なぜ同じ土地で金額が違うのか|不動産会社・銀行・税理士の評価が一致しない理由

「不動産会社に査定してもらった金額と、銀行に提示された担保評価額、それから税理士に出された相続税評価額。同じ土地のはずなのに、なぜどれもバラバラなの?」――そんな疑問を持たれる方は少なくありません。

実は、土地の価額には「唯一の正解」があるわけではなく、目的ごとに使われる価額が異なります。売買のための価額、融資のための価額、課税のための価額――それぞれが別の物差しで測られているのです。

この記事では、土地の価額が複数存在する理由を整理したうえで、不動産会社・銀行・税理士という3つの立場が、なぜ違う金額を出してくるのかを実務の視点から解説します。

※本記事は2026年5月1日時点の法令等に基づいて執筆されています。

目次

同じ土地で金額が違うのは「評価の目的」が違うから

この章のポイント
  • 売買・融資・課税で評価の目的が異なる
  • 立場が違えば、見ている「価値」も違う
  • 「どれが本当の金額か」という問いの立て方そのものを変える

そもそも土地の価額は、ひとつの絶対的な数字として存在するものではありません。誰が、何のために利用するかによって、評価の方法が変わるからです。同じ土地を前にしても、不動産会社・銀行・税理士はそれぞれ別の目的で価額を算定しています。まずはこの「目的の違い」を押さえることが、価額のバラつきを理解する第一歩です。

売買・融資・課税で評価の目的が異なる

土地の価額が複数あるのは、評価の目的そのものが異なるからです。不動産会社が査定する金額は「売買のための価額」、銀行が算出する担保評価額は「融資のための価額」、税理士が用いる相続税評価額は「課税のための価額」となります。

たとえば不動産会社が見ているのは「いくらで売れるか」、銀行が見ているのは「貸したお金が返ってこなかったとき、いくらで処分できるか」、税理士が見ているのは「相続税法上、いくらで評価することが定められているか」です。同じ土地でも目的が変われば算定の物差しが変わるため、算出される価額もおのずと異なるものとなります。

立場が違えば、見ている「価値」も違う

それぞれの立場は、土地の異なる側面を価値として捉えています。不動産会社は市場での需給と買い手の購買意欲、銀行は処分可能性とリスク、税理士は法令・通達に従った定型的な評価額を見ています。

たとえば駅から遠く需要の弱い土地でも、相続税路線価は機械的に算定されますし、再建築不可の物件は実勢価格が低くても固定資産税評価額はそれほど落ちないこともあります。このように「価値」と一口に言っても、立場ごとに見ている要素はまったく別物です。同じ土地について複数の金額が出てくるのは、ある意味で当然のことだと言えます。

「どれが本当の金額か」という考え方そのものを変える

ここで重要なのは、「どれが本当の金額か」と一つに絞ろうとしないことです。土地の価額は目的別に複数存在するのが前提であり、場面ごとに「いま見るべきはどの価額か」を判断するのが実務の基本となります。

「正解はひとつ」ではなく、「目的に応じて使い分ける」と発想を切り替えることで、複数の金額が並ぶことへの違和感は自然に解消されていきます。次章以降で、それぞれの価額がどのような目的のもとで成り立っているのかを順に見ていきます。

土地の価額には複数の種類がある

この章のポイント
  • 公示地価・基準地価は「指標」としての価額
  • 相続税路線価は公示価格のおおむね8割
  • 固定資産税評価額は公示価格のおおむね7割
  • 実勢価格は市場で実際に成立する価格

土地の価額は、実務上「一物四価」あるいは「一物五価」と表現されることがあります。これは、ひとつの土地に対して4〜5種類の異なる価額が存在することを指す言い回しです。それぞれが別の法令や制度を根拠としており、評価時点や公表時期、価格の水準も異なります。ここでは主要な5つの価額を整理して見ていきます。

公示地価・基準地価(国・都道府県が示す指標価格)

公示地価と基準地価は、土地取引の指標として国や都道府県が公表する価格です。地価公示法に基づく公示地価は、毎年1月1日時点の標準地の正常な価格を、国土交通省・土地鑑定委員会がその年3月下旬に公表します。一方、基準地価は国土利用計画法施行令に基づき、都道府県知事が毎年7月1日時点の価格を9月下旬頃に公表します。

