役員の再任(重任)とは?
法人の役員をされている方は、ご自身の役員としての任期が何年なのかきちんと把握されているでしょうか?
取締役および監査役の任期は、通常取締役で2年、監査役で4年ですが、株式を公開していない一般的な株式会社であれば、最長で10年までとすることができます。
任期が満了すると、原則として取締役等を退任することになりますが、満了後も継続して取締役等を務める場合は、一度退任した上で重任(再任)の手続き(役員変更登記)をしないと継続できません。役員に変更がないからといって自動継続とはならないので注意しましょう。
役員重任の登記を忘れてしまったら?
登記関係の手続きは司法書士さんにお願いすることが多いと思いますが、手続きが必要なときだけお願いし、顧問として継続して関与することはあまりないと思います。そうすると任期の管理を自身で行う必要がありますが、10年に1回の手続きとなると、大抵の人は忘れてしまいます。
顧問税理士がついていれば、決算等のタイミングで気がつくこともありますが、これも確実とは言えません。余談ですが、任期を4年または8年にして、オリンピックやサッカーワールドカップに合わせて任期満了が来るように設定し、「オリンピックが始まったら任期のこと思い出して」と社長にお願いしたことがあります。これは思った以上に効果があったので、参考までに。
株式会社や合同会社といった法人は、登記事項に変更が生じた場合には、その事由が生じた日から2週間以内に変更の登記を行う義務があります(会社法第915条第1項、第930条第3項等)。
なお、登記事項に変更が生じる主な事由として、会社の本店移転や事業目的の変更、社名変更、取締役の退任、取締役の変更などがありますが、取締役の重任もこの事由に含まれます。
もしもこの期間を過ぎて登記申請を行った場合、過料が課される可能性があります。過料とは、行政法規上の義務違反を犯した場合に金銭を課される罰則ですが、刑事事件に係る罰金や科料とは異なり、前科がつくことはありません。
また過料の額については、法律の条文上は「100万円以下の過料に処する」と記されていますが、役員重任登記の懈怠については、概ね2~3万円前後であることが多いようです。ただし相当年数放置していたようなケースで10万円の過料が課された例もありますので、決してなんとかなると思わないほうが良いでしょう。
余談ですが、役員の任期満了が近づいてきたからといって、法務局から「任期満了のお知らせ」などといった通知が来るわけではありません。役員任期の管理はあくまでも自己責任なので念のため。
過料の経理上の処理は?
過去に取締役重任の登記申請を失念したことがある方はご存知かもしれませんが、過料に処されるのは法人ではなく、代表取締役個人となります。したがって、過料は代表者個人が負担すべきものとも考えられますが、法人がその過料を負担したうえで租税公課として処理し、申告時に損金不算入とする方法が一般的です。
法人がその役員又は使用人に対して課された罰金若しくは科料、過料又は交通反則金を負担した場合において、その罰金等が法人の業務の遂行に関連してされた行為等に対して課されたものであるときは法人の損金の額に算入しないものとし、その他のものであるときはその役員又は使用人に対する給与とする。
役員の登記は当然法人の業務遂行に関連したものなので、役員個人宛の過料を法人で支払ったからといって、役員賞与などに認定されることはありません。