インボイス制度:国税庁の取組方針を確認しておこう!

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制度開始前に国税庁の周知広報を読んでおく

インボイス制度開始まで1週間を切りました。個人的にはインボイス制度導入には反対するスタンスですが、現実問題として制度開始が明らかな以上、税理士とはいえ私自身も一事業者ですから、粛々と準備を進めていくしかありません。

ところでつい最近、レイヤーXという会社が、自社の提供するインボイス制度下での事務負担を体験できるシミュレーション研修を行い、インボイス制度開始後の事務負担がどれくらい増加するか試算した結果が報道され、話題になっています。

このサマリーのヘッドラインには以下のような記述があります。

経理1人あたり約1〜2営業日分/月、日本全体で約1.4億時間/月の業務負担が新たに発生〜人件費に換算すると、日本全国で毎月約3,413億円分の“インボイス対応コスト”が発生する可能性〜

毎月ということですから、年換算すると約4兆円。政府はインボイス制度導入により年間約2,500億円の税収増を見込んでいるので、1ヶ月で事務コストが想定年間税収を上回るという試算になるのですが。。

流石に4兆円はないと思います。

上記資料には請求書の確認や支払作業に1件あたり15分、経費精算は1件あたり5分の追加処理時間がかかる前提で試算されていますが、経理事務を全て手作業で処理し、かつこれらすべてを正確にこなそうとすればこれだけの時間がかかる可能性は確かにあります。しかし、クラウド会計などを導入している場合、初期設定などの導入部分をうまく設計してやれば、その後の処理時間のかなりの部分を削減することは可能です。

ただし、その初期設定などの導入部分には、制度の理解から取引先のインボイス番号等の確認、契約書の巻き直しや事務フローの見直しなども含まれますので、最初の数カ月間は残業時間や事務コストがかなり増加ことが予想されます。また、事務作業全体に渡って工数が増えることも確かなので、事務コスト自体は当然増加すると思います。

ちなみに私達税理士業界では、インボイス制度導入後はお客様の経理処理のチェックや修正、ご指導などの作業工数が爆発的に増加するのは確実なので、残業時間や事務コストの増加は今後ずっと続くことになりそうです。

このように、様々な情報が目に入ってきてパニックになってしまったときこそ、原点に立ち返って国が提供している資料をしっかり確認するという作業が大切になってきます。

国税庁のスタンスを理解する

国税庁は、令和5年8月25日付で「インボイス制度の周知広報の取組方針等について」という資料を内閣官房ホームページで公表しました。

65ページにも渡る資料ですが、是非ダウンロードしてご一読ください。

基本的なスタンスは「インボイス制度の定着を第一とし、対応は柔軟に行う」であり、国税庁としても細かい点を指摘して納税者を困らせるようなことは基本的に行わないとしています。

記載されている内容のうち、重要だと思われる点をいくつか解説します。

免税事業者への登録要否相談会の実施

全国の税務署において、これまでの説明会の開催に加え、登録要否の検討を行う免税事業者に対し、個々の事業者の実態を踏まえた個別相談を実施しています。さらに、こうした個別相談を積極的に活用してもらう趣旨で、登録要否相談会を各税務署で開催しています。

京都府で行われる登録要否相談会の開催日程表を掲載しておきますので、必要な方はダウンロードして活用してください。

インボイス番号の確認頻度

取引先のインボイス番号を取引の都度確認する必要はありません。事業者において確認する頻度を判断しても良いことになっていますので、継続して取引を行っている先であれば、最初に1回確認すれば十分です。

インボイス制度後の税務調査方針

これまでも保存書類の軽微な記載不備を目的とした調査は実施していない」とし、仮に調査等の過程でインボイスの記載事項の不足等の軽微なミスを把握しても他の書類や修正インボイスを交付して事業者間でその不足等を改めるなどといった対応を行うとしています。

このような記述から推測するに、国税庁側としては制度の定着が最重要事であって、細かい経費伝票や少額な請求書について、1件1件細かく内容の真偽まで確認することを(現実的に)求めていないということでしょう。

困ったときは・・・

インボイス制度は納税者にとって初めての経験となりますが、税理士はもちろん、国税庁にとっても初めての取り組みとなります。困ったときは投げ出して放置したり、怪しげなコンサルタントなどを頼るのではなく、税務署や税理士に必ず相談するようにしてください。正直、税務署の職員の方もなんでこんなややこしい制度を強制するのだろうとうんざりされていると思います。100%納税者に文句言われるのがわかっているわけですからね。なので困ったときはすぐに税務署に出向き、正直に「困った」と訴えてください。必ず前向きな対応をしていただけると思います。

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