両者はいずれも、土地取引や公共用地取得の規準として用いられる「正常な価格」であり、市場の実勢価格に近い水準を示すものとされています。基準地価は、年の半ばで地価動向を把握する役割を持ち、公示地価を補完する位置づけです。

相続税路線価(課税のための価額。公示価格のおおむね8割)

相続税路線価は、相続税や贈与税の計算で宅地を評価するための価額です。相続税法22条の時価主義を前提に、財産評価基本通達に基づいて国税庁が毎年1月1日時点の価格を、その年7月上旬に公表します。

価格の水準は、公示地価のおおむね8割を目安に設定されているとされています。これは法令で明文化された比率ではなく、地価公示との整合を図るための運用上の目安です。そのため、年や地域によっては必ずしも8割ぴったりにならない点には注意が必要です。路線価が設定されていない地域については、固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を乗じる「倍率方式」が用いられます。

固定資産税評価額(課税のための価額。公示価格のおおむね7割)

固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税のほか、不動産取得税や登録免許税の課税標準としても用いられる価額です。地方税法343条・349条および総務大臣が定める固定資産評価基準に基づき、市町村(東京23区は都)が評価します。

水準は公示地価のおおむね7割を目途とすることが、総務省資料や自治体の公式説明で示されています。平成6年度の評価替えから、宅地の評価は公示価格の7割を目途に行うこととされました。また、土地の固定資産税評価額は3年ごとに評価替えが行われ、原則として残り2年は据え置かれます。直近の評価替えは令和6年度であり、次回は令和9年度の予定です。

実勢価格(実際に売買が成立する価格)

実勢価格は、実際の市場で売買が成立する価格を指します。これまでに紹介した4つの価額が法令や通達を根拠とするのに対し、実勢価格には公的な一元的ルールがありません。市場の需給、買い手・売り手の事情、物件固有の要因(立地、形状、接道、用途地域など)によって決まる、最も「時価」に近い価格と言えます。

不動産会社が査定で提示する金額は、この実勢価格を見立てたものです。ただし査定額はあくまで「これくらいで売れるだろう」という予測であり、実際の成約価格と一致するとは限りません。買い手が現れて初めて確定する性質のものですから、査定額をそのまま「うちの土地の時価」と受け取るのは早計です。

不動産会社の査定額(実勢価格)はどう決まるか

この章のポイント
  • 査定は近隣の取引事例などをもとに算定される
  • 査定額と成約価格は必ずしも一致しない
  • 査定額をそのまま「時価」とみなすのは早計

不動産会社が提示する査定額は、市場で実際に売買が成立しそうな価格を見立てたものです。一定のルールに基づいて算定されますが、最終的に成約する価格は買い手次第で変動します。ここでは、査定の基本的な考え方と、査定額を読むときの注意点を整理します。

査定の基本となる3つの考え方

不動産の評価には、不動産鑑定評価基準で示される3つの基本的な手法があります。

1つ目が「取引事例比較法」で、近隣で実際に取引された類似物件の価格を参考に、立地・面積・形状・築年数などを比較・補正して価額を出す方法です。2つ目が「収益還元法」で、賃貸に出した場合の収益から逆算して価額を求める方法です。3つ目が「原価法」で、その物件を新たに調達するとしたらいくらかかるかを基準に評価する方法です。不動産会社の査定価格は、これらの考え方を踏まえつつ、近隣の取引事例や市況を勘案して提示されるものとされています。査定額の根拠となっている要素を確認することで、提示された金額の意味合いも掴みやすくなります。

査定額と実際の成約価格は一致しない

不動産会社が提示する査定額は、あくまで「これくらいで売れるだろう」という予測値です。実際の成約価格は、買い手が見つかって価格交渉が成立した時点で初めて確定します。

たとえば査定額が3,000万円であっても、買い手がつかなければ売れません。逆に複数の買い手が現れて競合すれば、査定額を上回る価格で成約することもあります。市況の変化、買い手の資金事情、売り急ぎの有無などによって、査定額と成約価格には差が生じるのが通常です。また、不動産会社によって査定額自体が数百万円単位で異なることも珍しくありません。1社だけの査定で「これがうちの土地の時価」と判断するのは、実態とずれるおそれがあります。

複数社の査定を比較し、査定額の根拠を確認したうえで、市場の動向もふまえて売出価格を決めるのが実務的な流れとなります。

【元銀行員の視点】銀行の担保評価額はなぜ低いのか

この章のポイント
  • 担保評価は「処分できる金額」目線で算定される
  • 掛目・再建築可否・接道・用途地域による評価の違い
  • 担保評価額を過信した資金計画はリスクを抱える

