要介護認定で障害者控除を受けるには?申請方法と注意点を3ステップで解説

ご家族が要介護認定を受けた場合、所得税や住民税の「障害者控除」を受けられる可能性があります。しかし、「要介護認定=即・控除対象」ではない点に注意しなくてはなりません。この記事では、制度の仕組みから、ご自身の家族が対象になるかを確認する3つのステップ、具体的な手続きまでを分かりやすく解説します。

目次

障害者控除を正しく知るための重要な2つのポイント

この章では、障害者控除の制度を正しく理解するための基本について解説します。

主なポイント
  • 「要介護認定」と「障害者控除」は別の制度
  • 控除の鍵は市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」

障害者控除と聞くと、身体障害者手帳が必要だと思われがちですが、実は要介護認定を受けている高齢者も対象になる場合がありますただし、「要介護認定を受けたから自動的に控除対象」というわけではないのが重要な点です。

ここでは、多くの方が誤解しやすい制度の仕組みを理解し、控除を受けるために必要なものを解説します。

「要介護認定」と「障害者控除」は別の制度

「要介護認定」を受けているからといって、自動的に「障害者控除」の対象になるわけではない点をまず抑えておきましょう。これらは根拠となる法律や目的が異なる、全く別の制度になります。

要介護認定は介護保険法に基づき「介護サービスの必要度」を判断するのに対し、障害者控除は所得税法に基づき「税負担の軽減」を目的としています。

例えば、要介護1の認定を受けていても、必ずしも税法上の障害者として認められるとは限りません(自治体ごとの基準によって判断が分かれることがあります) 控除の対象となるかは、あくまで市区町村が設ける基準によって個別に判断されます。

控除の鍵は市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」

では、どうすれば控除の対象となるのでしょうか。その鍵を握るのが、お住まいの市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」です

この認定書は、身体障害者手帳などを持っていなくても、税法上の「障害者」または「特別障害者」に相当することを証明する重要な書類となり、税務署や勤務先は、この認定書を基に控除の手続きを進めます。

したがって、確定申告ではこの認定書が必要となり、年末調整の場合は勤務先への提示を求められます。まずはこの「障害者控除対象者認定書」を入手することが、手続きの第一歩です。

控除対象となるか確認するための3つのステップ

この章では、ご家族が障害者控除の対象となるかを確認するための、具体的な手順を3つのステップで紹介します。

3つのステップ
  • ステップ1:対象者の基本条件(65歳以上など)をチェックする
  • ステップ2:お住まいの市区町村の認定基準を調べる
  • ステップ3:「障害者控除対象者認定書」の交付を申請する

制度の基本を理解したところで、次は実際にご家族が対象になるかを確認していきます。

手続きと聞くと難しく感じるかもしれませんが、やるべきことはシンプルです。以下の3つのステップに沿って一つずつ確認すれば、比較的スムーズに進められるでしょう。

まずはご家族が基本的な条件に当てはまるかを確認し、次にお住まいの自治体の基準を調べ、最後に申請するという流れになります。

ステップ1:対象者の基本条件(65歳以上など)をチェックする

まず、障害者控除対象者認定書の交付対象となる方の、基本的な条件を確認しましょう。

この制度は主に高齢者を対象としているため、年齢などの前提条件を満たしている必要があり、多くの自治体では、対象となるのは「65歳以上の方」で、「要介護認定を受けていること」が前提とされています

ただし、自治体によって対象年齢や細かい条件が異なる場合があるため、お住まいの役所での確認が不可欠です。自治体によっては、控除の対象となる年の12月31日時点で条件を満たしている必要があるなどと定めている場合があります。

また、身体障害者手帳などの交付を受けていないことも条件の一つです(手帳があればこの認定書は不要なため)。

まずは「65歳以上」で「要介護認定を受けている」という2つの基本条件に当てはまるかをご確認ください。

ステップ2:お住まいの市区町村の認定基準を調べる

次に、お住まいの市区町村が定めている具体的な「認定基準」を調べばしょう。

認定書が交付されるかどうかは、全国一律の基準ではなく、各市区町村の判断に委ねられているため、まずは「〇〇市 障害者控除対象者認定」といったキーワードで検索し、公式ホームページを必ず確認する必要があります。

多くの自治体では、要介護認定の情報を基に「寝たきり度」や「認知症の自立度」が基準を満たすかを判定します。例えば「寝たきり度がAランク以上」といった基準が設けられていることがあるので、ホームページを調べても分からなければ、介護保険担当課などに電話で問い合わせるのが確実です。

ステップ3:「障害者控除対象者認定書」の交付を申請する

認定基準を満たしている可能性が高いと判断できたら、「障害者控除対象者認定書」の交付を申請します。この認定書は自動的に送られてくるものではなく、ご家族や代理人からの申請に基づいて初めて発行される書類です。また、申請は市区町村の担当窓口(高齢福祉課など)に申請書を提出して行います。

申請書は役所の窓口か、自治体のホームページからダウンロードすることで取得できます。申請に手数料はかかりません。申請後、審査を経て認定されれば認定書が郵送で届くのが一般的な流れとなります。待つのではなく、自ら申請することが求められます。

