所得税の原則
日本に居住している人は、原則として国内、国外を問わず発生した全ての所得に対して所得税が課されます。ただし、所得の中には所得税法やその他の法律により、課税することが適切ではないとされているものがあります。
課税されることが適切ではないとされる理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 社会政策上の配慮
地域活性化や経済活動の促進などがこれに当たります。 - 担税力の配慮
社会的弱者救済などがこれに当たります。 - 必要経費的な性格のもの
労働者の通勤手当などがこれに当たります。 - 少額免除・貯蓄推奨等
NISAなどがこれに当たります。 - 他の租税との二重課税を避ける目的のもの
同一の所得に対し、複数の税目で課税されるのを避ける目的のものがこれに当たります。 - その他
これらに該当する所得については、所得税の例外として所得税を課税しないこととされています。これを一般的に所得税の「非課税所得」といいます。
所得税は10の所得区分により構成されていますが、それぞれの所得区分ごとに非課税とされる項目については、所得税法第9条に規定されています。
利子所得・配当所得
利子所得・配当所得に該当するもののうち、以下に掲げるものについては、所得税の非課税とされています。
- 障がい者や所定の障がい年金を受けている人、遺族年金などの受けている妻や児童扶養手当を受けている児童の母が受ける利子のうち、以下のもの
ア)元本350万円を限定とする少額公債の利子
イ)元本350万円を限度とする少額預金の利子 - 元本550万円以下の財形住宅貯蓄または財形年金貯蓄の利子
- 納税準備金に係る利子
- 当座預金の利子(年利率が1%を超えるものを除く)
- オープン型の証券投資信託に係る特別分配金
- 小学校・中学校・高校、義務教育学校の子ども銀行の預貯金等の利子
- NISAに係る非課税口座
給与所得
従業員に支払われる出張旅費や月額15万円以下の通勤手当などは、所得税の非課税とされています。
- 出張や転任に要する旅費
- 通勤手当(月額15万円まで)
- 職務上定められた制服など
- 外国政府、国際機関などの職員が受ける給与
- 外国に勤務する居住者が受ける在外手当
- 税制適格ストックオプション
- 職務遂行上必要な資格取得のための費用等
譲渡所得・山林所得
家財や衣服など生活用動産の譲渡やNISA口座内での譲渡などは、所得税の非課税とされています。
- 生活に通常必要な動産の譲渡による所得
贅沢品に該当するものには適用されません - 資力喪失の場合の強制換価手続による譲渡による所得
- NISA口座内の少額上場株式等に係る譲渡
- 国や地方公共団体等に財産を寄附した場合の譲渡所得
- 保証債務の履行のために、土地等を譲渡し、求償権が講師できない場合の所得
- 国宝や重要文化財などを、国や地方公共団体に譲渡した場合の所得
- 個人に資産を贈与した時の所得
(贈与を受けた人には、原則として贈与税が課税されます)
一時所得・雑所得
損害保険金や損害賠償金、見舞金、健康保険・介護保険の保険給付なども所得税の非課税とされています。
- 心身または資産に加えられた損害に基づいて取得する損害保険金・損害賠償金・慰謝料
生命保険契約に係る満期金・解約返戻金は一時所得となります。 - 葬祭料、香典、災害等の見舞金
社会通念上相当と認められるものに限られます - 健康保険、介護保険などの保険給付や一定の健康被害救済給付金、感染救済給付金など
- 雇用保険の失業給付、労働者災害補償保険の保険給付金など
- 生活保護のための給付、児童福祉のための支給金品、児童手当、児童扶養手当、高校の実質無償化に係る高等学校等就学支援金など
- 相続、遺贈または個人からの贈与により取得するもの
所得税は非課税ですが、相続税・贈与税の課税対象となります - 学資金および扶養義務を履行するために給付される金品
- 宝くじの当選金など
- 国または地方公共団体が行う保育・子育て助成事業により、保育・子育てに係る施設・サービスの利用に要する費用に充てるために給付される金品
- 都道府県、市区町村から、消費税率の引上げに際して低所得者に配慮する観点から支払われる一定の給付金
- 内廷費および皇族費
- オリンピック、パラリンピックにおいて優秀な成績を収めた者に財団法人日本オリンピック委員会等から交付される金品
- 公職選挙法の適用を受ける選挙に係る公職の候補者が選挙運動に関し取得する金銭等
よくある質問
上記以外にも所得税の非課税とされるものは多数ありますが、特によく質問され、かつ間違いやすいものを3つご紹介します。
第3位:雇用保険の失業給付
これは本当によく質問されます。失業給付そのものが非課税となるため、所得税のみならず、住民税も非課税となります。また、失業給付をもらっていても、控除対象配偶者や扶養親族の要件を満たしていれば、配偶者控除や扶養控除を受けることができます。
第2位:損害保険金等
損害保険契約に基づき、心身または資産に対して加えられた損害に対して支給を受けた損害保険金は所得税の非課税となります。
混同しやすいのは生命保険契約に基づく生命保険金ですが、こちらは状況によって相続税・所得税・贈与税のいずれかの課税が行われます。ただし、生命保険契約にはオプションとして入院給付金や手術給付金、通院給付金、特定疾病(三大疾病)保険金、介護保険金、高度障害保険金などといったケガや病気で受け取る給付金などがありますが、これらの特約については所得税の非課税として取り扱われます。
第1位:メルカリやヤフオクによる収入
メルカリに関するご質問は本当に多いです。メルカリなどのフリマアプリを用いた売買が非課税とされるのは、上記の「生活に通常必要な動産の譲渡」による所得に該当するものなので、営利目的で反復継続して行うせどり行為については、メルカリなどのフリマアプリで行っていたとしても、課税対象となります。