【インボイス制度】法人成りした新設法人でも「2割特例」は使える?

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個人事業を発展させて法人を設立

法人を設立する方法として、全く新たに設立する方法と、個人事業を発展させて法人組織に移行する方法(以下「法人成り」といいます)があります。この他にも設立の方法はありますが、一般の方が法人を設立する場合はいずれかの方法を採ることがほとんどです。

現在個人事業を営んでいる方が法人成りの方法で法人を設立する場合、全く同じ人が同じ事業を行うことになったとしても、「個人」と「法人」は別の人格となるので、個人事業のときに享受していた特典(青色申告など)や申請事項(インボイスなど)等は自動的に引き継がれることはありません

従って、個人事業を営んでいたときに消費税の課税事業者で、かつインボイスの登録を行っていたとしても、新たに設立した法人においては、原則として消費税の「免税事業者」となるため、法人においてインボイスの登録を行わない限り、2年間は消費税を納める義務が免除されます

消費税を納める義務は、基準期間(個人事業主であれば2年前、法人であれば2期前の期間)の売上高(課税売上高)が1千万円を超えた場合に生じます。従って、新設法人の第1期および第2期は基準期間がないため、原則としてその期間は消費税の納税義務は生じません。

ただし、特定期間(個人事業者の場合は、その年の前年の1/1~6/30、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間)の課税売上高が1,000万円を超え、かつ同期間の給与支払総額が1,000万円を超える場合は、その課税期間について納税義務は免除されず課税事業者となります。

また、資本金または出資の金額が1,000万円以上の法人は、そもそも免税制度の適用がないため、必ず課税事業者となります。

法人成りと同時にインボイス登録を行う場合

法人成りして会社を設立したとしても、個人事業のときの取引先や顧客が変わるわけでもないので、個人事業時代にインボイスを発行していたのであれば、法人化しても取引先や顧客からインボイスを求められることになります。

インボイスの登録手続きについては、個人事業主のときとチェック項目が多少変わるくらいで、特に難しいものではありませんが、登録完了まで多少日数がかかりますので、余裕を持って手続きをするよう心がけてください。なお、登録が完了するまでは、事前に取引先にインボイスの交付が遅れる旨を伝え、登録番号取得後に登録番号を記載した請求書等を再交付したり、通知を受けるまでは登録番号のない請求書等を交付し、通知後に登録番号を別途通知することで、取引の相手方において仕入税額控除を行うことができます。

インボイスの登録を行うと・・・

法人成りした新設法人は原則として2年間は消費税の納税義務が発生しませんが、設立と同時にインボイスの登録を行うことで、設立第1期から消費税の課税事業者となります。

この場合、新設法人が選択できる消費税の課税方法としては、「本則課税」と「簡易課税」の2つの方法があります。これらの詳細については過去の記事を参照してください。

なお、インボイス制度の導入に伴い、上記の課税方法に加え「2割特例」も選択することができるようになりました。

この2割特例という制度は、簡易課税の計算方法と似ており、本則課税に比べて経理が楽で、業種によっては本則課税や簡易課税よりも有利になるため、可能であれば、ぜひ選択したい計算方法です。

法人成りした新設法人に「2割特例」は使えるのか?

結論としては「使えます」。

2割特例は、個人事業主・法人を問わず、消費税の免税事業者の方がインボイス制度開始に伴って課税事業者となった場合、売上げに係る消費税の2割相当額を納付するというものですが、個人事業のときにたくさん利益を計上し、基準期間の課税利上高が簡易課税が使える売上高(5,000万円)を超えていたとしても、法人化した時点ではその法人は原則免税事業者であるため、「免税事業者なのにインボイスのせいでイヤイヤ課税事業者になった」法人ということで、「2割特例」の適用を受けることができます。

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