【京都市の例】認定書の発行から確定申告までの4つの手順

この章では、具体的なイメージを持っていただくために、京都市を例として、認定書の申請から確定申告までの流れを4つの手順で解説します。

4つの手順
  • 手順①:申請に必要なものを準備する
  • 手順②:区役所・支所の担当窓口で申請書を提出する
  • 手順③:認定書を受け取る
  • 手順④:年末調整または確定申告で控除を申請する

この章ではより具体的に、京都市のケースを例にとって手続きの流れを見ていきます。

なお、手続きの詳細は自治体ごとに異なりますので、あくまで一つのモデルケースとして、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてください。

手順①:申請に必要なものを準備する

まずは、申請に必要なものを事前に準備しましょう。あらかじめ揃えておくことで、窓口での手続きがスムーズに進み、何度も足を運ぶ手間が省けます。京都市の場合、主に必要なものは以下の通りです。

  • 障害者控除対象者認定申請書: 区役所・支所の担当窓口や市のホームページで入手できます。
  • 申請者の本人確認書類: 運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証などを用意します。
  • 介護保険被保険者証: 控除の対象となるご家族(親など)のものが必要です。
  • 印鑑: 申請書に押印するために持参しましょう。

自治体によって必要なものは多少異なるため、事前に確認しておくと安心です。このように、申請書と本人確認書類などをあらかじめ用意することが、手続きを円滑に進めるポイントです。

参考

京都市の障害者控除対象者認定申請に印鑑が必要かどうかについて、京都市公式の案内では、申請書の記入・提出、介護保険被保険者証などの必要書類の記載、申請者に関する本人確認書類の提出が求められているものの、印鑑の押印については明記されていません。

他自治体の申請書様式例を確認した限りでは、申請書用紙に署名欄が設けられているものの、押印(印鑑)の欄は省略されている場合が多いです。近年の行政手続きの簡素化の流れから、障害者控除対象者認定申請に印鑑が不要なケースも多くなっています。

ただし、申請者が本人、親族、成年後見人以外の場合は委任状の提出が必要となりますので、委任状が必要な場合は念のため印鑑を用意した方が確実です。

手順②:区役所・支所の担当窓口で申請書を提出する

書類が準備できたら、お住まいの地域の担当窓口で申請書を提出します。申請は、介護保険や高齢者福祉を担当する部署で受け付けているのが一般的です。

京都市では、各区役所・支所にある「健康長寿推進課(介護保険担当)」が申請窓口です。窓口では、持参した申請書と必要書類を提出しましょう。もし申請書の書き方に不安な点があれば、その場で職員の方に質問できるので安心です。受付時間は平日の日中に限られていることが多いため、事前に開庁時間を確認してから訪問することをおすすめします。

手順③:認定書を受け取る

申請書を提出後、審査が行われ、認定されると「障害者控除対象者認定書」が交付されます。市区町村が、要介護認定のデータ(主治医意見書など)を基に、その方が障害者控除の基準に該当するかを審査するため、結果が出るまでには一定の時間を要します。

審査期間は自治体によって異なりますが、一般的には申請から数週間程度で、認定書が郵送で自宅に届きます。この認定書は税務手続きで必要になる重要な証明書ですから、大切に保管してください。もし非該当となった場合でも、その旨の通知が届くことがほとんどです。

手順④:年末調整または確定申告で控除を申請する

認定書を受け取ったら、最終的に年末調整または確定申告で税金の控除手続きを行います。

自営業の方は税務署に確定申告を提出し、会社員の方は年末調整の際に勤務先に認定書を提示することで障害者控除が適用され、税金の還付などが行われます。

過去5年分までさかのぼって還付申請できます

所得税法上、還付を受けるための申告(更正の請求)は、過去5年分までさかのぼって行うことが認められているため、それぞれの年について認定基準を満たしていたと証明できれば、所得税の還付を受けることができます。

この更正の請求の手続きを行う場合には、市区町村から各年分の認定書を発行してもらう必要がありますが、手続自体はさほど難しいものではないので、諦めずに過去5年分を確認してみる価値はあると思います。

まとめ

ご家族が要介護認定を受けた場合の、障害者控除について解説しました。最後に、この記事の重要なポイントを5つにまとめます。

まとめ
  • 要介護認定を受けても、自動で障害者控除の対象にはなりません。
  • 控除の鍵は、市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」です。
  • 認定基準は自治体ごとに異なるため、必ずお住まいの役所で確認しましょう。
  • 認定書は申請しないと発行されないため、自ら行動することが大切です。
  • 対象であれば、過去5年分までさかのぼって税金の還付を請求できます。

手続きはちょっとややこしく感じるかもしれませんが、この記事のステップに沿えば心配いりません。対象になるか不安な方も、まずは市区町村の窓口に気軽に電話してみてください。その一歩が、ご家族の負担をぐっと軽くするはずです。

この記事を書いた人

京都市北区で「世良税理士事務所」を運営しています。
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