贈与が成立するには?
贈与する側が一方的に「あげますよ」と意思表示するだけでは贈与は成立しません。贈与される側が「もらいますよ」と双方が意思表示することで、初めて贈与が成立します。
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
ということは、産まれたばかりの幼児は泣くことくらいしか意思表示できませんから、贈与は成立しないということになるのでしょうか?
これについて、民法では、その子の親権者(父母)がその贈与に同意し、その財産を管理することで贈与が成立するとされています。
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為についてはこの限りでない。
- 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
- 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
- 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
上記のことから、祖父母から産まれたばかりのお孫さんに贈与しても大丈夫、ということになります。
税務署に指摘されるパターン
よくあるケースとしては、贈与をする側(親や祖父母など)が勝手に幼児名義の預金口座を開設し、そこに定期的に振り込むことで贈与をしたと思いこんでいるパターンです。このような場合、意思確認をした証拠(贈与契約書など)がなく、幼児名義の預金通帳や印鑑などを贈与者が管理しており、当然幼児もその預金口座の存在を認識していなければ、贈与は成立せず、幼児名義の口座は贈与者のものと判定されることになります。
これを「名義預金」と言いますが、贈与した本人と同じ預金印で通帳が作成されていたり、贈与を受けたお孫さんが北海道に住んでいるのに、贈与をしたおじいちゃんの住所地の京都銀行で口座が作られているなど、明らかに贈与の意思表示や財産の管理がなされていないと判定された場合、相続税の税務調査などで必ず指摘を受けることになります。
「贈与契約書」は必要?
当事者双方において贈与の意思確認ができれば、贈与契約書を作成しなくても、口頭で贈与は成立します。ただし、書面によらない贈与は、贈与の履行前であればいつでも撤回が可能です。
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
このように、口頭による贈与については解除可能なこと、双方が存命でないと承諾したという意思を確認することができないことなど、やはり確たる証拠を残しておかないと、贈与契約の成立を証明するのは難しいと思われます。もちろん書面であっても幼児は意思表示をすることができないため、贈与契約書には受贈者とともに法定代理人である親権者の署名が必要です。更に公証人役場で確定日付を取得しておけば、バックデートして作成したものではないという証明になりますので、必要に応じて活用すると良いと思います。
贈与契約書と聞くと何やら厳しいですが、特に決まった形式はないので、インターネット上にある雛形を利用して作成すれば問題ありません。また贈与契約書は贈与する度に必要なので注意してください。
贈与税の確定申告は必要?
年間110万円以下であれば贈与税は課税されませんので、贈与税の申告書を提出する必要はありません。
よく基礎控除額以下の贈与でも贈与税の申告書を提出しておけば、贈与をした証明になるとお考えの方がいらっしゃいますが、国税不服審判所の採決でも、「贈与税の申告および納税の事実は贈与事実を認定するうえでの一つの証拠としては認められるものの、贈与事実の存否は飽くまでも具体的な事実関係を総合勘案して判断すべきと解するのが相当である」となっており、贈与が有効かどうかは、あくまでも民法上の贈与契約が成立しているかどうか、その後の財産の管理保全がされているかどうかで判断されるという点に注意してください。