社員旅行は経費にできる?否認されない条件・社内規程など徹底解説

社員旅行を企画するとき、経営者や経理担当者がまず気にするのは「どこまで経費にできるのか」という点ではないでしょうか?

福利厚生を意図して処理したつもりでも、規程や証拠書類が不十分だと交際費や賞与と判断され、税務調査で否認されてしまう可能性があります。

本記事では、福利厚生費として認められるための条件、税務調査で否認されないための証拠づくり、社内規程の整備ポイントなどを順を追って整理します。

目次

社員旅行が経費になる条件とは?

税務上、社員旅行が福利厚生費として認められるには、「特定の人への利益供与」ではなく、全社員に公平な慰安の機会を提供していることを示す必要があります。その際、判断の基準となるのは以下の4点です。

全従業員を対象にしていること

正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトも対象に含めるのが基本です。案内メールの宛先・掲示物・勤怠システムの告知ログなど、全員へ周知した事実がわかる記録を残しておくと安心です。

  • :全従業員へ社内ポータルで一斉告知+メール通知、申込フォームのログ保存。
  • :管理職のみ・成績優秀者のみ・役員のみの「特別旅行」
      ⇒ 特定の社員への賞与や役員賞与に認定されやすくなります。

参加率がおおむね50%以上であること

形式的に全員案内しても、参加率が極端に低いと「全社行事」とは言いにくくなります。対象者数・参加者数・参加率の一覧を残し、不参加理由(業務都合・体調など)のメモも添えると、実質性の説明に役立ちます。

旅行期間が4泊5日以内であること

慰安行事の範囲を超えない期間設定が求められます。海外の場合も現地滞在4泊5日以内が目安です(機内泊は現地滞在に含めない取り扱いが一般的)。日帰りや1泊2日でも十分に効果があるため、過度な長期化は避けるのが無難です。

費用が社会通念上妥当であること

上限額が法律で決まっているわけではありませんが、1人あたり10万円程度が説明しやすい目安になります。会社規模・業種・地域相場を踏まえ、豪華すぎるホテルやビジネスクラスは避けるのが安全です。また細かいことですが、旅行会社に依頼した相見積りなどは、廃棄せず他の資料とともに保管しておくのが良いでしょう。

証拠資料を残すことが否認防止のカギ

「満たしているはず」という主張だけでは足りません。“誰に・どう案内し・どの内容で・いくらかかったか”を示す客観的資料が重要です。

必ず用意しておきたい資料と役割

  1. 企画書・稟議書:目的・予算・実施体制を明記。会社の正式決定であることを示せます。
  2. 全従業員への案内(メール・掲示):周知の客観証拠。スクリーンショットや送信ログも保存。
  3. 参加者名簿・不参加者リスト:対象人数と参加率を算定可能に。回答フォームのタイムスタンプも残すと効果的です。
  4. 行程表・見積書・請求書:日程と費用水準の妥当性を裏付けます。「旅のしおり」などもあえて作成しておきましょう。
  5. 領収書・振込明細:支出の事実を明確化。カード明細も合わせて保管。
  6. 写真:集合写真・行程に沿った活動写真で、全社的行事の実態を補強します。

社内規程を整備するメリット

福利厚生規程・旅費規程は、支出の公平性・透明性・継続性を示す土台です。調査官の評価も上がり、社内のトラブル予防にも直結します。

規程に盛り込むべき内容

  1. 目的
    • 例:「従業員の心身のリフレッシュおよびコミュニケーションの促進を目的とする。」
  2. 対象者
    • 例:「当社の全従業員(正社員、契約社員、パート・アルバイトを含む)を対象とする。」
  3. 会社負担の範囲
    • 例:「交通費、宿泊費、団体行動中の食事代を会社負担とし、自由時間の飲食・土産代・個人観光費は自己負担とする。」
  4. 家族同伴の扱い
    • 例:「家族同伴は可とするが、同伴者に係る費用は全額自己負担とする。」
  5. 不参加者の扱い
    • 例:「不参加者に金銭・金券等は支給しない。」(現金支給は厳禁
  6. 記録・保存
    • 例:「案内記録、参加状況、行程表、領収書、支払記録、写真等を総務が所管し、5年間保存する。」

否認されやすい典型的なケースと回避策

以下は税務調査で指摘されやすいポイントです。企画の段階で漏れのないようしっかりチェックしておきましょう。

一部の役員や社員のみの旅行

  • リスク:社内交際費や役員賞与と判断され、否認される可能性が非常に高い。
  • 回避策:社員旅行とは別枠の表彰制度として位置づけ、給与や福利厚生費として処理。

社会通念上高額すぎる旅行

  • リスク:福利厚生費の範囲外。
  • 回避策相見積り同業相場前年実績を添えて費用の合理性を示す。

家族分を会社が負担

  • リスク:従業員への現物給与役員賞与に該当。損金に算入されないだけでなく、源泉所得税の問題も発生。
  • 回避策家族分は全額自己負担を規程に明記し、請求段階で家族分を切り分けて徴収します。

不参加者への現金・金券配布

  • リスク:福利厚生の「機会提供」から逸脱し、給与認定の引き金になります。
  • 回避策:代替措置は設けず、次回以降の機会提供で公平性を担保。どうしても配慮が必要なら有休付与の柔軟運用など金銭以外の方法で対応します。
グレーゾーン例の取り扱い
  • 研修+旅行の混在:研修時間・内容・成果物を明確に分け、業務研修部分は旅費交通費、慰安部分は福利厚生費と区分。
  • オプショナルツアー:自由参加・自己負担を徹底し、会社負担範囲に含めないことが肝心です。

まとめ

社内旅行費を経費に計上するための要点を再確認しておきましょう。

  1. 全員対象・参加率50%以上・4泊5日以内・費用妥当の4条件を満たす。
  2. 企画〜精算の証拠(周知ログ、参加率、行程、見積・請求、領収書、振込明細、写真)を一式保存する。
  3. 福利厚生規程・旅費規程に、目的/対象/費用範囲/家族同伴/不参加者取扱い/保存期間を明記する。
  4. 不参加者への金銭支給と家族分の会社負担は避ける。やむを得ず立替えた場合は立替金で必ず回収。
  5. 仕訳は福利厚生費・交際費・給与(賞与)・役員賞与・立替金を性質で厳密に区分する。

適切な企画設計と記録の整備ができていれば、社員旅行は税務リスクを抑えつつ、組織の結束強化・活性化にも寄与します。次回の計画から、ここで挙げたチェックポイントをそのままテンプレート化し、社内運用に落とし込んでいきましょう。

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