減価償却とは?
いきなり質問ですが、皆さんは消耗品と備品の区別ができるでしょうか?
消耗品は「消耗」とあるので使えばなくなるのかな?とか、備品は「備え付ける品」なのでずっと使えるものなのかな?くらいのイメージではないでしょうか?
会社や個人事業主の方が事業用の物品を購入した際、消耗品に該当するものであれば基本的に全額その年度の経費になります。しかし備品(例えばエアコン)であれば、購入したときから数年~数十年は事業の役に立つはずです。
このように何年にも渡って事業に貢献する備品などの資産については、購入金額のすべてをその年度の経費にするのではなく、その資産が現役で働いている期間に渡って経費にすることになります。
これを減価償却と言いますが、各資産を何年間で経費にするのかについては、それぞれの資産の使用可能期間によって異なります。この使用可能期間のことを「耐用年数」と言いますが、実際何年使えるのかではなく、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)」に基づいて算出された年数を用います。
先程のエアコンを耐用年数省令でみてみると、一般家庭にあるようなエアコンであれば「器具及び備品」に該当し、耐用年数は6年となります。また業務用のエアコンで、天井カセット形として建物に埋め込まれているような形態のものであれば、「建物附属設備」となり、出力が22kw以下で13年、22kw超で15年になります。
減価償却を行う年数が分かれば、今度は減価償却する方法です。
減価償却する方法は、法人か個人事業主か、またどのような資産なのかによって、原則となる方法以外にも選ぶことのできる方法がいくつかありますが、その場合には事前に「減価償却資産の償却方法の届出書」という書類を税務署に提出する必要があります。
ここでは細かい説明はしませんが、個人事業主の場合、購入価格を耐用年数で割ったものが毎年の経費(減価償却費)になるとイメージしていただけたら結構です。
減価償却は義務?
減価償却を行うと、毎年減価償却費という経費が発生しますが、一般の経費と異なり、現金を支払って計上するものではありません。例えば300万円で購入した資産について、10年で減価償却するとすれば、お金を支払うのは最初の300万円だけで、その後はその資産を使うことで価値が減った分を減価償却費として経費にすることになります。つまり、現金の出金がない分、減価償却をするのを忘れたり、利益操作のために増減させたりする事ができてしまいます。
これについて、法人と個人事業主とでは取り扱いが異なっており、法人については、減価償却を行うかどうかは任意となっています。もう少し丁寧に言うと、法令で定められた減価償却限度額までの金額を損金経理により計上すれば、それは経費として認めるという規定になっているため、極端に言えば、ゼロでも構わないということになります(任意償却)。
一方個人事業主はこれと真逆で、減価償却限度額となる金額を、毎年必ず減価償却費として計上しなければならないとされています(強制償却)。
ちなみに、法人は任意償却となっていますが、適正な減価償却費が計上されていない計算書類を作成すると、基本的に利益および税額が増えますので、税務署から文句を言われることはありません。ただし、利益操作が疑われることになりますので、銀行の融資に当たっては厳しい目が向けられることになるでしょう。
過去の申告で減価償却費を計上し忘れていたら?
過去の申告において経費の一部を計上し忘れた場合、その分の税金を多く納めすぎていることになりますので、それを取り戻すための「更正の請求」という手続きをする必要があります。この更正の請求は申告期限から5年以内であればいつでも行えるのですが、減価償却を失念していた場合、法人と個人事業主で対応が異なりますので注意が必要です。
まず法人ですが、結論から申し上げると、減価償却をし忘れた場合、更正の請求をして税金を取り戻すことはできません。法人における減価償却については、前述の通り、当初の申告において「損金経理」をしていなければ、そもそも経費として計上することができない仕組みになっています。なお、損金経理とは、法人がその確定した決算において、「減価償却費✕✕円 / 建物✕✕円」のように費用または損失として経理をすることをいいますが、要は帳簿上適正に処理していなければ、その後において修正することはできないということですね。
それに対し個人事業主の場合、減価償却は「強制償却」なので、言い方を変えれば何が何でも計上しなければならないもの、ということになります。そのため、過去の申告において減価償却費の計上漏れがあれば、更正の請求をすることで払いすぎた税金を還付してもらうことが可能です。
最後に
個人事業主として開業された方、目の前にある高価なMacは資産として計上されていますか?自宅に停めている自家用車はお仕事でも使っていませんか?
開業してすぐであれば、売上と仕入、経費を集計するのに精一杯で、パソコンや車などを資産に計上せず、その流れで減価償却費の計上がされていないなんてことはザラにあります。特に白色申告であれば、貸借対照表を作成しなくても良いので、資産を計上するという概念が抜け落ちてしまいがちです。
もしも過去の申告において減価償却の計上を忘れていることに気がついたら、5年分であれば税金を取り戻すことができますので、面倒がらずにもう一度見直してみてくださいませ。