無申告→期限後申告により発生した「国民健康保険料」は「社会保険料控除」の対象になる?

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無申告の方が期限後申告書を提出すると

弊所では無申告の方をサポートする仕事に力を入れていますが、その際、多くの方からいただくご質問の一つに「税金はいくらになりますか?」というものがあります。

ご質問された方の頭の中には「所得税」だけをイメージされていることが多いですが、個人の場合、所得税以外にも「住民税」がかかりますし、事業の規模によっては「消費税」や「事業税」がかかったり、備品などを購入している場合は「償却資産税」がかかる場合があります。

更に上記本税に対して、延滞税(延滞金)や無申告加算税(無申告加算金)などの罰金に相当する付帯税や加算税が課されますので、「税金はいくらになりますか?」と聞かれても「実際に計算してみないと・・・」といった曖昧な返事になってしまいます。

また課税される時期も税目によってまちまちなので、確実にお伝えできるのは、所得税の期限後申告書の提出と同時に納付する所得税の本税のみとなります。

税金以外に課される国民健康保険料に注意

過去数年分の期限後申告書を提出すると、その申告データは税務署を経由して各市区町村に伝えられます。これにより個人住民税や個人事業税の計算が行われるのですが、同時に社会保険関係の調整も行われることになります。

国民健康保険料は所得金額に応じて計算されるため、期限後申告書を提出したことにより、過去の所得金額が増加すると、連動して国民健康保険料も増加することになります。

また後期高齢者保険の被保険者の場合は、期限後申告をする事により保険料だけでなく「窓口負担割合」も変更される場合がありますので注意が必要です。

納付年度の確定申告に注意

期限後申告書を提出した事により、過去無申告だった年分の国民健康保険料の増額分を後日納付することになりますが、このまとめて納付した国民健康保険料は、納付した年分の確定申告において、全額が「社会保険料控除」の対象となります。

社会保険料控除は、「その年分」の国民健康保険料が控除の対象となるのではなく、「実際に支払った年分」の国民健康保険料が対象となります。

設例

令和6年10月に、無申告となっていた以下の年分の期限後申告を行いました。

  • 令和1年分(期限後申告により国民健康保険料が3千円増加)
  • 令和2年分(期限後申告により国民健康保険料が4千円増加)
  • 令和3年分(期限後申告により国民健康保険料が2千円増加)
  • 令和4年分(期限後申告により国民健康保険料が5千円増加)
  • 令和5年分(期限後申告により国民健康保険料が2千円増加)

令和6年の12月に過去5年分の国民健康保険料1万6千円を納付しました。また、令和6年分の国民健康保険料は10万円です。確定申告により適用を受けることができる社会保険料控除の金額はいくらになりますか?

上記の設例の場合、令和6年分の確定申告により適用を受けることができる社会保険料控除額は、令和6年分の10万円と、期限後申告書の提出により増加した過去5年分(1万6千円)を合計した11万6千円となります。

最後に

無申告となっていた方が期限後申告すると、後ろめたいのか、それとも遠慮しているのか、堂々と使える制度を適用されないといった事例をよく見かけます。

本件についても割とよくある事例ですので、適用のし忘れがないか今一度ご確認ください。

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