従業員に支給する「NISA奨励金」
従業員に支給する「NISA奨励金」は会社経理上何の科目に該当するかおわかりでしょうか?
福利厚生費?給与?
勘定科目を間違えると、税務調査があった場合処理自体を取り消されることもあるため、納税者としては確かな回答が欲しいと考えるでしょう。
余談ですが、国税局は、納税者や同業者団体から個別の取引等に係る税務上の取扱いについての照会があった場合、少し時間がかかりますが文書による回答をしてくれますので、判断が難しい、また大きな金額になる取引については、この制度を利用することで、ほぼ間違いのない処理を行うことができます。
このように国税庁が文書により回答した事例について、国税庁Webサイトで公表をしていますが、上記の疑問についても、従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を給付した場合、賃上げ促進税制の対象になる「給与等」に該当すると回答しています。
職場つみたてNISAとは?
職場つみたてNISAは、事業主が証券会社などのNISA取扱い業者と契約して、希望する従業員の給与から毎月天引き、もしくは口座振替をした金額を特定の金融商品に投資していく福利厚生制度の1つです。従業員からすれば職場という身近な場で資産形成ができ、企業にとってはあまり導入コストをかけずに福利厚生制度が導入できるメリットがあります。今時の財形貯蓄、と言っても良いでしょう。
賃上げ促進税制とは?
賃上げ促進税制は、前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から直接控除できる制度です。
中小企業の場合、雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加(大企業の場合は3%以上増加)で適用ができ、支給額が前年比2.5%(大企業4%)以上、教育訓練費が前年比10%(大企業20%)以上増加している場合は税額控除率が上乗せされます。
奨励金は「福利厚生費」?それとも「給与」?
職場つみたてNISAを導入するにあたって、奨励金を事業主が出す場合、会計上はどのような科目で費用計上するかは限定されていないため、給与以外の例えば福利厚生費として費用計上することもできます。
従って、前述のとおり奨励金は給与に該当すると回答されているため、どのような勘定科目で処理されているかに関わらず、賃上げ促進税制の対象になる「給与等」に含めて計算して問題ないということになります。
ただし、給与等に該当するということは、元々の給与と同様に所得税を源泉徴収する必要がありますので、注意が必要です。