『一人親方』に支払う対価は外注費?それとも給与? その2

一つ前の記事で税務調査が多かったよ、という話をしたところ、お客様から『先生に替わったから税務署が入ったんじゃないの?』なんて言われてしまいました。。

ちなみに、税理士を替えると税務調査が入るという話がまことしやかに吹聴されていますが、全くそんな事はありませんので、どうかご心配なく。一種の都市伝説だとお考え下さい。

全国の税務署では、『KSK(国税総合管理システム)』という仕組みにより、様々な申告データなどが管理されているのですが、例えば売上高が大きく変動したり、経費の増減割合が大きかったりすると、このKSKが自動的に異常値として抽出する仕組みになっています。

ただし、申告代理をした税理士の氏名等はこのシステムで管理されていないので、税理士が変更になっても、KSKで自動的に抽出されるわけではありません。調査対象に選定された後、複数年分の申告書を並べて調査官の目で確認しないと、税理士が変更になったことはわからないようです。

ではなぜ、税理士が替わったタイミングでよく税務調査が入るのでしょうか?

それは、新しく顧問となった税理士が、従前の税理士との違いを誇示したいがために、勘定科目や経理処理方法を大きくイジってしまうからなんですね。

『社長、前の税理士の処理は間違いではないですが、なんかスッキリしませんね。。そうだ、この●●費を製造原価に入れませんか?』
『●●費を雑費で処理するのはおかしい! これは支払手数料で処理すべきです!』
『商品の評価損を計上すべきです。法律上は問題ありません。』

こんな感じでこれまで何十年とやってきた経理処理を(過去の税務調査で指摘されていないにもかかわらず)、一気に変更してしまうため、税務署のシステムに引っかかってしまうんですね。そして税務調査が入ると。

つまり、間違った処理は正しく修正すべきですが、これまで問題にならなかった項目まで細かく修正するのは程々にしたほうがよいのでは。。

税理士によって考え方は様々ですが、間違っていなければ、私は過去の処理を尊重すべきだと思います。

話が大きく脱線しましたが、本日は一人親方についてのパート2をお話したいと思います。

一人親方として請負契約を締結していても、その実態が給与所得者(実質的に雇用している)と何ら変わらないと認定された場合、税務上の問題点はパート1でお話しましたが、それ以外にも、労働基準法や労働者災害補償保険法の適用の問題も発生します。業務の遂行中や現場までの移動中にケガをした場合、思わぬ責任を問われるかもしれません。

ちなみに、この労災保険については、最高裁判所の判決により、現場において労働者的扱いを受ける一人親方であっても、『一人親方は元請の労災保険の対象とはならない』という事実が再確認されました。最近では、一人親方が仕事を受注するためには、労災保険の加入が要件になっていることがほとんどですので、その意味でも加入させるべきでしょう。

給与は「給与所得」として雇用契約に基づくものであり、外注費は「事業所得」として請負契約に基づくものをいいます。常用工の人工代を外注費として取り扱うのであれば、その常用工が『事業者』である必要があります。

事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいいますので、常用工が雇用契約またはそれに近い契約に基づいて会社などに従属している場合、その会社から常用工に支払われる報酬は外注費ではなく給与として取り扱われる可能性が高くなります。

税務署から100%否認を受けない請負契約書を作成することはなかなか難しいのですが、まずは以下のポイントをしっかり理解した上で、それらの文言を上手に請負契約書に記載して下さい。

① その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

  常用工にお願いしている仕事が、その人でないとできない
  ・・・給与としての性格が強くなります。

  常用工にお願いしている仕事が、その人以外の他人に任せることができる
  ・・・外注費としての性格が強くなります。

② 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

  常用工が、その会社の指揮監督を受けて仕事をしている
  ・・・給与としての性格が強くなります。

  常用工が、その会社の指揮監督を受けずに独立して仕事をしている
  ・・・外注費としての性格が強くなります。

③ まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

  依頼した工事が災害などで完了できず、引き渡しを受けていないが、働いた分の報酬を請求できる
  ・・・給与としての性格が強くなります。

  依頼した工事が災害などで完了できず、引き渡しを受けていないため、報酬を請求することができない
  ・・・外注費としての性格が強くなります。

④ 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

  材料や用具を提供した上で仕事を依頼しているの
  ・・・給与としての性格が強くなります。

  工事を行うにあたって使用する材料や用具を常用工が自分で用意している
  ・・・外注費としての性格が強くなります。

この記事を書いた人

世良 寛之

世良税理士事務所
所長・税理士