㈱東京商工リサーチのアンケート調査
㈱東京商工リサーチが6月に行ったインボイス制度に関するアンケート調査の結果が興味深かったので、皆様と共有したいと思います。
当調査は東京商工リサーチが課税事業者を対象に令和6年6月に実施したもので、有効回答数は4,799社とかなり多く、内容についても大いに参考になると思います。
インボイス制度開始後、免税事業者に対する新規発注は?
インボイス制度が開始された後に、免税事業者に対してどのような方針で新規発注を行なっているかとの問いに対する調査結果です。
- 特に条件を定めずに発注している・・・56.4%
- 同等の条件で取引ができる課税事業者が見当たらない場合のみ発注している・・・22.5%
- 原則発注しない・・・20.9%
「原則発注しない」と回答した企業を規模別にみてみると、以下の通りとなります。
- 大企業・・・16.1%
- 小企業・・・21.5%
約2割の企業が免税事業者に対して新規発注を行わないと回答していますが、規模別にみると大企業よりも中小企業の方が免税事業者に対して厳しい対応をしている結果となっています。これは中小企業の方が大企業よりも消費税を負担する体力に乏しい傾向にあり、資金繰りに与える影響が大きいためではないかと思われます。
インボイス制度導入後、既存取引先である免税事業者への発注価格は?
次に、既存取引先である免税事業者との取引条件、特に発注価格がどのように変化したかの問いについては、以下のような回答になりました。
- 制度導入前と変更はない・・・92.2%
- 取引単価を引き上げた・・・5.1%
- 取引単価を引き下げた・・・2.6%
以外にも従来通りの条件で取引を継続している企業が9割以上となりました。ただし、単価引き下げを行なった企業を規模別にみると、大企業が1.1%に対し、中小企業は2.8%となっており、大企業の方が免税事業者に理解を示す結果となったようです。
また、取引条件を金額ではなく「発注量」でみてみると、こちらも意外な結果となりました。
- 制度導入前と変化はない・・・91.0%
- 発注量を抑制している・・・7.0%
- 発注を止めた・・・1.6%
- 発注量を増加させた・・・0.3%
発注量も発注価格と同じような分布になりましたが、こちらも企業の規模別にみると、大企業よりも中小企業の方が免税事業者との取引量を減らしている割合が多いようです。
最後に
気がつくとインボイス制度が開始された令和5年10月から9ヶ月が経過してるんですね・・・
インボイス制度開始とともに価格改定を強制されたり、一方的な取引停止が横行するのではないかと心配しておりましたが、思った以上に現状維持の対応をされる企業が多く、少し安心しました。
とはいえ、公正取引委員会によると、2023年中に優越的地位の濫用による取引条件の変更や価格転嫁の要請などに関する注意をおこなった企業が67件に上るなど、行政指導を受けた企業も少なからずあるようです。ちなみに、指導を受けた企業の中では、広告業・娯楽業等が39件と最も多かったようです。