「家事按分」ってなに?
個人事業主やフリーランスの方はご自宅でお仕事をされていることが多いと思いますが、自宅の家賃や光熱水費、ガソリン代などを経費にして良いのか悩まれたことがあると思います。
このような「プライベート兼事業用」に係る支出を「家事関連費」といい、所得税法上は以下の通り規定されています。
居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
(以下省略)
法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
(主たる部分等の判定等)
45-1 令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。
(業務の遂行上必要な部分)
45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
長々と法律の条文を記載しましたが、上から順番に見ていただくと、事業兼プライベートの支出は、事業用部分を明確に区分または実際の状況に応じて合理的に算出できるのであれば、その部分は必要経費にしても良いですよ、となります。
このように、事業用とプライベート用の両方に渡る支出について、事業用部分を一定の基準で合理的に抽出することを「家事按分」といいます。
家事按分が必要な経費(家事関連費)
家事関連費を考慮しないといけない事業形態として、「自宅兼事務所」「自宅兼店舗」「自宅兼倉庫」「自宅兼作業場」などが挙げられますが、このような形態でお仕事をされている場合、家事関連費に該当する支出には以下のようなものがあります。
- お住まいが賃借物件の場合の家賃
- 電気料金
- ガス料金
- 水道料金
- 電話代やインターネットプロバイダ料などの通信費
- 自動車に係るガソリン代や高速料金、減価償却費など
上記のような支出をした場合、その都度割合を決めて経理をするのではなく、年末に全ての経理処理が終わったときに、同じ属性の項目ごとに決められた割合に従ってプライベート部分(家事費)を経費から除外する方法が一般的です。
ここで注意すべき点は以下の通りです。
- 利用明細などで家事用と事業用が明確に区分できる場合は、その実績に応じて家事按分します。
- 明確に区分されていない場合は、各項目に応じて合理的な割合を計算して家事按分します。
- 家事関連費の按分は全て同じ割合に統一する必要はありません。
- 一度決めた割合は、お仕事の実態が大きく変化しない限り毎年同じ割合を使用します。
具体的な按分方法
家賃
全体の床面積のうち、事業用に使用している部分の面積により計算する方法と、事業等に利用している時間の割合から求める方法があります。
自宅兼事務所として常に自宅でお仕事している場合は、面積割合を用いるのが適していますし、ノマドワーカーのように色々な場所でお仕事されている場合は、自宅での勤務時間の割合を用いたほうが現実に適していると思います。
電気料金
電気の利用は部屋の面積に比例していないため、利用時間や利用日数を元に割合を決めるのが一般的です。例えば、料理や洗濯、エアコンなどの家事に係る電気料金は、家族が集まる夜の3~4時間程度でしか費やされておらず、睡眠時間を除いて残りの時間全て仕事用のパソコンや機械、エアコンの動作に費やされているのであれば、事業割合は結構大きくなるのではないかと思います。
また、コンセントの差込口を数えて事業割合を計算する方法もあります。この方法でも税務上は問題ありませんが、多少大雑把になる感は否めません。
ガス料金・水道料金
自宅で飲食店や料理教室などを営んでいる場合、ガス料金や水道料金も家事按分して経費に計上することができます。ただし、これらは他の家事関連費と比べ按分が難しく、例えば、ガス湯沸かし器のお風呂を使っている家庭であれば、季節によってお風呂やシャワーの使用量が大きく異なるため、一定の割合を計算するのが困難になることがあります。このようなことから、事業に使った時間を基礎として、多少実態を考慮した割合を使うのが良いと思います。
ちなみに、ガスや水道を直接使うお仕事以外の方については、経費に計上できる部分は殆どないと思います。ガスについては、寒い地域におけるガスヒーターなど、例外的に経費計上できるものもありますが、水道料金については、お客様に出すお茶やトイレに使う水くらいしかないはずなので、無理に計上すると、証明が難しくなると思います。
通信費
固定電話、携帯電話、インターネットプロバイダなど通信費に係る料金については、使用時間や使用日数により割合を求めるのが一般的です。携帯電話については、月によってかける相手も変わると思いますので、事業用であることをより明確にしたいのであれば、家事按分という形ではなく、別に仕事用の携帯電話を契約することを検討してみてください。
自動車関連経費
自動車に係る費用には以下のようなものがあります。
- 自動車に係る減価償却費
- ガソリン代
- 駐車場料金
- 高速料金・ETC料金
- 自動車保険料
- 自動車税・自動車重量税等
- 車検費用
上記のうち、駐車場料金や高速代・ETC料金は事業目的で利用したのであれば按分することなくそのまま経費にすることができます。その他のものはプライベートでの利用に係る部分があるため、走行距離や利用時間などを元に、家事按分しなければなりません。そのためには営業日報や業務日報などを備え付け、目的地などをきちんと記録しておく必要があります。