確定申告をしなくても良い給与所得者
サラリーマン・アルバイト・パート・嘱託社員・契約社員など雇用形態に違いがありますが、企業や事業者から給料を支給されている人は、すべて「給与所得者」となります。
この給与所得者のうち、事前に会社に対して「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している方は、源泉徴収表の「甲欄」が適用され、最終的に会社が年末調整することで、給与所得者本人は確定申告をすることなく、税務上の手続きが完結します。
この「年末調整だけで確定申告をする必要のない人」に該当するのは、以下の場合のみです。
- 給料の支給が1か所だけで、その会社で年末調整されていること。
中途入社の場合は、前職の源泉徴収票があり、現職の会社で合算して年末調整されていれば大丈夫です。 - 雑損控除・医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除(居住年)がないこと。
地震や台風などで被害を受けたり、医療費やふるさと納税の控除、住宅ローン控除の1回目の手続きが必要な方は年末調整で処理することができないため、確定申告が必要です。ただし、ふるさと納税については、ワンストップ特例の手続きをされると、年末調整で完結させることができます。
確定申告が必要な給与所得者
給与収入が2千万円を超える方
給与収入が2千万円を超えている方は年末調整ができませんので、確定申告をする必要があります。
「乙欄」「丙欄」で源泉徴収されている方
給料に係る源泉徴収は国税庁が定める「源泉徴収税額表」に基づいて行いますが、それぞれの従業員の事情によって3つに区分され、徴収される税額が異なります。「月給制」の方に適用される区分が「甲欄」「乙欄」で、「日給制」の方に適用される区分が「甲欄」「乙欄」「丙欄」ですが、基本的に「甲欄」以外で源泉所得税が計算されている方は会社側で年末調整ができませんので、ご自身での確定申告が必要となります。
2か所以上から給料の支給を受けている場合は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している会社が「甲欄」となり、提出していない会社が「乙欄」となります。給与所得者の扶養控除等申告書はメインの給与が支給される会社にのみ提出することができ、年末調整もその会社でしか行うことができませんので、メインではない複数の会社から給与の支給を受けている場合は、それらが自動的に「乙欄」となり、すべての給与を合算して確定申告をする必要があります。
年の途中で退職した方
年末調整はその年の12月31日時点で在職している社員に対して行われますので、年の途中で退職し、年末時点で再就職していない方は確定申告する必要があります。
なお、退職した年内に再就職された場合は、退職した会社から発行された源泉徴収票を再就職先に提出することで、年末調整を受けることができます。その場合は、確定申告は不要です。
副業や臨時収入がある方
最近は副業を認めている会社が増えてきましたので、給料の他に副業による収入を得ている方も多いと思います。ただし、「副業」と一言で括っていますが、所得税法上は「副業」の内容によって、以下のように所得の区分が異なっています。
- 事業所得
個人で仕事を請け負ったり、物販などを継続的に行っている場合の所得です。 - 不動産所得
マンションやアパートなどを賃貸することで得られる所得です。 - 譲渡所得・配当所得・雑所得
継続的に株式投資や暗号資産、NFTなどに投資している場合の所得です。 - 雑所得
原稿料やアフィリエイト収入などで、事業と言えないような規模で行っている場合の所得です。
また、以下のような臨時に収入が発生した場合、確定申告が必要になることがあります。
- 土地や建物を売却した場合(譲渡所得)
- 株式等の売買で譲渡損失が発生したり損益通算が必要な場合(譲渡所得)
- 生命保険金の解約や満期による収入があった場合(一時所得)
- 競馬などの公営競技による払戻金(一時所得)
- ふるさと納税の返戻金で一定の金額を超えるもの(一時所得)
年末調整により処理できない所得控除等がある場合
前述のとおり、雑損控除・医療費控除・寄附金控除といった所得控除を行いたい場合や、住宅ローンを組んでマイホームを購入した初年度の住宅ローン控除を受けようとする場合には、会社において年末調整により処理できないため、各自で確定申告を行う必要があります。
確定申告が不要となる場合
給与所得者でメインとなる給与所得以外の所得の合計額が、年間で20万円以下の場合は、確定申告しなくても良いとされています。
なお、この「年間の所得の合計が20万円」というのは、社会保険料控除や扶養控除といった所得控除をする前の金額になりますが、一時所得については少し特別で、一時所得に該当するものだけを一旦集計し、そこから特別控除額である50万円を控除、更にその控除後の金額を1/2にした金額が一時所得の金額となります。
また、株式等について「特定口座(源泉徴収あり)」で取引を行っている場合は、金額に関わらず原則として確定申告は不要なので、上記の20万円の計算に含める必要はありません。
最後に
昔の副業とは異なり、最近は暗号資産やNFT、海外取引など、高度な申告知識が必要な取引をサラリーマンでも手軽に行うことができるようになったため、無申告となってご相談をいただく事例が増えております。皆様も昨年1年間を振り返っていただいて、ビットコインなどをやり取りしていないか今一度ご確認くださいませ。