パート勤めの妻に源泉徴収が必要な所得が発生したら?
少し昭和風な表現になりますが、夫が会社でバリバリ働いており、妻が夫の配偶者控除の対象になるよう扶養の範囲内でパート勤めをしている場合、6月から始まった定額減税では、妻の定額減税額は夫の勤務先において控除されることになっています。
この場合、夫の側で妻の分も定額減税を受けるためには、妻のパート収入が年間で103万円以下(所得金額でいうと48万円)である必要があります。この場合、妻が勤務先において扶養控除等申告書を提出した甲欄適用者であれば、毎月のパート収入が8万8千円未満の場合、源泉徴収される所得税は発生しません。
パート収入103万円を12ヶ月で均等に割れば、ひと月あたり約8万6千円となり、基本的に所得税が源泉徴収されることはありませんが、実際はパート先のシフト変更や繁忙期における残業代などの関係で、一時的に8万8千円以上の収入を得る月が発生する可能性があります。
このような場合、パート先の給与の支払者は、定額減税のルールにしたがって、パート勤めの者であっても一時的に発生した源泉所得税に対し月次減税処理を行う必要があるのでしょうか?
夫婦双方で月次減税処理が行われます
- 夫は世帯における主たる給与所得者であり、パート勤務をしている妻は夫の同一生計配偶者に該当します。
- 夫・妻ともにそれぞれの勤務先において令和6年1月1日時点で在職しており、扶養控除等申告書を提出(甲欄)しています。
- 妻のパート収入は103万円以下となることが見込まれています。
月次減税における夫側の対応
夫は勤務先において月次減税の対象となるため、同一生計配偶者と併せて控除額が6万円(所得税部分)に達するまで、6月以降に支払われる給与・賞与に係る源泉所得税から減税が行われます。
なお、夫は勤務先に提出した扶養控除等申告書に、妻を扶養内のパート収入で勤務する同一生計配偶者として記載しているため、6月以降、妻の側で一時的に源泉徴収の対象となる高額なパート収入が発生したとしても、その事実とは関係なく、6万円に達するまで順次減税が行われます。
月次減税における妻側の対応
パート従業員として継続して勤務している場合、勤務先に扶養控除等申告書を提出(甲欄)しているため、6月以降月額で8万8千円以上の給与が支給された場合、源泉所得税を徴収されることになります。そうすると、給与の支払者は、その妻が夫の扶養に入っていることを知っていたとしても、ルール上月次減税処理を行わなければなりません。
つまり、この時点では夫婦間で二重に定額減税が行われていることになりますが、月湖減税の段階では特に修正等は行いません。
年末調整において精算されます
年末調整における夫側の対応
妻のパート収入について、6月以降一時的に源泉所得税が発生し、妻のパート先で月次減税処理が行われていたとしても、最終的に当初の見込み通り扶養の範囲内(所得金額48万円以下)に収まった場合、夫の側は通常の流れに沿った処理を行うことになるため、妻の分の定額減税額を含めた6万円を減税し、減税しきれなかった分について年末調整で精算することになります。
なお、妻のパート収入が最終的に扶養の範囲を超えてしまった場合には、妻の定額減税は夫の側で行うことができなくなるため、妻の定額減税については、妻の勤務先において年末調整により行われることになります。
この場合において、夫の側では毎月の月次減税で控除済みの妻の減税分が重複することになるため、夫の勤務先の年末調整で、妻を定額減税対象から除外して精算することになります。
年末調整における妻側の対応
妻の側で一時的に発生した源泉所得税に対し、妻の勤務先で月次減税が行われた場合において、最終的に妻の所得が同一生計配偶者の要件を満たす48万円以下に収まったとしたら、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
甲欄適用者の場合、定額減税がなかったとしても、パート収入が103万円以下であれば年の途中で徴収された源泉所得税は全額還付されることになるので、この事例においても、定額減税により前倒しで還付されていたと解釈されるため、年調減税事務などの追加の対応は発生しません。
ただし、源泉徴収票には月次減税事務を行ったが最終的に年間の源泉徴収税額が発生しなかったことを明らかにする必要があるため、摘要欄に「源泉徴収時所得税減税控除済額0円、控除外額30,000円」と記載しなければなりません。
(国税庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係)」10-6)
また、最終的に妻のパート収入が103万円を超えて夫の同一生計配偶者の要件を満たさないこととなった場合には、妻の勤務先において原則通り年調減税事務が行われて精算されることになります。