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日本農業新聞の記事より
2023年10月18日付けの日本農業新聞に以下のような記事が掲載されました。
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記事の内容を要約すると、福島県でリンゴ農園を経営する農家の男性が、スーパーの青果バイヤーから「会計処理の負担が増えるからインボイスを発行できない農家とは取引を継続できない」と一方的に通知をされたとのこと。
本件について公正取引委員会に問い合わせたところ、「独占禁止法や下請法に違反しているとは言えない」との見解を示した。
なぜ独占禁止法に違反しないのか?
まず確認しておかなければならないのは、インボイスを理由に値下げを強要するような行為は独占禁止法に抵触する恐れがあることです。
インボイス制度:経過措置を考慮しない10%相当額の値下げ強要は独占禁止法違反となる可能性があります
インボイス登録を理由に、独占禁止法や下請法などに違反する恐れのある無理な値下げ交渉はやめましょう!
今回の事案について公正取引委員会は、価格交渉の手段として取引停止を迫れば独占禁止法に違反する可能性があるが、「事業者がどの事業者と取引するかは自由であり(契約自由の原則)」、「免税事業者であることを理由に取引を停止しても、法律上は問題ない」との見解を示しています。
これがまかり通ってしまえば、価格交渉で揉めそうな取引先については、条件協議を行わず、「別の理由をつけて」取引を停止すれば良い、とお墨付きを与えたことになります。
最後に
インボイス制度が酷評されている理由の一つに、「完璧に理解できている人がほとんどいないほど複雑な経理処理」が挙げられます。消費税の簡易課税制度や2割特例が使える方はこの地獄のようなインボイスの経理処理から逃れられますが、本件のような大手スーパーだと、納入業者も多く、事務処理の煩雑さは想像に難くないでしょう。なので、経理担当者からすれば、事務負担が増大するインボイス登録のない事業者を拒否したいという気持ちもわかります。納入業者、受入業者共に悪意がないのであれば、このような状況を招いてしまうインボイス制度は、悪法と言わざるを得ません。