確定申告:複数の事業を行っている場合の青色申告控除の適用方法

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青色申告特別控除とは?

青色申告特別控除とは、所得税の確定申告を青色申告により行う場合に、一定の要件を満たすことで、所得の金額から一定額(10万円・55万円・65万円)を控除することができる制度のことを言います。

所得税は所得の性格に応じて10に区分されており、そのうち青色申告特別控除が適用される所得は、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」の3つに限定されています。不動産所得は不動産賃貸業を営んでいる方に対する所得、山林所得は主に林業を営んでいる方に関係する所得、この2つ以外の事業に係る所得が事業所得になります。

なお、不動産所得には他と異なる概念があり、その規模により「事業的規模」と「事業的規模以外」に分けられます。なお、事業所得に該当するものでも、事業と呼べる規模で行っていない場合は「雑所得」となる可能性がありますが、雑所得は青色申告の対象外ですので、当然青色申告特別控除の適用はありません。

各控除額の適用要件

青色申告特別控除については、どこまで要件を満たすかによって、10万円・55万円・65万円と控除額に差が生じます。

スクロールできます
所得区分
(控除順序)
原則
(10万円)
特例
(55万円)
特例
(65万円)
不動産所得事業規模を問わない
簡易的な帳簿で
青色申告者なら誰でも可
全ての取引内容を
正規の簿記の原則
従って詳細に記録
55万円の要件を満たした上で
e-Taxで申告
事業所得
山林所得適用なし適用なし

青色申告特別控除のうち、10万円の控除については、青色申告により確定申告する場合には誰でも適用できます。帳簿をつけるルールも家計簿のような簡易的な形式で問題ありません。

特例の55万円または65万円については、事業的規模で行っていない不動産所得および山林所得には適用がありません。

なお、事業的規模の説明については、下記の記事をご参照ください。

複数の事業を行っている場合の注意点

例えば、不動産賃貸業(不動産所得)と工事業(事業所得)といった所得区分の異なる複数の事業を営んでいる場合、青色申告特別控除はどのように適用すればよいのでしょうか?

これについて所得税法では、青色申告特別控除を「不動産所得⇒事業所得⇒山林所得」の順番で適用するよう定めています。

具体例:1

令和6年分の不動産所得(事業的規模)の金額:25万円
令和6年分の事業所得の金額:80万円

なお、上記は青色申告特別控除前の所得金額であり、本年は55万円の控除を適用する予定である。

青色申告特別控除は所得の金額を限度としますので、上記の例では、まずは不動産所得の金額から25万円を控除し、残りの30万円を事業所得の金額から控除します。結果、不動産所得の金額はゼロ、事業所得の金額は50万円となります。

具体例:2

令和6年分の不動産所得(事業的規模以外)の金額:70万円
令和6年分の事業所得の金額:100万円

なお、上記は青色申告特別控除前の所得金額であり、本年は65万円の控除を適用する予定である。

不動産所得が事業的規模でない場合の青色申告特別控除ですが、この場合でも不動産所得の金額から65万円控除を適用していきます。結果、不動産所得は5万円、事業所得は100万円となります。

不動産所得単体であれば、事業的規模でない所得については10万円の控除しか適用できませんが、他に事業所得があれば、最大65万円までの控除を受けることができます。

青色申告特別控除を記載せず確定申告した場合

青色申告特別控除のうち、55万円控除・65万円控除については、青色申告特別控除の金額を記載した確定申告書を、所得税の確定申告期限までに提出しないと適用することができないので、申告期限を過ぎて提出した場合(期限後申告と言います)、55万円・65万円の青色申告特別控除を使うことができません。

ただし、10万円の控除については、確定申告書への記載を要件としていないため、期限後申告でも適用することができます。

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