iPhoneは経費で落ちる?個人事業主が注意すべき点について

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iPhoneの新作発表の時期となりました

私は昨年iPhone13 ProからiPhone15に買い替えましたが、それでも9月になると「iPhone16かぁ…」とお金もないのに買い替え意欲がむくむくと湧き上がってきます。

それはさておき、iPhoneを買い替えたちょうど1年前に、次のような記事を作成しました。

記事の内容は、高額なiPhoneを購入した場合、どうすれば経費に落とせるかについてまとめたものですが、内容については2024年の9月時点でも適用できるものとなっておりますので、まずはこちらを参照してください。

今回は、これを踏まえたうえで、個人事業主が特に注意すべき細かい点について解説するものとなります。

「購入」と「事業供用」の違い

この記事を書いている時点ではまだ新作iPhoneの発表はされていませんので、現在販売されている機種を元に解説します。

具体例

個人事業主(青色申告者)です。
以下のiPhoneを2024年12月25日に購入しました(全て新品・税込価格)。お正月明けに営業担当者に渡して使わせる予定ですが、2024年の確定申告で経費にできる金額を教えて下さい。

  1. iPhone SE 64GB 62,800円
  2. iPhone 15 265GB 139,800円
  3. iPhone 15 Pro Max 1TB 249,800円

この事業者は青色申告を行っている事業者ですので、以下のように経理処理すると、経費として計上できる金額が最も大きくなります。

経費処理例
  1. iPhone SE 64GB 62,800円
    10万円未満の少額減価償却資産に該当するため、全額経費(消耗品費)にできます。
  2. iPhone 15 265GB 139,800円
    20万円未満の一括償却資産に該当しますが、同時に30万円未満の少額減価償却資産の特例の対象にもなりますので、全額経費(消耗品費)として処理したほうが有利となります。
  3. iPhone 15 Pro Max 1TB 249,800円
    30万円未満の少額減価償却資産の特例の対象になりますので、全額経費(消耗品費)として処理できます。

つまり、この例であれば全額経費に計上することができるのですが、ちょっとまってください。

経費計上できるのは、2024年ではなく2025年です!

「2024年に購入したのに、なんで2025年の経費になるの?」と思われるでしょうが、実は消耗品にしても備品や車にしても、購入しただけでは経費(消耗品費や減価償却費)として処理することはできないんですね。

これは法律の条文にもしっかりと記載されており、例えば30万円未満の少額減価償却資産の条文を見てみると、以下のように記述されています。

租税特別措置法 第67条の5 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

中小企業者等(中略)が、平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が30万円未満であるもの(中略)を有する場合において、当該少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき当該中小企業者等の事業の用に供した日を含む事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。この場合において、当該中小企業者等の当該事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(中略)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする。

このように、経費計上するためには「事業の用に供する」必要があります。事業の用に供するとは、「事業のために使う」ということなので、上記の設例であれば、営業担当者に渡して営業用として使用開始した年、つまり2025年に経費として計上できることになります。

一方、これら3つのiPhoneを2024年にお金を払って購入したという事実は揺るがないので、会計上なんとか処理する必要があるのですが、どのようにするのが正解なのでしょうか?

例えば物販業を行っている場合、年末近くに仕入れたけど未販売となっている商品については、期末在庫として翌年に繰り越す処理を行いますが、購入した消耗品のうち、年末時点で未使用(事業共用していない)のものについても、同様に「貯蔵品」という勘定科目を用いて処理します

処理例

【購入時(2024年)】

消耗品費 452,400円 / 現金預金 452,400円(上記iPhone3台の合計金額)

【年末処理(2024年)】

貯蔵品 452,400円 / 消耗品費 452,400円

【事業供用時(2025年)】

消耗品費 452,400円 / 貯蔵品 452,400円

事業とプライベート両方で使用する場合

個人事業主がiPhoneを購入し事業共用する場合、100%事業用に使うのであれば特に問題は生じませんが、スマートフォン1台で運用していると、どうしてもプライベートで使う場面が発生します。

そのため、スマートフォンの通話料などは事業部分とプライベート部分の比率を決めて、事業部分のみを経費として処理する必要があります。これを事業割合とか家事按分などといいますが、この割合については、特に決められたものがあるわけではなく、実際の利用状況に応じて事業主が自由に決めて良いことになっています。

この事業割合について、「事業割合を90%にするのは多すぎますか?」といった類の質問をよくされますが、前述のとおり、その割合が実際の利用状況を概ね反映しているものであれば、何%でも税務署から指摘されることはありません。それよりも一度決めた事業割合を理由もなく頻繁に変更することの方が問題となります。

会計には「継続性の原則」というルールがあります。会計処理や手続きの方法は毎期継続して使用し、理由なく変更してはならないという原則ですが、毎年事業割合を変更すると、利益操作や税逃れを行っているのではないかと思われてしまう可能性があります。

では、これらのことを踏まえて以下の事例を見た場合、30万円未満の少額減価償却資産の判定は、1・2のどちらになると思われるでしょうか?

具体例

個人事業主(青色申告者)です。2024年にiPhoneを購入し、事業共用しています。この場合、全額を経費として処理して問題ないでしょうか?

  • iPhone 16 Pro Max(仮)320,000円
  • スマートフォンの事業供用割合は60%です。
  1. 事業供用割合が60%なので、320,000円✕60%=192,000円で判定
    ⇒192,000円<300,000円となり、192,000円を少額減価償却資産として経費計上
  2. 取得価額で判定するため、320,000円≧300,000円となり、全額資産計上(器具備品勘定)
    ⇒耐用年数4年で減価償却費を計算し、その60%を経費として計上

正解は2の「取得価額を事業供用割合で按分せずに判定」です

経理上は購入金額をそのまま資産(この場合は「器具備品勘定」)に計上し、耐用年数に応じた減価償却費の年額を算出したうえで、その算出された減価償却費に事業供用割合を乗じて必要経費に算入します。

最後に

30万円未満の少額減価償却資産の特例を使うと大きな節税効果を得ることができますが、年末になって大きな利益が発生すると見込まれるからといって、30万円近いパソコンを何十台と購入しても、実際に事業用として使っていなければ一切経費に計上することはできません。

これは少額減価償却資産だけの問題ではなく、収入印紙を年度末にたくさん購入したり、コピー用紙などの事務用品を大量に買い込むといった行為、宣伝用のチラシや包装用の紙袋を大量に発注するといった行為についても同様です。

個人事業主であれば、11月~12月に上記のような項目が急激に増加していた場合、税務調査で必ず貯蔵品の有無や管理方法などをチェックされるので、貯蔵品の計上漏れには十分注意してください。

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