インボイス制度:インボイス交付義務が免除される「自動販売機特例」とは?

目次

インボイス制度開始前の最後の確認

本日は令和5年9月29日です。最後の確認となりますが、インボイスの登録申請を取り下げる方は、所定の事項を記載した取り下げ書を9月30日までに提出しないといけません。ただし、この取り下げ書はインボイス登録センターに郵送することになっているため、実際は令和5年9月29日必着となっています。

一方、令和5年10月1日からインボイス登録事業者となる方は、令和5年9月30日が申請書の提出期限となり、他の申請書のように休日明けの10月2日が期日とはならないので注意してください。従って、本日中に提出できない方は、所轄の税務署に確認の上、税務署の夜間ポストに投函すれば9月30日に提出されたものとして扱われます。

「自動販売機特例」とは?

従業員が出張した際に荷物をコインロッカーに預けたり、セミナー参加者に配るジュースを自動販売機で購入することなどは、業種によっては普通にあることだと思います。このような場合、インボイスの取り扱いはどうなるのか疑問に思われたことはありませんか?

実はインボイス制度導入前は、税込3万円未満の領収書についての特例があり、一定の事項を帳簿に記載しておけば、領収書がなくても消費税の仕入税額控除が可能でした。

インボイス制度導入後はこの3万円の特例が廃止され、新たに、請求書等の交付を受けることが困難な自動販売機からの3万円未満の物品購入については、インボイスの交付義務や保存義務が免除される「自動販売機特例」が設けられることになりました。

自動販売機特例の対象

以下のような「機械装置単独で代金の決済や物品・サービスの受け渡しが完結」するものが対象となります。

  1. 自動販売機による飲食料品の販売
  2. コインロッカー
  3. コインランドリー
  4. 金融機関のATMによる振込・入出金サービス など

一方、よく似たサービスでも以下のようなものは対象となりません

  1. コインパーキングや自動券売機
    (代金の受領と券類の発行はその機械装置で行われているけどサービス提供や資産の譲渡等は別途行われるようなもの)
  2. 小売店内に設置されたセルフレジ
    (機械装置により単に精算が行われているだけのもの)
  3. インターネットバンキングによる振込・入出金サービス

「コイン●●」や「セルフ●●」といった名称のサービスはたくさんありますので、「単独で完結するか否か」をおおよその基準として考えると良いと思います。

自動販売機特例適用時の帳簿の記載事項

インボイスの保存義務の有無に関わらず、インボイス制度における帳簿の記載事項は以下の通りです。

  1. 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  2. 課税仕入れを行った年月日
  3. 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 課税仕入れに係る支払対価の額

自動販売機特例を適用する場合には、上記に加え、以下の項目も帳簿に記載する必要があります。

  1. 特例対象である旨の記載(「自動販売機特例」などと記載)
  2. 仕入れの相手方の住所又は所在地

追加項目の1はわかりますが、2はどういうことでしょうか?

これは、「自動販売機で購入した場合は、その自動販売機が設置してある住所」を記載しなさい、ということですが、これまた謎ルールですよね。。

判断に困りますが、どうやら自販機であれば「京都市自販機」、ATMであれば「京都銀行北大路支店ATM」程度が記載されてあれば大丈夫なようです。

令和5年12月19日追記

この住所等の記載要件については、令和6年度税制改正により、令和5年10月1日に遡って帳簿への記載を不要とする旨の改正が行われました。

最後に

弊所のお客様には他府県に渡って工事を請け負っておられる会社がありますが、社長に「暑い中作業するときに職人さんに配っている自販機のジュースですが、市町村まででいいので買った場所の住所をメモしておいてくださいね」とお伝えしたら、「住所のない山奥で仕事しとんねん」と言われました。

もちろん住所はあるのでしょうが、確かにいちいち調べてメモなんかしてられないですよね。。

目次