経理処理に困ってしまう微妙な会費
町内会費や商店会費、商工会議所や青色申告会の会費、法人クレジットカードの年会費、ロータリークラブの通常会費、町民運動会の協賛会費など、支出する理由はあるけど、経費として処理していいのか微妙なものってありますよね?
これらの支出については、法人税や所得税の計算上経費にすることができるかどうか、加えて経費にした場合、消費税の課税対象になるのかどうかといった2つの問題があります。
「諸会費」に係る原則的な取り扱い
「諸会費」とは、上記の様ないわゆる会費を支払ったときに使う勘定科目ですが、大前提として、これらの会費は「事業の遂行上必要なもの」でなければなりません。また、「会費」という名目で徴収されるものであっても、その目的が会食であったり、玉串料のような宗教的な性格のもの、広告掲載が目的のものであれば、それぞれ「接待交際費」「寄付金」「広告宣伝費」といったより適切な勘定科目で処理することになります。
「諸会費」に係る消費税の取り扱い
まずは消費税の課税対象となる取引とは何かについて見てみましょう。消費税の取引対象となるためには、次の4つの要件を満たす必要があります。
- 日本国内での取引であること
- 事業者が事業として行うものであること
- 対価を得て行うものであること
- 資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること
「諸会費」については、上記1,2,4の要件は満たしていますが、3の「対価性の有無」が一番の問題になります。「対価性」というと何やら難しく聞こえますが、要は支払った会費に対して何らかの「見返り」があるのか?ということです。
例えば「町内会費」は、その町内で事業を行うために必要な支出ではありますが、一般的に町内会費は払いっぱなしで、対価となる商品やサービスの提供を受けるわけではありません。したがって町内会費は「対価性なし」と判断されるため、消費税は「不課税(課税対象外)」となります。
一方法人クレジットカードの年会費は、クレジットカード決済というサービスを提供してもらうためのものであり、これが「対価」と考えられるため、消費税は「課税仕入」となります。
対価性があるか判断が困難なもの
対価性についてすぐに判断できればよいのですが、実際の現場では対価性の有無が容易に判断できないことがよくあります。例えば同業者団体の会費など、その業界で商売するには必要不可欠な支出だが年に1回会報誌らしきものが届くのみ、といった場合、この会報誌が対価なのかどうか判断に迷ってしまうと思います。
この問題については、消費税法基本通達において、次のように規定されています。
同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等については、当該同業者団体、組合等がその構成員に対して行う役務の提供等との間に明白な対価関係があるかどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定するのであるが、その判定が困難なものについて、継続して、同業者団体、組合等が資産の譲渡等の対価に該当しないものとし、かつ、その会費等を支払う事業者側がその支払を課税仕入れに該当しないこととしている場合には、これを認める。
〜中略〜
3 資産の譲渡等の対価に該当するかどうかの判定が困難な会費、組合費等について、この通達を適用して資産の譲渡等の対価に該当しないものとする場合には、同業者団体、組合等は、その旨をその構成員に通知するものとする。
消費税の処理について判断を迷うような会費であれば、本来は同業者団体側から経理処理方法について通知するのが原則ですが、そのような通知がない場合は、同業者団体が発行する請求書や領収書の記載事項を確認し、消費税額が記載されていれば課税対象と判断しても問題ないと思います。それでも判断できない場合は、支払先である同業者団体などに問い合わせ、同業者団体側で消費税の処理を「課税対象」としているのか、「課税対象外」としているのかを確認し、それに合わせて会計処理を行うようにしてください。