交際費等の損金不算入
会計上は経費に計上できても、法人税を計算する際には申告書上で経費から除外することを「損金不算入」といいますが、交際費については、原則その全額が損金不算入とされています。
ただし、円滑な取引関係を築くための飲食接待を通じて消費行動を拡大することで、経済を活性化させたいという趣旨から、交際費等のうち飲食に限定して、支出額の50%を損金算入することができる措置が設けられています(資本金100億円超の法人は除かれます)。
なお、資本金1億円以下の法人については、年800万円までの交際費等について損金算入が認められていますが、上記の飲食接待費の50%損金算入と比較して、有利な方法を任意で選択することができます。
また、一定の要件を満たせば、1人あたり5千円以下の飲食接待費(社内飲食費を除く)は交際費等の損金不算入の計算から除かれ、全額経費として認められます。
インボイス制度導入後の「交際費」の計算方法
税抜経理を採用している法人が、交際費等の損金不算入の計算や飲食接待費の判定をする場合、原則として消費税額を除いた交際費等の金額で計算・判定することになります。
インボイス制度導入後は、免税事業者などインボイスの発行ができない事業者に支払った交際費については、消費税部分を認識しないため、支払った金額の全額が交際費となります。
ただし、インボイス制度導入に当たり経過措置期間が設けられているため、免税事業者等に支払った交際費等に係る消費税につき、仕入税額控除できない(消費税部分として認められない)部分については、税抜本体価格に含めて計算することになります。
経過措置期間 | 仕入税額控除額 | 交際費・飲食交際費の金額 |
---|---|---|
令和5年10月1日から 令和8年9月30日まで | 消費税額 ✕ 80% | 本来の税抜金額 + 消費税額 ✕ 20% |
令和8年10月1日から 令和11年9月30日まで | 消費税額 ✕ 50% | 本来の税抜金額 + 消費税額 ✕ 50% |
令和11年10月1日以降 | なし | 本来の税抜金額 + 消費税額 ✕ 100% |
計算事例
税抜経理を採用する法人が、レストラン(免税事業者)で1人あたり5,390円(10%税込み)を支出して接待を行った場合
令和5年9月30日以前
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
接待交際費 | 4,900円 | 現金預金 | 5,390円 |
仮払消費税 | 490円 |
したがって、飲食接待費の判定は4,900円≦5,000円となり、交際費等の損金不算入の対象となる交際費等から除外されます。
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
接待交際費 | 4,900円 | 現金預金 | 5,390円 |
仮払消費税 | 490円 |
経過措置により仕入税額控除できない部分(490円 ✕ 20%=98円)を本体価格に戻します。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
接待交際費 | 98円 | 仮払消費税 | 98円 |
したがって、飲食接待費の判定は4,998円≦5,000円となり、交際費等の損金不算入の対象となる交際費等から除外されます。
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
接待交際費 | 4,900円 | 現金預金 | 5,390円 |
仮払消費税 | 490円 |
経過措置により仕入税額控除できない部分(490円 ✕ 50%=245円)を本体価格に戻します。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
---|---|---|---|
接待交際費 | 245円 | 仮払消費税 | 245円 |
したがって、飲食接待費の判定は5,145円>5,000円となり、交際費等の損金不算入の対象となる交際費等から除外することはできません(一般の交際費と同様に計算します)。
令和11年10月1日以降(経過措置なし)
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
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接待交際費 | 5,390円 | 現金預金 | 5,390円 |
仮払消費税 | 0円 |
経過措置が終了したことにより仕入税額控除ができないため、仮払消費税は認識しません。したがって、飲食接待費の判定は5,390円>5,000円となり、交際費等の損金不算入の対象となる交際費等から除外することはできません(一般の交際費と同様に計算します)。
最後に
インボイス制度の係る経過措置については、仕入税額控除に注意が向けられがちですが、仕入税額控除できなかった部分を本体価格に含めることにより、交際費だけでなく、少額減価償却資産の30万円未満の判定など取得価額を元に適用の有無を判定する規定に影響が及ぶため、今後の経理処理については細心の注意を払う必要があります。