銀行が提示する担保評価額は、不動産会社の査定額や相続税評価額と比べると、かなり低く出ることが多いものです。「うちの土地は3,000万円で売れると言われたのに、銀行の評価では1,500万円しかつかない」――こうした感想は、融資の現場でしばしば聞かれます。なぜそこまで差が出るのか。銀行が何を見ているのかを押さえると、その理由がわかります。

担保評価は「処分できる金額」目線で算定される

担保評価額が低めに出るのは、銀行が「貸したお金が返ってこなかったとき、いくらで処分できるか」という視点で土地を見ているからです。

銀行にとって担保は、最後の回収手段となります。仮に融資先の事業が立ち行かなくなり、競売や任意売却で土地を処分することになった場合、買い手はリスクを織り込んだ価格でしか動きません。市況が悪化していれば、相場より大幅に安く叩かれることもあります。銀行はそうしたシナリオを想定したうえで、「最悪の場面でも回収できる金額」を担保評価額として設定します。実勢価格の8割程度を上限の目安とし、そこからさらに掛目を乗じて評価額を出す、というのが多くの金融機関の実務感覚です。みなさんが査定額や売買事例を念頭に「もっと評価がついてもよさそうなのに」と感じるのは、銀行の物差しが「売値」ではなく「処分価値」だからです

掛目・再建築可否・接道・用途地域による評価の違い

担保評価額は、土地の属性によって大きく変わります。同じ広さの土地でも、銀行の見方ひとつで評価額が半分以下になるケースもあります。

実務でよく問題になるのが、再建築可否です。建築基準法上の接道義務を満たしていない、いわゆる再建築不可物件は、買い手が現れにくく処分性が極めて低いと判断されます。担保評価がほぼゼロ扱いになる金融機関もあります。接道幅が狭い、間口が極端に小さいといった土地も評価が下がりやすい傾向があります。用途地域も影響します。市街化調整区域や農地は原則として住宅が建てられないため、市街化区域内の宅地と比べて担保評価は大きく下がります。さらに、借地権の有無、抵当権の設定状況、土壌汚染や埋蔵文化財の有無など、処分時に支障となりうる要素は、いずれも評価を引き下げる方向に働きます。「土地の広さ×単価」で単純に計算した金額と、銀行の担保評価額が大きく違うのは、こうした個別事情を細かく織り込んだ結果なのです。

担保評価額を過信して資金計画を立てるリスク

融資を前提とした事業計画や購入計画を立てるときに、担保評価額を高めに見積もっておくと、後で資金繰りが詰まることがあります。

たとえば「この土地なら3,000万円くらい融資が見込まれるだろう」と踏んで物件購入や設備投資の計画を組んでも、実際に銀行に持ち込んでみたら担保評価が1,500万円しかつかず、想定の半分しか借りられなかった、というケースは少なくありません。差額の自己資金を急いで準備できなければ、計画そのものが頓挫します。融資判断は担保評価だけで決まるわけではなく、事業の収益力や返済能力も総合的に見られますが、それでも担保評価が想定より低いと、必要額に届かない事態は起こりえます。借入を含めた資金計画を立てるときは、早い段階で取引銀行に物件情報を伝え、おおまかな担保評価の目線をすり合わせておくことが重要です。

決算書の簿価と銀行が見ている価額のずれ

法人で土地を所有している場合、決算書の貸借対照表に記載されている土地の金額は「取得時の簿価」です。これは取得した時点の購入価格であり、現在の時価でも担保評価額でもありません。バブル期に高く買った土地が簿価のまま残っている、逆に何十年も前に安く取得した土地がそのまま簿価で計上されている、というケースはよく見かけます。銀行は決算書の簿価を参考にしますが、それを鵜呑みにはせず、別途で担保評価額を独自に算定しています。経営者の方が決算書だけを見て「うちにはこれだけの資産がある」と捉えていると、実際の融資余力との間に大きなギャップが生じます。自社所有不動産については、簿価・実勢価格・担保評価額の3つを分けて把握しておくのが無難です。

相続税評価額は「路線価×面積」だけでは決まらない

この章のポイント
  • 路線価方式と倍率方式は地域によって使い分け
  • 路線価方式では各種補正で評価額が動く
  • 小規模宅地等の特例で大幅な減額が認められることがある

