インボイス関連の税制改正は?
何かと不満の多いインボイス制度ですが、今回の税制改正大綱において何かしらの緩和措置がないかと期待しておりましたが、どうやら微調整程度の改正に留まったようです。
というわけで、インボイスを含めた消費税関連の改正の中から、一般の方にも関係しそうなものを2つだけ解説します。
「自動販売機特例」に係る住所記載要件が不要に
自動販売機や自動サービス機を利用して商品を購入したりサービスの提供を受けた場合には、税込3万円未満のものに限り、一定の事項を記載した帳簿を保存するだけでインボイスを不要とする制度(以下「自動販売機特例」といいます)がありますが、現行制度ではインボイスがなくても良い代わりに、帳簿にその自動販売機等の住所等を記載する必要がありました。
当初から自動販売機の場所を特定してどうするんだろうと思ってましたが、どうやら国も意味がないと思ったようで、今回の改正により帳簿への住所等の記載が不要となりました。
この改正はインボイス制度が開始された令和5年10月1日に遡って適用されるため、もともと記載していなかった方についても、問題なく自動販売機特例が適用されます。
ただし、「自動販売機特例」などの特例対象である旨の帳簿への記載まで省略しても良いとは書かれていないので、特例対象である旨は帳簿に記載するようにしましょう。
簡易課税または2割特例を選択した場合の消費税の経理処理方法の見直し
消費税の計算方法として「簡易課税」または「2割特例」を選択した事業者が、「税抜経理」を採用している場合の「仮払消費税」の計算方法を明確にする旨の改正が行われます。
この論点についてはこれまで明確にされてきませんでしたが、今回の改正により、毎期継続して適用することを条件に、次のように計算することが認められます。
- 税込対価の額に110分の10を乗じた金額
- 軽減税率対象の場合は、税込対価の額に108分の8を乗じた金額
最近の会計ソフトは賢いので、どのソフトも課税仕入れに係る消費税の区分について、「適格」か「特例80%」かを登録できるようになっていると思います。
「簡易課税」等を選択した場合、納付する消費税は売上だけで計算されるので、課税仕入れに係る消費税の区分については消費税の納税額に影響しませんが、「特例80%」の区分で計算した場合、残りの20%が本体の経費に加算されますので、法人税や所得税の計算に影響を及ぼすことになります。少額減価償却資産や交際費等の損金不算入の計算にも影響を与えるのは簡易課税を選択していても本則課税と同じなので、どの処理方法を選択するかをきちんと判断する必要があります。