定額減税:定額減税の事務ミス、会社だけでなく地方自治体でも

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定額減税が始まって・・・

定額減税が始まって、最初の1ヶ月が経過しました。ネットの記事やXの投稿などを検索しても、怨嗟の声しか見当たりませんが、皆様の会社ではいかがでしょうか?

よくあるミスの一つとして、当月給与を翌月支給する場合、「6月分給与(6月末締め)」から定額減税を始めてしまうパターンです。定額減税は、「令和6年6月1日以後最初に支払われる給与・賞与に係る源泉徴収税額から定額減税額に相当する金額を控除する」と規定されているため、「5月分給与(5月末締め)」で減税処理を行わなければならないことになります。

このようなミスは、社内であればある意味リカバリー可能ですが、これが地方自治体で起こってしまったら、一体どうなってしまうのでしょうか?

自治体で起こった実際のミス

皆さんは地方自治体で交付されている以下の資料をご存知でしょうか?

令和5年度 物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金(給付金・定額減税一体支援枠)~低所得者支援及び定額減税補足給付金~自治体職員向けQ&A

これは今回の定額減税に当たって地方自体の職員に向けて交付されたQ&Aですが、一読して感じたのは、「たかが半年間の定額減税にこれだけの事務負担増は悲惨すぎる」と「完璧に実施するのは絶対無理」でした。

定額減税事務において、地方自治体は住民税の減税と調整給付等の給付事務を主に行いますが、実施までの期間が短かったこともあり、制度そのものへの理解不足や、減税を実装する際のシステム改修の不備、人員不足等の理由から、すでに計算ミスや手続ミスなどが起こっているようです。

定額減税における給与所得者の住民税は、令和5年分の所得を元に計算された令和6年度の住民税の総額から定額減税を控除し、控除後の税額を11等分して7月分の特別徴収税額から反映させる仕組みになっています。6月の第1回目の特別徴収税額がゼロとなっているのは、「減税効果をまずは感じさせたいから」と思っていましたが、実際は各地方自治体のシステム対応が間に合わないため今回のような形になったようです。

このような状況下において、定額減税に関して誤りがあったと公表した自治体がいくつかありました。例えば東京都豊島区では納税者に交付した税額通知書において、定額減税額の記載箇所に不備があったことを認めましたが、住民税の計算自体に間違いはなかったようです。

一方で大阪府堺市、神奈川県川崎市、埼玉県さいたま市では、年金の他に収入がある住民に対し、誤った税額を記載した税額通知書を発行したという事例が報告されています。これらの自治体の報告によれば、堺市では2,200人分、川崎市では9,927人分、さいたま市では4,343人分の誤った通知書が送付されました。

これらの自治体では同じパッケージソフトを導入していたようですが、国税と異なり住民税などの地方税は、各自治体において対応方法が異なることが多く、自治体独自の作業をパッケージソフトに実装できなかったり、事前に設定された条件にない想定外の事象が生じたりすることで、これらのミスが発生した可能性があります。

当初調整給付・不足額給付

地方自治体が行う「当初調整給付」とは、令和5年の所得税および個人住民税の課税状況に基づいて、定額減税で引ききれないと見込まれる金額がある場合に給付されるものです。この給付金は、令和6年夏以降、個人住民税が課税される市区町村において開始されます。

一方「不足額給付」とは、令和6年分の所得税が確定しした後、定額減税を実施しても減税しきれなかった金額があった場合に、追加で給付されるものです。ただし、不足額給付については令和6年分の所得税確定後に行う必要があるため、具体的には令和7年以降、下記地方自治体から給付されることとされています。

このように文章だけで見るとなんてことはない処理に見えますが、実際は各自治体において住民の「所得税(国税)」を推定する必要があり、この処理は地方自治体にとっては初めて経験するものになります。この事態を受けてデジタル庁は各自治体に所得税推定ツールを貸し出していますが、自治体ごとの現状に合わせてローカライズするための時間があまりにも少なすぎる気がします。

「パート収入が200万円」の奥様の場合、所得ベースでは48万年を超えるため、ご主人の定額減税に含まれず、ご自身の所得税から定額減税が行われることになります。しかし、そのパート収入に課される所得税額は、絶対に所得税の定額減税額である3万円に達することはありません。そうするとその後は不足額給付という形で自治体から給付されることになるのですが・・・

このように考えると、かなりの方がこの問題に直面することになります。さて、各自治体はこの高いハードルを無事に超えることができるのか、企業の給与担当者や各自治体に事務作業の全てを押し付けた岸田内閣はどのような支援を行うのか、これからの政府の対応を注視していきたいと思います。

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