経理初心者を悩ませる「正しい勘定科目」とは?

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「勘定科目」とは?

事業を始めると、日々のお金の出入りなどをきちんと記録しなければなりません。開業届と一緒に青色申告の承認申請書も提出した場合は、記録の仕方も簿記のルールに従って行う必要があるので、お金の出入りについても、その内容ごとに簿記のルールに従った「見出し」を付けて取りまとめる必要があります。

この「見出し」のことを簿記会計の世界では「勘定科目」といいます。

わかりやすい例では、販売用の商品を購入した場合は「仕入高」という勘定科目を使い、その仕入れた商品をお客様に販売した場合は「売上高」という勘定科目を使うといった感じです。

事業に必要な経費を支出した場合も同様で、その支出内容や性格によって適切な勘定科目を選択し、帳簿に記載していきます。

勘定科目を間違えたら?

初めて経理をされる方は、「勘定科目を間違えたらどうしよう?」「税務署に怒られたりしないかな?」などと不安になることもあると思いますが、そのような心配は無用です。

上場企業で経理をするためには、株主や債権者などの利害関係者に対して、正しい財政状態や経営情報を明らかにする必要があるため、勘定科目についても、会計基準に則って正しく表示することが求められますが、中小企業や個人事業主の経理については、利害関係者はお金を借りている金融機関くらいしかありませんので、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。

税務署に対しても、税額の計算に影響を及ぼさなければ修正を求められることはありませんので、消耗品費や支払手数料が雑費として処理されていたとしても、特に指摘を受けることはないでしょう。

勘定科目に迷ったら?

ネットを検索すれば、勘定科目の一覧や、勘定科目の例示などを手に入れることができるので、それらを参考にするのが手っ取り早いですが、支出した内容から常識的に推測できる勘定科目を選択すれば、ほぼ間違うことはないでしょう。

例えば、電車賃は交通費だから「旅費交通費」、お客さんと食事をして接待しているから「接待交際費」、銀行振込の手数料は手数料とついているくらいだから「支払手数料」などといった感じです。

とはいえ、見方によっては色々イメージできる勘定科目も存在したりするので、何かとややこしいのですが。。

例として「ガソリン代」をイメージしてみましょう。

Aさん:電車やバスと同じ移動手段のためのものだから「旅費交通費」
Bさん:使えば無くなってしまうものだから「消耗品費」
Cさん:燃料なので「燃料費」
Dさん:車両に関する支出なので「車両費」
Eさん:経費全体から見るとほんの僅かな支出なので「雑費」

答えは・・・すべて正解です。

お仕事の実情に沿って、より適切と思えるものを選択すれば問題はありませんが、一度選択した勘定科目はその後も継続して使わなければならない点に注意してください。これは継続性の原則という会計のルールから来ているのですが、年度が変わるたびに異なる勘定科目を選択すると、過年度から現在までの増減を比較することができなくなり、経営判断に必要な情報が計算書類から得られなくなるだけでなく、勘定科目のばらつきや増減が顕著に現れると、税務署内のシステムに異常値ありと検出され、税務調査のきっかけとなる可能性もあります。

「こうしたほうがいいよ」という例

勘定科目はそれほど神経質にならなくても良いと言いましたが、消費税の課税事業者になった場合は少し様子が異なります。

例えば、得意先に不幸があったために香典として現金をお渡しした場合と、供花にしてお渡しした場合では、勘定科目は同じ「接待交際費」となりますが、消費税の取り扱いが、前者は「不課税」、後者は「課税(10%)」となります。さらに、取引先のお見舞いにフルーツの詰め合わせをお渡しした場合、これも勘定科目は「接待交際費」となりますが、消費税は「課税(軽減税率8%)」となります。

一方、役員報酬や給与のような人件費は、消費税の取り扱いが全て「不課税」になりますし、保険料や支払利息は全て「非課税」となるなど、勘定科目の属性が消費税の非課税や不課税となるものもあります。

会計ソフトを利用し、消費税を自動的に処理させる場合、消費税の属性が同じものはできるだけ同じ勘定科目で処理させたほうが楽になるので、保険料を雑費で処理したり、法定福利費と福利厚生費を同じ勘定科目で処理するなどといったことは、消費税の処理を煩雑にし、またミスを誘発しやすくなるため、避けたほうが良いでしょう。

また、法人の場合、接待交際費や売掛金など、確定申告書や勘定科目内訳書を作成する過程で、計算や内訳の抽出を要するものについても、他の勘定科目と混ざらないように処理するほうが効率的です。

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