年末調整は義務?それとも任意?
会社や事業者から給与の支給を受ける人は、給与の金額にもよりますが、あらかじめ所得税を控除されて支給されると思います。このあらかじめ所得税が控除される仕組みを「源泉徴収」といい、給与の支払いをする会社や事業者は、給与の支払いの際に必ず源泉徴収をする義務があります。
給与等の支払をする者は、この法律により、その支払に係る金額につき源泉徴収をする義務がある。
なお、毎月源泉徴収される所得税は、従業員個々の事情を考慮せず概算で計算された金額なので、その年最後の給料を支払う際に、1年間源泉徴収された所得税額と実際の所得税額との差額を調整する必要があります。この作業を「年末調整」といいますが、この年末調整を行うのも会社や事業者の義務となっています。
給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、給与等の金額が2000万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合において、所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならない。
年末調整をするのは会社(法人)だけと勘違いされている個人事業主の方がおられますが、法人・個人事業主関係なく、給与の支払いをする者全員に課せられた義務なので注意しましょう。
ちなみに、源泉徴収事務そのものを行っていなかったり、源泉徴収した所得税を納付していなかった場合は、発覚した際に延滞税や不納付加算税が課されることになりますが、故意に隠蔽・仮装などをしていた場合は、更に重加算税が課されることになります。また、故意に年末調整を怠ると、「1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」、悪質な場合は「10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」といった重い罰則が課されるので注意しましょう。
もしも年末調整をしてもらえなかったら?
会社が年末調整を行うことで従業員の納めるべき所得税を精算することができるのですが、この年末調整が行われなかった場合、従業員にはどのような不利益が発生するのでしょうか?
雇用主がそもそも毎月の源泉徴収をしていない場合、従業員は給与に係る所得税を全く納めていないことになるため、自分で確定申告をしないといわゆる無申告状態になってしまいます。これは意外とよくあるパターンで、雇用者側は「源泉徴収や年末調整は任意でしょ」と勘違いし、従業員側は「会社勤めなんだから当然天引きされてるよね」と思い込んでいるときに起こったりします。
毎月の源泉徴収はされているが年末調整はされなかった場合、結果として従業員側で所得税を納めすぎとなる場合があります。先述の通り、毎月の源泉徴収税額はあくまで概算で大抵の場合多めに納めているため、年末調整の手続きを行わないと、納めすぎた税金の還付を受けられません。ただしこの場合は還付を受けるための確定申告をすることで納めすぎた税金を取り戻すことができます。
自身で還付申告をする場合は、確定申告書に「給与所得の源泉徴収票」を添付しなければなりませんが、年末調整がされていないので、雇用主から年末調整がされていない状態の源泉徴収票を発行して貰う必要があります。これは源泉徴収票の摘要欄に「年末調整未済」とか「年調未済」と記載された源泉徴収票のことで、大抵の場合は雇用主から発行してもらえるはずですが、この年末調整未済の源泉徴収票すら発行してもらえないようであれば、「源泉徴収票不交付の届出書」という書類を国税庁のホームページからダウンロードして、これに申告者本人が給与の収入金額や源泉徴収税額などを記載して確定申告書に添付することで、源泉徴収票に替えることができます。