高校生の扶養控除が縮小・廃止になったら?

本日の記事はニュース等によるもので、政府により正式に決定されたものではありません。

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自民党税制調査会案によると

少子化対策の一環として、児童手当の対象を高校生まで広げるという良いニュースが飛び込んできましたが、それと同時に、政府・与党は、高校生(16~18歳)の子どもがいる世帯の扶養控除について、2024年度税制改正に向けて控除額を縮小する案を議論しているというニュースも報道されました。

扶養控除を縮小する大きな理由として、現行の児童手当の対象となっている中学3年生(15歳)に対する扶養控除は既に廃止されており、児童手当の対象を高校生にまで広げるに当たって、同様に扶養控除を廃止しないと手当と控除の二重の優遇となるとのこと。

別の意味での異次元の少子化対策ですが・・・

この記事を書いている時点(2023年12月11日)ではまだ廃止か縮小か、または見送りなのかはわかりませんが、もしも扶養控除が廃止された場合の実質手取額と、同じく現時点での縮小案(所得税38万円⇒25万円・住民税33万円⇒12万円)が可決した場合の実質手取額をまとめてみました。

扶養控除縮小による給与収入別手取額

所得控除については、扶養控除(高校生1人)と基礎控除のみで計算し、住民税は自治体により独自の税が課されている場合がありますので、一律10%で計算しています。

給与収入児童手当(年額)扶養控除縮小による
所得税・住民税の負担増
実質手取額
3,000,000円120,000円27,600円92,400円
4,000,000円120,000円31,800円88,200円
5,000,000円120,000円34,200円85,800円
6,000,000円120,000円47,500円72,500円
7,000,000円120,000円47,500円72,500円
8,000,000円120,000円47,500円72,500円
9,000,000円120,000円47,500円72,500円
10,000,000円120,000円51,500円68,500円

給与収入6百万円を超えるあたりから実質手取額がグッと減る感じですね。児童手当の4割くらいが国にもっていかれるイメージです。

扶養控除廃止による給与収入別手取額

同様の条件で、仮に扶養控除が廃止された場合(この案も検討されています)は、とんでもないことが起こります。

給与収入児童手当(年額)扶養控除廃止による
所得税・住民税の負担増
実質手取額
3,000,000円120,000円52,400円67,600円
4,000,000円120,000円50,900円69,100円
5,000,000円120,000円71,800円48,200円
6,000,000円120,000円110,600円9,400円
7,000,000円120,000円110,600円9,400円
8,000,000円120,000円110,600円9,400円
9,000,000円120,000円110,600円9,400円
10,000,000円120,000円122,300円▲2,200円

なんと給与収入が1千万円を超えるあたりから、児童手当の年額よりも所得税・住民税の負担の方が多くくなってしまい、手取りがマイナスになってしまうんですね。

最後に

税制改正大綱が発表される前ですのでまだなんとも言えないですが、この縮小案に対し、政府関係者は「全ての所得層で児童手当の支給額が控除縮小に伴う所得税と住民税の増加分を上回る」と述べたそうです。確かにそのとおりですが、実質手取額で計算すると、毎月5千円~7千円程度の給付・・・

文部科学省の令和3年度子供の学習費調査によると、高校生の毎月の塾代の平均額が月3万~4万円だそうです。もちろん給付していただくのはありがたい話なんですが、異次元どころか、実態に全くそぐわない政策ではないかなと思ってしまいます。

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