国税庁:令和4事業年度における消費税調査等の状況について

目次

消費税の調査状況

国税庁から定期的に公開される税務調査の事績ですが、最新のものが昨年末に公開されましたので、ざっくりとその内容を紹介します。

令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

この件は先週くらいにネット記事等でも紹介されましたが、やはり目を引くのが消費税の無申告者の増加についてです。

消費税に関する税務調査は、特別調査・一般調査・着眼調査のほか、簡易な接触による調査(電話やはがきなど)を含めると、9万4千件行われたようですが、これらのうち6万1千件もの申告漏れ等の指摘があったようです。つまり調査を受けると約65%は何らかの指摘を受けたということですね。

税務調査において指摘を受け追徴となった税額は、実地調査で336億円、1件当たり132万円、また実地調査に至らなくても簡易な接触によって追徴された税額は60億円となっており、調査全体での追徴税額は396億円と過去最高になっています。

消費税の無申告者に対する調査状況

消費税の申告漏れについては前述のとおりですが、そもそも消費税の申告義務があるのに申告を行わなかったいわゆる「無申告者」に対する税務調査の状況をみてみましょう。

令和4事務年度における消費税無申告者に対する実地調査件数は7,615件、1件当たりの追徴税額は260万円と過去最高だった前年をさらに上回ったようです。

これに関する読売新聞の記事では、福岡県内のブリーダーの例が取り上げられていますが、実は「ブリーダー」という業種は、近年の税務調査において重点的にチェックされている業種であり、実際に脱税が多い業種です。

この事案では、ブリーダーが「納税義務があることを知っていた。売上金額を意図的に少なく申告した」と認めたことから、重加算税を含む約5,300万円を追徴課税されました。

消費税の還付申告者への調査状況

消費税の還付申告は通常の確定申告と異なり、申告書に還付に至った状況や添付書類などを厳格に審査されます。申告内容に疑義がある場合には、還付を保留し、実地調査等を行うなどして還付原因等の解明・確認を実施しています。従って、消費税の還付がある場合はほぼ間違いなく税務署から確認の電話などがあると思ってください。

またこの過程で、消費税の申告内容そのものが見直されることで、申告漏れなどの非違が発覚することがあります。還付申告に係る調査件数は1,122件ですが、このうち申告漏れ等が発覚した件数は750件、追徴税額の総額は14億円となっています。

インボイス制度導入に伴い、無申告者数に対する調査を強化

読売新聞の記事では、「領収書や請求書などの書類を捨てて、確定申告を行わなければ、税務署にばれないと思った」と、ある無申告者が語ったとのことですが、実際に、資料がなければ調査なんかできないだろうと思っている無申告者はいると思います。しかしインボイス制度導入により、国税当局は制度の早期定着を図るため、以前よりも納税者との接触機会を増やしていますし、調査体制も強化してきています。インボイス番号を取得することで、無申告の状況がより発覚しやすくなっているので、「これまでは大丈夫だったから・・・」等と決して思わないようにしてください。

目次