相続税の「AI税務調査」が令和7年7月より全国で開始されます

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「AI税務調査」とは?

AI税務調査とは、納税者から提出された過去の申告情報や調査事績などをAI(人工知能)に学習させて解析し、膨大な量の申告案件の中から、申告漏れの可能性が高い事案を選定し、効率的な調査につなげるための仕組みのことをいいます。

国税庁は、高度な統計分析などを行うことで、大量のデータから一定の法則性を見出し、将来を予測するすることを可能にするツールを有しており、業種ごとの傾向や申告された数字の不自然さなどを割り出すことで、申告漏れリスクの高低をリスト化することができる体制を整えています。

このような分析・予測はAIの最も得意とするところであり、現場の税務職員の数が減少している中で、より高確度で効率的な税務調査を行うことを目的としています。

相続税の税務調査にもAIを導入

令和7年7月より、全国の税務署においてこの「AI税務調査」が相続税にも導入されます。

AI税務調査は、全国の税務署に提出されたすべての相続税申告書に対し、AIによる税務リスクの判定を行い、その結果に対し税務リスクに応じたスコアを付して、税務調査の要否等を判断することで行われます。

「AI税務調査」の対象となるのはいつの申告から?

令和5年以降に生じた相続に係る相続税申告書がAIによる調査事案の選定対象となります。

所得税や法人税は毎年申告を行うので、税務調査のタイミングは何度かありますが、相続税は基本的に1回しか申告を行わないため、他の税目に比べ調査の取りこぼしが比較的多くあったようです。

令和5年分の相続税の申告書の提出に係る被相続人数は15万5,740人で、課税割合(被相続人のうち相続税申告書の提出割合)は9.9%に上ります。このように相続税の申告件数が年々増加していく中で、より効率的な税務調査を行うことができる手法として、AI税務調査の活用が注目されることになりました。

税務リスクのスコア付けとは?

AIによるスコア付けの方法は、過去の調査事績から申告漏れ等が生じた相続税申告書や、財産債務調書等の法定調書などの情報から、申告誤りの傾向を分析して行われます。この分析結果に基づき、申告漏れ等が発生している可能性をスコアとして表示します。

スコアは「0」から「1」の間を0.01以下等の単位で細かく分けられ、スコア付けされた相続税申告書データをそれぞれの所轄の国税局等に戻されます。現場の税務職員はそのスコア付けされた申告書データを分析し、事案ごとに税務調査が必要か、また実地を伴う調査か電話等による簡易な調査を行うかなどの対応を検討します。

最後に

相続税の申告は大変複雑で、現場の税務職員が減少する中調査の取りこぼしが多く発生していましたが、AIの導入により、調査対象の選定が大幅に効率化されることから、これまで以上に相続税の税務調査が増えてくるものと思われます。

弊所でも、申告にあたって積極的に書面添付を行うことで、税務調査のリスクが軽減されるよう心がけていますが、今後はこれまで以上に丁寧な申告を行うよう気を引き締めていきたいと思います。

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