税務調査で大型家電が否認されるのは?

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エアコンが壊れて…

最近我が家のエアコンが壊れてしまい、延長保証の有無を調べるために購入時の書類を調べていたところ、数年前の税務調査での出来事を思い出しましたので、その時の事を共有したいと思います。

もしも皆様の会社や事務所で、事業用のエアコンや複合機、大型テレビや冷蔵庫といった大型家電を購入した場合、資産に計上して減価償却費として、または少額減価償却資産として事業上の経費に計上されると思います。

大型テレビは病院や銀行などのお客様の待ち合わせ室に設置してニュースを流したり、多人数でのZoomミーティングを投影するのに利用できますし、冷蔵庫は従業員食堂に設置して福利厚生目的に利用することができますが、たまに自宅に設置する目的で購入したこれらの家電製品を、事業用資産や経費に偽って計上される方が居られます。

本人は税務調査の間だけ会社や事務室に移動しておけばバレないだろうと思っているかもしれませんが、実は些細なことから税務調査官にあっさりと見抜かれてしまうことをご存知でしょうか?

「搬入明細書」「修理明細書」

大型家電を購入した場合、買い物かごに入れて持って帰ることはできませんので、販売店の担当者に搬入してもらうことになりますが、その際、搬入に必要な条件などを記載した明細書が交付されます。

搬入明細書には購入した商品をどこに運ぶのか、戸建てかマンションか、何階に設置するのか、階段はあるのかなどが記載されますが、領収書や請求書とともにこのような書類を保管していた場合、会社の所在地や立地と異なる記載がされていれば、税務調査官は当然搬入された住所等を調べ、本当にその商品が会社に設置されているのか疑うことになるでしょう。

実際にあった事例では、大型テレビの搬入場所が社長の親族の住所となっており、これを指摘された社長は、親族の住所が購入した量販店の所在地に近かったため、一旦親族の自宅に搬入してもらい、そこから会社の車で運んできたと説明しましたが、それらの書類の中に光回線やWiFiの設置に関しての図面まで残っていたため、問答無用で否認されました。

この事例では、領収書だけが経理に保管されていたため、何もなければスルーされていたと思われますが、税務調査官がそのテレビの利用方法を訪ねた際に、従業員が提示した取扱説明書の中にこの搬入明細書が保管されていたことで発覚に至りました。

次の事例はエアコンです。数年前に購入し、器具備品として処理していましたが、当期にエアコン室外機の修理費として計上されていたことについて税務調査官に説明を求められた際、領収書に記載された修理サポートセンターの所在地が会社の所在地と大きく異なっていたため、修理の明細を調べたところ、社長の息子さんのマンションだったことが判明しました。修理したエアコンの機種名が当時の領収書に記載されていたものと一致したため、エアコンの購入代は役員賞与となるところを、交渉の末なんとか役員貸付金として認めてもらい、数年分のエアコンの減価償却費は否認、役員貸付金に対する認定利息を計上、エアコン購入代金に係る消費税の仕入税額控除の否認という散々な結果となりました。

何気ない会話が重要です

前述の事例はいずれも税務調査官と社長との間で交わされた何気ない「雑談」から発覚しました。税務調査の現場では、税務調査官が臨場してすぐに帳簿などを調べ始めることはありません。まずは会社の業況や社長のプライベートなどを「雑談」の体でヒアリングします。その過程で調査の方向性を微調整し、ヒントを得て、膨大な資料の中からピンポイントで論点を絞り込みます。

事実を隠蔽するために嘘をつくことは論外ですが、調査の現場では聞かれたことに答えるに留め、無駄に話を広げてみたり、 話す必要のないことまで話題にしないよう注意して下さいね。

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