車検費用の明細を必ずチェックする理由
弊所のお客さまであればお分かりかと思いますが、社用車を車検に出された場合、必ず車検明細を頂くようにお願いしていると思います。
車検費用の明細を必ずお願いする理由は、車検費用の全額が点検費用や修繕費として処理されるのではなく、車検費用の中にはには法律上決められた費用や税金、保険料などが含まれているため、単純に車両費や修繕費で処理できないからです。
車検費用に係る仕訳の方法
法人税法上も所得税法上も車検費用は事業経費として処理することができますが、個人事業主でプライベートと事業用で兼用している場合は、事業用として使っている部分のみを経費とし、プライベート部分については「事業主貸」という勘定科目で処理します。
さらに、車検費用には内容の異なる複数の項目が含まれていますので、費用の内容に応じ、以下のような勘定科目で処理をするとともに、消費税の課税区分にも注意が必要です。
費用の性格 | 費用の内容 | 勘定科目 | 消費税区分 |
---|---|---|---|
法定費用 | 自動車重量税 | 租税公課 | 不課税 |
収入印紙・証紙代 | 租税公課 | ||
自賠責保険料 | 保険料 | 非課税 | |
点検・整備費用 | 車検基本料 | 車両費(修繕費) | 課税 |
法定点検料 | 車両費(修繕費) | ||
整備修理費用 | 車両費(修繕費) | ||
車検代行手数料 | 支払手数料 |
車検費用を処理する際の注意点
点検・整備費用の勘定科目
点検・整備費用に係る勘定科目は、「車両費」でも「修繕費」でも構いません。車両に関する支出が多い業種や車両関連の経費をしっかり管理したい場合は「車両費」を使うのが望ましいですが、さほど重要性がない場合や部品交換費用が多い場合は「修繕費」でも問題ありません。
また業者に車検代行を依頼する際に発生する「車検代行手数料」「車庫証明手続代行手数料」「ナンバープレート取得代行手数料」などについては、すべて「支払手数料」として処理します。車庫証明取得費用やナンバープレート取得費用自体は消費税の非課税とされていますが、手続きを業者に代行してもらった場合の代行手数料は消費税の課税取引となります。
税金や収入印紙の勘定科目
車検の際に発生する「自動車検査登録印紙」と「自動車検査証紙」については、「租税公課」という勘定科目を使います。消費税は「不課税」となります。
同じく「自動車重量税」についても、「租税公課」で処理し、消費税は「不課税」となります。
自賠責保険料の勘定科目
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、自動車を購入・運転する際に必ず加入しなければならない強制保険であり、車検時に法定費用の一部として徴収されるものです。自賠責保険は車検の都度更新することが多いため、保険期間は2年または3年のものがほとんどです。
このような長期に渡って効力を生じる支出については、支出した事業年度に全額を経費として処理するのではなく、今期に対応する部分を「保険料(非課税)」、翌期に対応する部分を「前払費用」、それ以降を「長期前払費用」として資産計上する必要がありますが、自賠責保険は任意で加入する損害保険契約とは異なり、強制加入を求められる法定費用の一部であることから、支出した事業年度に一括して費用(保険料)として処理することが認められています。
インボイスについて
令和5年10月1日以降、車検に係る支出について消費税の仕入税額控除をするためには、代行業者から発行される請求書が適格請求書(インボイス)の要件を満たしていなければなりません。車検費用明細の他に適格請求書を徴収するか、適格請求書の要件を満たした車検費用明細書があれば、問題なく仕入税額控除を行うことができます。