相続税の場面で土地を評価する際、よくあるイメージは「路線価×面積で計算する」というものです。たしかに基本構造としてはその通りですが、実際の評価額はそれだけでは決まりません。土地の形状や接道、地域の特性、相続人の利用状況によって、評価額は大きく変わります。ここでは相続税評価額の基本構造と、押さえておくべき主要な論点を整理します。

路線価方式と倍率方式の使い分け

相続税の宅地評価には、地域によって2つの方式が用いられます。路線価が定められている地域では「路線価方式」、路線価が定められていない地域では「倍率方式」が適用されます。

路線価方式は、土地が面する道路に付けられた1平方メートルあたりの価額(路線価)に、各種補正率と地積を乗じて評価額を算出する方法です。一方、倍率方式は、その土地の固定資産税評価額に、国税庁が地域ごとに定める倍率を乗じて評価額を出す方法です。どちらの方式が適用されるかは、国税庁が公表する路線価図・評価倍率表で確認できます。路線価図・評価倍率表では、都道府県・市区町村・町丁字を選択して該当地域の情報を閲覧できる仕組みです。路線価図上の数字は千円単位で表示されており、たとえば「400B」とあれば1平方メートルあたり40万円を意味します。

各種補正(不整形地・奥行・間口・がけ地など)で評価が変わる

路線価方式では、土地の形状や接道状況に応じて、評価額を補正する仕組みが設けられています。財産評価基本通達に基づく補正であり、土地の利用価値の差を反映させるためのものです。

代表的なものとしては、奥行価格補正(道路に面する距離と奥行のバランスによる補正)、不整形地補正(L字型や三角形などの形状の悪さに対する補正)、間口狭小補正(間口が極端に狭い土地への補正)、がけ地補正(がけ地や高低差のある土地への補正)などがあります。これらの補正率は、財産評価基本通達の別表に細かく定められており、土地の条件に応じて評価額に作用します。たとえば不整形地補正と奥行価格補正が重なるケースでは、単純に「路線価×面積」で計算した金額より評価額が下がることになります。実務では、二方路線価補正(2つの道路に面する場合の調整)や角地の側方路線影響加算なども絡み、計算は思った以上に複雑になります。

路線価をそのまま使って自己計算すると危ない理由

「うちの土地は路線価が30万円で200平米だから、相続税評価額は6,000万円ですね」――こうした自己計算を耳にすることがありますが、実際の評価額はこれより低くなることも、逆に高くなることもあります。不整形地補正や奥行価格補正で下がる方向に働くこともあれば、角地で側方路線影響加算が乗って上がることもあります。さらに、貸家建付地や貸宅地として利用されている場合は、借家権割合や借地権割合を控除する別の評価減も入ってきます。路線価ベースの単純計算は、あくまで「ざっくりした目安」と捉えるのが無難です。実際に申告に使う評価額は、土地ごとの個別事情を踏まえて算定する必要があるため、税理士に相談してから動くのが安全です。

小規模宅地等の特例による大幅な減額

相続税の宅地評価で見落とせないのが、小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)です。一定の要件を満たすと、評価額を大幅に減額できる制度で、相続税額に与える影響は非常に大きいものとなります。

特例の対象となる宅地は主に3類型あります。被相続人が居住していた宅地に係る「特定居住用宅地等」、被相続人の事業に使われていた宅地に係る「特定事業用宅地等」、賃貸事業に供されていた宅地に係る「貸付事業用宅地等」です。それぞれ限度面積と減額割合が定められており、たとえば特定居住用宅地等は330平方メートルまで80%減額、特定事業用宅地等は400平方メートルまで80%減額、貸付事業用宅地等は200平方メートルまで50%減額が認められます。適用には、被相続人や相続人の利用状況、保有継続要件、事業継続要件など細かな条件があり、家なき子特例や配偶者の取得に関する別ルールも絡みます。要件を一つでも欠くと適用が受けられないため、適用可否の判断は慎重に行う必要があります。

同族間・親族間で土地を動かすときの「時価」の論点

この章のポイント
  • 売買・贈与・賃貸借で問われる「適正な時価」とは
  • 低額譲渡・高額譲渡・使用貸借の認定リスク
  • 路線価が「著しく不適当」とされる総則6項のリスク

