商品仕入を行った相手が「一般消費者」である場合
一般消費者から仕入を行うことが多い業種
個人からマイカーを買い取って販売する中古車買取販売業者や、個人からマイホームを買い取って販売する不動産業者、個人から骨董品や生活用動産を買い取って販売する古物商やリサイクル販売業者、また質屋、古着屋、古本屋などもこれに該当します。
仕入税額控除の可否
事業を行っていない一般の消費者などから商品等の仕入をした場合、課税仕入れとして仕入税額控除の対象になるのでしょうか?
事業のために他の者から商品などの棚卸資産の仕入れをおこなったり、機械や建物等の事業用資産の購入または賃借、原材料や事務用品の購入、運送等のサ-ビスの購入などを行うことを課税仕入れといいますが、消費税法上は、その課税仕入れに係る相手方が課税事業者であることを要件としていません。
したがって、事業者ではない一般の消費者から仕入をした場合でも、消費税の計算上仕入税額控除を行うことができます。
インボイス制度開始後の対応は?
先程例に挙げたような事業を営んでいる方は、個人である一般消費者を相手に取引をしているため、相手方からインボイスの提供を受けることは難しいですし、そもそも事業者ではないのでインボイスの登録をすることができません。インボイスの登録がないということは、原則仕入税額控除ができないことになりますが、個人消費者からの仕入が多い一定の事業者については、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる措置が講じられています。
帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合
インボイス制度では、仕入税額控除を行うためには帳簿及びインボイス等の保存が要件となりますが、次に掲げる一定の取引については、所定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の要件を満たすことになります。
- 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
- 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(1.に該当するものを除きます)
- 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入
- 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の取得
- 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入
- 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入
- 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
- 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります)
- 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
なお、帳簿には以下の事項を記載します。
- 課税仕入れの相手方の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 課税仕入れの支払対価の金額
- 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入に該当する旨
具体例:古物商の場合
古物商を例にとって説明すると、古物商は古物営業法において、商品に係る仕入対価の総額が税込1万円以上の取引については、帳簿等(いわゆる「古物台帳」)に以下の事項を記載しなければならないとされています。
- 取引年月日
- 古物の品目および数量
- 古物の特徴
- 相手方の住所、氏名、職業、年齢
- 相手方の身元確認方法
古物台帳には上記特例の適用要件である帳簿の記載事項のうち、1から4までの項目がすでに記載されているので、会計ソフトなどに入力する際、摘要欄に「古物商特例」と記載し、古物台帳とセットにすることで、全ての項目を網羅することができます。