源泉徴収の対象となる「報酬」とは?
個人に対して支払う以下の報酬や料金については、支払の際に所得税を源泉徴収する必要があります。
- 原稿料や講演料など(1号報酬)
- 弁護士や税理士などに支払う報酬(2号報酬)
- 社会保険診療報酬(3号報酬)
- プロスポーツ選手や外交員に支払う報酬(4号報酬)
- 芸能関係の出演料など(5号報酬)
- ホステス報酬等(6号報酬)
- プロスポーツ選手の契約金など(7号報酬)
- 広告宣伝のための賞金など(8号報酬)
上記の報酬を支払う際、源泉徴収すべき所得税額を計算する際の基礎となる報酬金額の考え方ですが、原則は消費税額を含めた「税込報酬額」を計算の基礎とすることとされています。
ただし、報酬を請求する者が発行する請求書に、「報酬額」とそれに係る「消費税額」が明確に区分して記載されている場合は、区分された「報酬額」のみを源泉徴収の対象とすることが認められています。
この取り扱いはインボイス制度開始後も変更されることはありません。また、源泉徴収を行う際に、報酬の請求者が発行する請求書はインボイスである必要はないので、発行者が免税事業者であったとしても、報酬額と消費税額が明確に区分されている請求書であれば、報酬額のみを源泉徴収の対象としても問題はありません。
参照:インボイス制度開始後の報酬・料金等に対する源泉徴収(国税庁)
インボイス制度における経過措置との関係
インボイス制度開始後は、請求者が免税事業者である場合、報酬を支払う側は消費税の仕入税額控除について一定の制限(最初の3年間は80%、その後の3年間は50%)を受けるため、税抜経理を行っている場合には、仕入税額控除の対象とならなかった部分を報酬の本体価格に含める処理をしなければなりません。
ただし、この処理は法人税や所得税の計算を行う際に、経費として計上すべき報酬金額を算出するためのものであり、源泉徴収の対象となる報酬金額に影響を与えるものではありません。
具体的な計算例
当社(税抜経理)は免税事業者であるA氏から、10月30日に講演料として11万円を請求されたため、11月20日に源泉所得税を差し引いて普通預金から支払った。
10月30日の仕訳
インボイスを発行できない免税事業者からの請求であるため、経過措置により、消費税額10,000円のうち2,000円を報酬金額に加算します。
支払報酬等 | 102,000 | 未払金 | 110,000 |
仮払消費税等 | 8,000 |
11月20日の仕訳
【パターン1】
免税事業者が報酬金額と消費税額を明確に区分せずに「税込金額」として請求書を発行した場合
未払金 | 110,000 | 普通預金 | 98,769 |
預り金源泉所得税 | 11,231 |
原則通り、税込報酬金額が源泉徴収の対象となるため、源泉所得税の金額は110,000円 ✕ 10.21% = 11,231円となります。
【パターン2】
免税事業者が報酬金額(100,000円)と消費税額(10,000円)を明確に区分した請求書を発行した場合
未払金 | 110,000 | 普通預金 | 99,790 |
預り金源泉所得税 | 10,210 |
源泉徴収の対象となるのは、インボイス制度の経過措置とは関係なく、請求書に区分記載されている報酬金額であるため、源泉所得税の金額は100,000円 ✕ 10.21% = 10,210円となります。
なお、この場合は原則通り税込報酬額を元に源泉所得税額を計算してももちろん問題ありません。