同族会社や親族の間で土地を売買・賃貸する場面では、「いくらで取引するか」が税務上の大きな論点になります。第三者間の取引であれば市場で価格が決まりますが、同族間では恣意的な価格設定が可能なため、税務当局は特に厳しい目で見ています。「相続税路線価で売買すれば安心」「決算書の簿価で動かせば問題ない」といった単純な発想では、思わぬ追徴課税につながることがあります。実務でよく問題になるパターンを整理します。

売買・贈与・賃貸借で問われる「適正な時価」とは

同族間取引で最初に押さえるべきは、「時価」という言葉が税目ごとに異なる意味を持つという点です。一つの取引でも、相続税・贈与税・所得税・法人税の各税目から、それぞれの時価で評価される場面が出てきます。

たとえば社長個人が所有する土地を、自分の同族会社に売却するケースを考えてみます。このとき問題になる時価は、相続税法上の評価通達による価額(財産評価基本通達)と、所得税・法人税上の時価(法人税基本通達9-1-14、所得税基本通達59-6など)の2系統があります。評価通達は相続税・贈与税の計算ルールであるのに対し、所得税・法人税の世界では、不動産鑑定評価額や近隣の取引事例といった実勢に近い時価が前提となります。相続税路線価で売買すると、評価通達上は問題なくても、所得税・法人税の世界から見ると「実勢価格より低すぎる」と判断されることがあるのです。同族間取引では、各税目の時価概念がそれぞれ独立して動くという前提を持っておくことが重要です。

低額譲渡・高額譲渡・使用貸借の認定リスク

時価の判断を誤ると、当事者の意図とは別に、税務上のみなし規定が働いて課税される事態が起こります。実務で問題になりやすい代表的な3パターンを表に整理します。

パターン取引の内容課税上の扱い(主なもの)
低額譲渡土地を時価より著しく低い価額で売買個人間:買主側に相続税法7条のみなし贈与/法人が絡む場合:法人側に受贈益課税、個人売主側に所得税法59条のみなし譲渡
高額譲渡土地を時価より著しく高い価額で売買同族会社が社長から高く買った場合:差額が役員賞与と認定され、損金不算入かつ源泉徴収漏れの問題が発生
使用貸借・低額賃貸同族会社に土地を無償または極端に安く貸す賃料相当額が役員報酬や受贈益と認定されることがある

いずれのパターンでも、税務調査で問題にされやすい領域です。「身内の取引だから自由に決めてよい」という発想は通用せず、税務上は第三者間取引と同等の合理性が求められます。同族間で土地を動かす前に、税理士と時価評価のすり合わせをしておくことが、後々のトラブル回避につながります。

路線価が「著しく不適当」とされる総則6項のリスク

財産評価基本通達には、評価通達による評価が「著しく不適当」と認められる場合に、国税庁長官の指示を受けて別途評価を行うとする規定があります。これがいわゆる「総則6項」と呼ばれるもので、節税スキームに対して使われることから「伝家の宝刀」とも称される条項です。

総則6項が大きく注目されたのが、令和4年4月19日の最高裁判決です。被相続人が高額な不動産を借入で取得し、相続時に路線価方式で低く評価して申告したところ、税務署が路線価評価では租税負担の公平を著しく害するとして、鑑定評価による評価に基づく更正処分を行った事案でした。最高裁は税務署側の処分を支持し、評価通達に形式的に従っていても、節税目的が顕著で他の納税者との公平を害する場合には総則6項が適用され得ることを明確にしました。この判決を受けて、特に取得価格と路線価評価額の乖離が大きく、節税意図が明らかな取引については、否認リスクが高まっています。「路線価で評価すれば必ず認められる」という思い込みは禁物で、特に高額不動産を絡めた相続対策を検討する場面では、リスクの見極めが欠かせません。判例の射程は事案の個別事情に大きく左右されるため、具体的な対策を講じる前に、税理士と十分な打ち合わせをしておくことが重要です。

まとめ

土地の価額は、目的ごとに使い分けるものです。売却を検討するなら不動産会社の査定額(実勢価格)、融資を受けるなら銀行の担保評価額、相続税を試算するなら相続税評価額、固定資産税の確認なら固定資産税評価額――場面に応じて見るべき数字は変わります。

複数の金額が並んでも、「どれが正解か」と一つに絞ろうとせず、「いまの目的に合うのはどれか」を起点に判断することが、土地の価額と向き合うときの基本となります。判断に迷うときは、税理士や金融機関の担当者に早めに相談されるのが安全です。

参考資料

この記事を書いた人

京都市北区で「世良税理士事務所」を運営しています。
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