例」

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作家やクリエイターが利用する委託販売

ファッション小物や生活雑貨などを製作するハンドメイド作家やクリエイターの販売手段として広く活用されているものに、「委託販売」があります。

「委託販売」とは、小売販売店や販売業者、ECサイトなどに商品の販売業務を委託し、自身に代わって商品を販売してもらう販売手法です。ハンドメイド作家やクリエイターが自身の製作した雑貨やアクセサリー、作品などを雑貨屋さんやアクセサリーショップ、ギャラリーなどに預けて販売してもらう場合などが、この「委託販売」に該当します。

委託販売において作品や商品を出品する作家さんを「委託者」、作家さんから商品販売の依頼を受けて、作家酸の代わりに商品を販売する者を「受託者」と言いますが、委託販売を行う場合、物とお金の基本的な流れは以下の図のようになります。

委託販売とは

委託販売におけるインボイスの交付方法

委託販売においても、委託者が適格請求書発行事業者(インボイスの登録事業者)であれば、通常の販売方法と同様にインボイスを交付する義務が生じます。

ただし委託販売の場合、途中に受託販売業者を挟んでいることから、インボイスの交付にはいくつかの方法があります。

売り手(委託者)が買い手に直接インボイスを交付する方法

売り手が買い手に直接交付する方法は、一般的な商取引で行われる請求書の授受と大差ありませんが、間に委託販売業者が入っているため、いくつかのデメリットもあります。

直接交付

メリット

直接交付の場合、間に入る委託販売業者が適格請求書発行事業者(以下「インボイス登録事業者」といいます)でなくても良いというメリットがあります。

デメリット

一方、デメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 売り手側の立場からすると、販売した事実を委託販売業者に確認する手間と時間がかかること
  • 委託者の氏名(本名)が買い手に知られることになるので、アーチスト名や作家ネームでの活動に支障が生じる可能性があること

代理交付による方法

委託販売における代理交付とは、売り手に代わって委託販売業者が買い手にインボイスを交付する方法です。

代理交付

メリット

  • 委託販売業者がインボイス登録事業者でなくても適用できます
  • 売り手がインボイスを交付する手間が省けますので、販売アイテム数が多い作家さんの場合、事務に割く時間を大幅に減らすことができます

デメリット

インボイスに売り手の氏名(または屋号)や名称、インボイス登録番号を記載する必要があるため、作家さんやアーティストの情報が買い手に知られるという大きなデメリットがあります。

匿名やハンドルネームなどで制作活動をされている方にとってこれは致命的で、例えばAmazonのような大手ECサイトで販売する場合、影響は相当なものになると思われます。

媒介者交付特例による方法

媒介者交付特例とは、売り手である委託者と買い手との間に、ECサイトのような委託販売事業者(Amazonマーケットプレイスなど)を挟んで取引が行われる場合、委託販売事業者(受託者)が、売り手(委託者)に代わってインボイスを交付することができる制度です。

媒介者交付特例

適用要件

媒介者交付特例を受ける場合には、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 売り手(委託者)と委託販売事業者(受託者)が両方ともインボイス登録事業者であること
  2. 売り手(委託者)がインボイス登録事業者であることを、委託販売事業者(受託者)に取引前までに通知していること

媒介者交付特例の特徴

媒介者交付特例を利用した場合に交付されるインボイスには、委託販売事業者(受託者)の氏名とインボイス登録番号のみが記載されます。

そのため、売り手(委託者)側の情報が表に出ないため、匿名性が高く、作家・漫画家・デザイナーなどビジネスネームで活動している方にとってはベストな選択といえます。代理交付との違いは、この高い匿名性にあるといって良いでしょう。

最後に

以前の記事(インボイス制度・電子帳簿保存法におけるAmazon領収書の取り扱い)でAmazonで物品を購入した場合のインボイスの解説をしましたが、今回の記事はAmazonに出品する側の解説となります。両者とも、インボイス制度との関連についての解説ですが、同時に、電子帳簿保存法とも関連する項目となります。委託販売を行っている方については、インボイス制度だけでなく、電子帳簿保存法についても理解の幅を広げられるようお願いします。

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